シン・イモウト

 怪獣になった妹を止める為に僕に与えられた時間は残り24時間しかない。たった数時間前にアメリカは怪獣と化した妹を世界の脅威と見なして核の発射を決定した。しかしそれは妹の死と同時に東京の壊滅も意味し、妹以外の国民の犠牲も払うことになる。だからそれがバットエンドのシナリオだと官僚達は僕に言うけれど、だからと言って僕に何をしろと言うんだ。街中で暴れ回る妹に近づくことすら危うい。たった今僕の乗るヘリの前を先行するヘリが破壊されたし、あれが妹だとわかっていても怖い。しかしどうせ僕が乗るヘリが破壊されてしまうのがオチだろうと思っていたけれど、そんな僕の予想は外れてどうにか妹の足元にたどり着くことが出来てしまった。

 しかしそもそも辿り着けないと思っていたから何をするかなんて全く決めていなかったわけで、あるのは「これが妹の好物だったんです」なんて言ってヘリに乗る理由を強引にでっち上げる材料にしたタピオカミルクティーぐらいしかない。仕方がないからタピオカミルクティーを見せて「飲む?」なんて言ってみるけれど当然のように効果はなく、そんなことをしているうちに24時間はあっという間に経ってしまいった。すぐに核が落とされて結局東京も妹も木っ端微塵になってしまった。それから数日後に妹の破片を拾いながら、もう少しでもタピオカミルクティーを飲ませてやりたかったと思った。

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