第28話  やっぱり俺の周りには変人・鬼人しかいないみたいだな

 選手控え室。


「この私が認めた男なんだから、次も必ず勝ちなさいよ」


「わたしは絶対に勝つ、って……信じてたから、別に心配とかしてなかったし」


「神童と呼ばれてるだけあって、王子さまの圧勝でしたね」


「一回戦突破おめでとうございます、主さま」


「ありがとう、みんな」



++++++++++++++++++++++




 第2回戦。


 会場。


『赤コーナー! 露璃村大助選手が入場しまう』


 名前が呼ばれたのに合わせて、俺は入場する。


『続いて、青コーナー

 ドクターABC選手が入場しまう』


 白衣をまとったセクシーな大人の女性が姿を現した。


「お互い正々堂々と戦いましょうね」


 艶やかに輝く漆黒の髪を掻き上げて、ドクターABCは笑った。


 そして握手を求めてきたので、それに応えた後。


「ああ。

 正々堂々と戦って、勝つ。

 素っ裸になる覚悟はもうできているのか。

 もし、できていないのなら。

 棄権することをオススメするぜ」


 わずかに鼓動が速まるのを自覚しながら、俺は目の前の相手を睨みつけた。


「たいした自信ね。

 でもわたしも負けるつもりはないから」


『レディーゴー』


 ドクターABCは、衣服だけを溶かす謎の液体が詰まったウォーターガンを駆使して攻撃を仕掛けてきた。


「それは、残像だ」


「すばしっこいのね。

 でも、いつまで逃げられるかしら?」


「イヤ、もう勝負はついているぜ」


 俺は素早く背後を取り、一瞬で相手を全裸にしてしまう。


「うおおおおおおお」


 ドクターABCのたわわな胸があらわになり、観客たちは大きな歓声と視線を彼女に注いだ。


「きゃあああっ!?」


 彼女は顔を赤らめ、慌てて胸元と秘部を隠した。


 それでも上半身のほとんどが、衆目しゅうもくさらされていることには変わりないな。


 改めて思い知らされた。


 これが脱衣演舞なんだと……対戦相手を素っ裸にする競技なのだと。


 こんなものに青春を捧げるなんてやっぱりバカげている。


 俺は絶対に優勝する。


 そしてこんな世界とは、おさらばするんだ。


『勝負あり』


 同時に、審判が声を上げ、俺を指す。


『露璃村大助選手、決勝に進出決定です』


 俺は着ていた上着を彼女の肩にかけてあげる。


 そしてつい先ほど剥ぎ取った彼女の衣服を返してあげることにした。


 俺が持っていても使い道がないからだ。


「おおおっ!?」


その途端、観客席からは大きな歓声が湧き上がった。


「絶対に優勝しろよな」


 その言葉に、俺が無言でうなずくと、彼女は背を向け、通用口へ向かった。

 

