第10話 押しかけなんとやら

 嵐のお見合いの翌日。玄関の呼び鈴が鳴った。konozamaからの宅配便が届いたのかと思い、オレは玄関を開ける。が、そこにいたのは宅配便の人ではなかった。同じ運送業なんだけど、違う。まず、門に横付けされているトラックのデカさが違う。宅配便の2t車じゃない。もっとデカイ。


「ちわー。アド引っ越しセンターです」

「引っ越し? ウチは頼んでませんけど」


 引っ越し屋さんと応対するオレの眼前に、会長が足を大きくスライドさせ、駆け寄って来た。んでもって、引っ越し屋さんに声をかける。


「やー、間に合ったわ。引っ越し屋さん、お願いします。荷物、どんどん中に運んで下さいね」


 会長が指示すると、言葉通り、引っ越し屋さんはガンガン家の中に荷物を運び込んでいく。ベットとかテーブルとか。オレは惚けながら、その様子を眺めた。


 小一時間もすると、二階の空き部屋の一室が、会長の荷物で埋まった。どうなってんじゃ、こりゃ?!


「ちょ、ちょっと。会長、荷物なんか運び込んじゃって。一体、どういうことですか?!」

「ん? あたし達付き合うことになったんでしょ。友達として、ね」


 会長はニヤリと笑う。


「まぁ、そうですけど」

「付き合うことになったんなら、まずは一つ屋根の下で暮らしてみるべきでしょ。常識的に考えて」


 いや、どこの常識なんだよ、それ。アフリカのどっかの部族で、そういう風習でもあんの。

 やや呆気に取られながら、口にする。


「いやいや。友達なら、同棲しないでしょ。せめて、恋人同士じゃないと」

「何言ってんだ? 友達だからこそ近くにいて、親睦を深めなきゃダメだろ。そんな事も分からないのか?」

「親睦を深めることが、なんで同棲に繋がるんですかっ!」

「何言ってんの、君。これは同棲なんかじゃないよ」

「同棲じゃない? じゃあ、なんなんですか? 会長の荷物まで運び込んでからに」

「ルームシェアだ」

「は?」


 オレはきょとんとする。


「だから、ルームシェア。友達同士、ルームシェアをして親睦を深める。実にいいことじゃないか。嗚呼、なんと美しき友情哉」


 してやったりの顔をする会長。まったく、ああ言えばこう言う。よく口が回るよ。やっぱ、伊達に生徒会長やってないな。将来的には、弁護士になるより、ペテン師になる方をお勧めするぞ。


「あたし、響っていうんだ。宜しくな、杉内君!」


 会長は突然、芝居がかった口調になる。ああ、これはアレか。新しく学生寮に来た新入生同士が会話している設定ね。会長の全く有難くないオンステージが始まったよ。


「いや、もういいから帰って下さい」


 オレは会長の背中を押し、追い出そうとする。


「失礼だな、杉内君は。ちゃんと君のお父さんからも、ルームシェアの許可を貰っているのにな」


 会長の芝居がかった台詞は、まだ継続中。


「そうなのですよ、涼平たん。ちゃんと響ちゃんと仲良くしないと駄目なのですよ」


 親父幼女がメってする。殴ったろか、コイツ。

 ああ、頭痛がしてきた。しかし、どう考えても、先輩を論破出来そうない。ああ言えばこう言うし、力技で論点をすり替えてきやがる。論破するの絶対無理! もう諦めた。もう駄目。


 ふてくされながら、会長を見ると、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。

 もう一方を見やれば、親父美少女と、弟な妹がニヤニヤしている。もう、この家庭ってば、どうなってんだよ!

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