テンプレ64 「宣伝ポスター」
ファシアンを倒したクロネだったが、現状、かつてない程の窮地に立たされていた。
フェデックは叩けば起きると言っていたが、イスズを叩いて起こす? 誰が?
結果、イスズの目の前で仁王立ちする状況になっていた。
ヤマトやルー、ましてやアリを叩き起こすことに抵抗は一切ないクロネだったが、イスズ相手となると話しは別。
何度も脳内でイスズのパンチをかわすイメトレをし、意を決して、叩こうとしたその時、
「イスズさん、いつまで寝てるんですか? もう仕事の時間ですよ。起きてください!」
フェデックはなんともないように、イスズの頬をペシペシと叩く。
「う、うぅ、し、ごと? ハッ!」
イスズは目を覚ますと、頬を叩くフェデックと目が合う。
「あっ、ようやく起きましたね!」
「仕事は……、いや、そうか。助かった」
イスズからの反撃もお叱りもなく、やりすごしたフェデックを見て、「……すごい」とクロネは思わず感嘆の声を漏らした。
※
気を取り直し、イスズ一行は門へと向かう。
ヤマトはおろおろとしながらも入場することができた。しかし、イスズとクロネ、ついでに掴まれているアリは、関所にて構える門番を前に立ち往生していた。
門番は明らかにイスズを睨んでいた。
そして、イスズも睨まれる覚えがあった。
クロネはローブをますます目深にかぶりながら、イスズに確認するように呟いた。
「……あの門番ってこの前ムリヤリ通った時の」
「たぶんな」
イスズが初めてこの大都市に訪れた際、入場料を払うよう言ってきた門番であり、同時にイスズに殴られ意識を失った門番である。
直接殴ったイスズはもちろん、前回暴れたクロネもバツが悪そうにしていた。
「今回はちゃんと金もあるし、素直に通してくれるとは思うが……」
「……通れなかったら、またやるしか」
2人は意を決して向かい、前回のことなど、さも知らないかのように澄ましていると、「おい!」と門番の方からやはり声をかけてきた。
「お前、この前のッ!」
しかし、すぐに門番は怒りの表情を消し本来の業務へと戻る。
「通行料、確かに。ふんっ、前回のことを許す訳はないが、今回は入れた方が俺の
「どういうことだ?」
イスズは
「お前、あの勇者リミットと戦うんだろ。お前程度すぐにやられちまうだろ!」
門番の不可解な発言に、イスズは考え込んだ。
だが、その思考はすぐにヤマトによって邪魔された。
「ちょっとイスズ、こんなん張ってあるんだけどッ!!」
ヤマトはまるで写真のように精巧に描かれたポスターを持って戻ってきた。
そのポスターには、そして、そこには、『勇者VS魔王 世紀のデスマッチがついに!!』とでかでかと書かれ、勇者リミットとテンペストの顔まで載っていた。
さらに端の方に、前哨戦として魔王の配下、銀河イスズVS勇者パーティの剣士の戦いがマッチされていた。
「クソっ! そういう事か」
イスズは金を押し付けるように渡すと、ポスターをビリビリに破いた。
邪険に扱われた門番はイスズの後ろ姿を見ながら唾を吐き捨て、絶対に勝負を観に行ってやると誓った。彼は休みを取る為、その日の勤務態度はいつにも増して精力的だったという。
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