食べるなら生きたままにしてくれ
妹の様子がおかしい。人間と言うには野生で、理性的じゃない。言葉を喋らなくなったし、箸を持って食事をしなくなった。だからしばらく何も食べなかったけれど、ある日の夜にあまりにお腹がすいたらしくて僕が飼っていた犬を食べてしまった。それを僕は酷く怒ったけれど、妹の言葉にならない鳴き声にも近い声で必死に謝る妹を見て僕は許してしまった。飼い犬の命よりも妹の命の方が大事なのは当然の話だし仕方がない。
それから僕は犬や猫を盗んでは妹に食べさせた。ペットの失踪事件が話題になったけれど、死体は残らず妹が食べてしまったおかげで現状警察は犯人を特定出来ていない。
妹が人間だった頃と比べると愛情表現が積極的になった気がする。ご飯を食べ終わると決まって僕に抱きつき、そのままベットで眠ってしまう。だから僕達は毎晩抱き合って寝ている。無理に剥がそうとすると妹は目を覚まして泣き出してしまうから仕方なくそうしている。
ある日の朝、僕の腕があるはずの場所には空虚な空間があった。僕はそれまでの数日間、妹の為にご飯を用意してあげられなかったからお腹がすいていたのだろう。涙を流しながら僕の腕を食べる妹を見て、僕にはそれがどうしようもなく愛おしく見えた。
僕は妹の頭を撫でながら、どうか僕を食べる時は生きたままにしてくれと願った。
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