第5話 とーとつな見合い話

 夕飯をパクついていると、ツインテールな親父がいきなり切り出してきた。


「涼平ちゃん、あのねあのね」

「何だよ?」

「涼平ちゃんはお見合いすることになったんだよ」


 突飛な話に、オレは味噌汁を吹き出す。訳分からねぇよ、見合いとか。何を言い出すんだ、この親父幼女は。


「なんで突然お見合いしなきゃいけなんだよ? オレはまだ17だぞ」

「だけどね、だけどね。今日、18歳になったら、結婚しなきゃ駄目だって国会で決まったよぉ。だから、涼平ちゃんが身を固めるのにいい機会だと、良一は思うんだよぉ。それにね、専務からね、『ウチの娘と杉内の息子さんで、お見合いしてくれないか?』って、お願いされたんだよ」


 一気に捲し立て、ニパーと笑う親父。うん、もういいから。そのニパーって笑顔、もういいから。


 あまりの無茶振りに、弟、いや妹、いや、良介に話を振ろうとしたが、なんか満面の笑顔だったので、止めておいた。なんつーの。どちらかと言えば、兄の幸せを祝福する妹っぽい顔をしてやがるんですけど。


「いい話じゃない、お兄ちゃん」

「そうよ。今後、18で結婚出来なきゃ、人生の落後者になってしまうわ。兎に角、お見合いだけでもしておきなさいな。断ってもいいから」


 なんか、お袋と良介が肯定的な意見を口にする。いつの間にか、包囲網が敷かれているぞ。こうなると、一人だけ反対意見を唱えても効果は薄そうだな。かといって、各個撃破するのも骨が折れる。それに、幼女親父と妹になった良介。この二人と激論を交わすのもウンザリだ。

 これはアカンと頭を振りつつ、親父に向き直る。


「チッ、親父の上司からの話じゃしょうがないな。会うだけでいいなら、見合いしてやるよ」

「うん、それでいいよぉ。取り敢えず、見合いだけしてくれれば、専務にも顔が立つにょ」

「良縁になるといいわね。もし、涼平が結婚したら、もう孫の顔が見れちゃうのかしら? ウフフ」

「お兄ちゃん、ファイトだよ。お見合い頑張ってね」


 なんなの、この家族総出の歓迎ムードは? 17で見合いとか、イカれてやがるぜ、まったく。

 オレは短く嘆息し、親父に訊く。


「で、見合いはいつなんだよ?」

「土曜日だよぉ。つまり、明日だね。大安吉日でお日柄もバッチリなんだよぉ」


 急な話過ぎて、今度はお茶を吹き出す。いや、ちょっと待て。明日とか急すぎる。心の準備がー。オレの貞操がー。いや、お見合いするだけで、童貞は奪われないけどさ。


「どうせ反対しても、強行するつもりだろ?」


 オレの問いかけに、家族三人はグフフと笑う。結託して、この家に軟禁するつもり満々だぞ、コイツら。まったくの愚問であったか。

 仕方なしに二つ返事でオーケーを出すと、三人は大喜びした。赤飯でも炊きそうな勢いだ。

 あまりにも強引な話にちょっとムカつきながらも、早々に話を切り上げ、自分の部屋へと退散。


 オレは春野さんが好きだ。今日、一緒に下校して改めてそう思った。よし、明日の見合いは断ろう。

 そう結論づけ、オレは布団に潜り込んだ。


 しかし、時計の秒針の音ばかり聞こえ、眠れやしない。ひょっとして、明日の見合いに緊張しちゃってるの、オレ?


 ガバリと布団を剥がす。心音が微かに早まっている。ったく、ときめいちゃってんじゃねーよ。オレは春野さん一筋だろ?


 しかし、しかしだ。

 見合い相手が美少女だったら? 気立てのいい娘だったら? ホンワカとしたおっとりさんだったら?

 なにやら妄想が膨らむ。


 ワシャワシャと頭を掻き、再び布団を被った。目がギンギンに冴え、眠れそうにないのですが……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます