未来から来た妹の話


 僕の机の引き出しが突然空いたから、てっきり青い猫型ロボットが出てくると思った。しかしそんな期待は見事に外れて現れたのは未来の妹だった。僕の知っている妹とは幾分か大人びている上に、僕のよく知る妹なら絶対にしないであろうと思えるやけに丁寧な挨拶をした。どこか歯がゆさを感じたけれど、でも頭に寝癖がついたままだということに気がつくと、妹は成長しても変わらず妹なんだなと思った。

 未来の妹によるとわざわざタイムマシンを使って僕の目の前に現れた理由は僕を殺すためだそうだ。机の引き出しから現れたからドラえもんかと思ったけれどやることはターミネーターらしい。未来から来た妹は僕が将来世界を破壊しかねないようなとんでもないテロリストになってしまうと言う。だから今のうちに殺しておくということみたいだ。今のところ僕は妹をこよなく愛するただの兄なのだが、しかしまあ実際に未来人にそう言われてしまうと嘘だとも思えないのが事実だ。

 未来の妹はひみつ道具的な何かで僕を拘束すると、腰に差していた銃を僕の眉間に向け、やがて引き金を引いた。

 妹が僕を殺す寸前に僕の目に映った妹の涙に反射した光がやけに眩しく見えて、微かに聞こえた「ごめんね」という声が体の中を反響した。僕はそれを死んでも忘れられない気がする。

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