2章

第12話 会長の弱点ない?

「塚原にタク。ちと聞きたいことがあるんだが」


 昼下がりの教室で、弁当を片手に喋り出す。


「ん、何の相談だ? 僕に何でも聞いてくれよ」


 塚原は委員長らしく、任せろとばかりに胸を叩く。


「あのさ。会長の弱点って知らない?」

「うん、首筋っしょ、弱いのは。あと、背中を撫で上げるとかね」


 タクが軽薄な口調で返す。いや、別にどこの性感帯が弱いかって聞いているんじゃないから。なんか、弱点がないか聞いてるんだよ。このままでは、オレの家庭内での地位がー。


「何を言っているんだ、杉内は。会長は頭も顔もいいし、リーダーシップだってある。弱点などある訳がない」

「それもそうだね。会長は完璧超人だよ。そうそう弱点なんかないっしょ」


 タクと塚原が声を揃え、会長に欠点などないと口にする。

 ウーム、そうだよなぁ。コイツ等はオレの家で、トドのようにぶん伸びているだらしない会長を知らないのだから。確かに、会長の外面は完璧超人。外面だけはね。


「しかし、涼平ちゃん。なんか企みがあるっぽいね。だから、そんなことを聞くんでしょ?」


 興味があったのか、タクが話に食いついてきた。


「いや、企みとか大袈裟なもんじゃないけどさ。この前の委員会で、会長にやり込められたから、ちょっとくらい反論材料がないかと思ってさ」


 そうなのだ。会長の弱点を掴んで「それは違うよ、心根さん」とかやってみたい。毎度毎度、論破されて悔しいじゃないか。


「フム。完璧超人の会長をギャフンと言わせる、ね。ちょっと面白そうじゃない。よし、この際だ。会長に何かあるか、ちょっと探ってみるよ」

「むむ、望月よ。貴様が会長の弱味を握るなど以ての外だぞ。させんぞ、そんなことは!」


 タクの言葉に塚原が反応し、いきり立つ。

 うーむ。塚原は会長のことを好きなんだよなぁ。コイツにその会長がオレと一つ屋根の下に住んでいるなんて告白したら、卒倒しそうだぞ。なんか騙しているみたいで気が引けるけど、ここは黙っておこう。

 そう思いながら、弁当をパクついた。結局、会長に関して、何ら有益な情報を仕入れることが出来ないまま、昼休みが終わった。



 5時限目が始まる。午前中は授業を流しながら聞いていたが、この時間は真面目にした。

 なんたって、担任の蝶野先生が怖い。先週のHRみたいな惨事がいつ起きるか分からないから、真剣にせざるを得ない。なんか先生の顔が、土気色でゾンビみたいになってるし。こりゃ、週末に婚活パーティーに行って来て、玉砕してきたんだな。

 無論、そのような無用なツッコミは口にせず、黙々とノートを取った。


 チャイムが鳴り、先生が亡者のようにフラフラと足取りで、教壇から降りて行き、放課後となった。先週のホームルームみたいに先生が大暴れしなかったので、何より。


 オレはギターケースのストラップを肩にかけ、部活に行こうと歩いて行く。すると、教室の扉の前で春野さんと鉢合わせた。


「は、春野さん。ども」


 ギクシャクしながら挨拶するオレ。


「ねぇ、杉内君。それって、ギターケースでしょ? 前から聞きたかったんだけど、ギターやっているの?」


 春野さんは興味津々といった様子。


「う、うん。まぁ、ね。もっとも、高校入ってから始めたばかりだから、そんなに上手くないけど。――と、そうだ。もし、興味があるなら軽音部に来てみる?」

「え、いいの?」

「うん。3階の音楽室の隣に部室があるんだ。そこで練習してるから、是非おいでよ」

「うん、分かった。じゃあ、私の部活が終わったら、ちょっとだけ寄ってみるね」


 春野さんはニッコリと笑う。うう、可愛いなぁ。ウチの大飯食らいの誰かさんとは、大違いだ。


「それじゃあ、後でねー」


 そう言い残し、春野さんは廊下を走っていった。その背中を見届け、オレは軽音部に向かった。

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