 続いて行われた第2試合が行われ、勝ったのは、『ハンス』だった。




++++++++++++++++++++++


選手控え室。


「決勝進出、おめでとうございます、王子さま」


「ついにここまで来ましたね、主さま」


「ああ。

 ここまでこれたのは、みんなの応援があったからだよ」


「でも油断はできないわよ、ダイスケくん。

 相手はあの優勝候補ともくされた邪眼使いを瞬殺した女なんだから」


「殺妹の言う通り、一瞬の油断が命取りになると思った方が良いわよ」


「姫川さん、彩妹ちゃん。

 心配してくれてありがとう」




++++++++++++++++++++++




 決勝戦


 会場。


『赤コーナー! 露璃村大助選手が入場しまう』


 名前が呼ばれたのに合わせて、俺は入場する。


『続いて、青コーナー

 ハンス選手が入場しまう』


 保安官のようなコスプレをした女性が姿を現した。


「泣いても笑ってもこれで最後ですね。

 お互い悔いのない戦いにしましょうね」


「ずいぶんと甘い考えなんだな。

 タバスコを使う人間の発言とは思えないな」


「ワタシがそんな安い挑発にのると思ったんですか」


「恥をかくまえに棄権しろ。

 お前では俺を倒すことはできない。

 女である限りな」


 激しくムダだとわかっていながらも、俺はそう叫ばずにはいられなかった。


「まるで話になりませんね」


『レディーゴー』


「ワタシをさんざんコケにしたことを後悔しなさい」


 ハンスは、手のひらにタバスコをのせ、デコピンで弾き飛ばすという極めて原始的な攻撃方法だった。


「か、辛いいいいいい。

 死ぬほどカラィイイイ」


 だが、これまで戦ったどの敵よりも強かった。


 いくつもの攻防を繰り返し、俺たちは半裸になっていた。


 お互、衣服のあちらこちらが破けているのだ。


 さすがは決勝にまで残るだけあって、一筋縄ではいかないな。


 タバスコに加えて、暗器まで使うとか、想像していた以上に厄介な相手だな。


「な、なんで……平然としてられるのよ。

 口に含んだだけで、発狂するレベルの、辛さのはずよ。

 まさか、こんな展開になるなんて……信じられないわ」


「今までお前が戦ってきた脱衣師とは、覚悟が違うんだよ。

 これ以上恥をかきたくないなら、おとなしく棄権しろ」


「い、嫌よぉおっ。

 ワタシは絶対に棄権なんてしないわ。

 お、男になんかに、男なんかに負けてたまるもんですか」


 ハンスは拳法の構えを撮った。

 

 かなりの修練を積んでいるのだろう。


 彼女の構えはしなやかで、ムダな力の入っていない攻防一体の構えだった。


「なら仕方ないな。

 俺も奥の手を使わせてもらうぜ」


「きゃあああ」


 俺は全身汗だくになりながら、やっとの思いで倒すことができたのだ。


 衣服だけを溶かす謎の液体が詰まったウォーターガンを戦利品として、もらっていなかったら、負けていたかもしれないな。


 もう、当分……タバスコは視界に入れたくないな。


 見事、優勝を果たした俺は実家に『強制送還』されることもなくなり。


 今まで通り姫川さんのお屋敷で『執事』として働かせてもらえることになった。


 そして俺は学んだ『着衣エロ』こそ、至高だと!?


 女の子の服は、何があっても絶対に脱がしちゃダメだと!?


 だというのに、彼女たちは俺から脱衣術を教わりたいというのだ。


 場所は姫川家・別邸の自室だ。


「俺の話を聞いていなかったのか。

 脱衣術なんて教わったってーーーーーー」


「前口上はいいから、とっとと教えなさいよ。

 私はもっともっと強くなりないのよ」


「お姉ちゃん抜け駆けなんて卑怯です。

 わたしもダイスケくんから脱衣術教わりたいよ」


「主さま、主さま、あたしにも稽古をつけてくださいませ。

 やはり忍びを目指す者として、脱衣術を極めたいのです。

 ご指導、ご鞭撻ごべん方、よろしくお願いします」


「仲間外れになるのは嫌じゃ。

 妾にも脱衣術を教えろ」


 四方から迫られ、気が付くと俺は彼女たちの衣服を剥ぎ取っていた。


 数秒前に誓いをたてたばかりだというのに、あっさりと破ってしまった。


 俺は……なんて……意志が弱い男なんだ。


「は、速すぎて、何も見えなかったわ。

 気が付いた時には、もう全裸になっていたもの。

 瞬間移動したとしか思えないわ。

 レベルが高すぎて何も盗めなかったわ」


「理沙さまのおっしゃる通りです。

 さすがは神童と呼ばれただけのことはありますね」


「こんな芸当、ダイスケくんにしかできないわね」


「まったくその通りじゃな」


「服を剥ぎ取られたのに、なんでそんなに嬉しそうにしているんだ」


「「「「お約束だからかな」」」」


 やっぱり俺の周りには変人・鬼人しかいないみたいだな

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