第17話 祝勝パーティー
そして超一流ホテルの大広間を借りきって祝勝パーティーがとり行われていた。
天井にはいくつも大きなシャンデリアが下がり、黒服をピシッと着こなした給仕係が洗練された身のこなしで豪華な料理を運んでいる。
「優勝おめでとうございます、理沙お嬢様」
「姫川様が優勝すると信じていました。
ワタクシとお友達になってください」
「ちょっと、抜け駆けしないでちょうだい」
「ごめんなさい。
彼と話があるので、これで失礼しますね」
姫川さんは赤い薔薇をモチーフにしたドレスで、自分に群がるヒトたちに二言、三言断り。
ドレスの裾を掴んで軽く膝を折り曲げる、とても優雅な一礼をしてからこちらに近づいてきた。
「凄い形相で俺のことを睨んでるんだけど」
「嫉妬の視線て、キモチいいわよねぇ」
「俺は居た堪れない気持ちになるけどな」
「
ちなみ俺はフォーマルな執事服だ。
あと跳姫姉妹は『身分不相応』だと言って、参加を辞退してみたいだな。
それから殺妹ちゃんは白いユリをモチーフにしたドレス姿で、参加者たちに挨拶をしていた。
「優勝した姫川理沙さんには、露璃村大助さんとダンスを踊ってもらいます」
殺妹ちゃんはパーティー会場にいる全員に聞こえるような、大きい声で叫び。
音楽が流れ出す。
パーティー会場の一角に陣取っているオーケストラが生演奏を始めた。
「露璃村くん、私と一緒に踊ってくださるかしら」
「でも……俺、ダンスなんて……」
それにこんな豪華な場所で、その主役と言っても過言ではない彼女と踊ることに尻込みしてしまう。
「大丈夫だよ、ダイスケくん。
お姉ちゃんが上手くリードしてくれるはずだから、ねぇ」
「ええ、任せて。
音楽に合わせて、私の指示通りにカラダを合わせて、カラダを揺らしていれば恰好はつくはずよ」
「わ、わかった」
俺は凄まじい羨望の視線にその身を晒しながら、姫川さんと並んでダンス用のスペースに向かって歩き出す。
そして俺は姫川さんの腰に左手を当て、踊り出す。
周りを見渡すと、本当にダンスが好きで華麗なステップを披露しているのは、ほんの一握りだった。
大半は、素人に毛が生えた程度のモノに見える。
全然たいしたことないな。
「露璃村くんって、運動神経が悪いわけじゃないんだよね。
それにリズム感もあるし、物覚えも良いもんね。
あと、私たち相性もいいみたいね」
彼女の指示に合わせて踊っていたら、腕のなかに抱かれている姫川さんが俺のことを見上げて、ニッコリと微笑んできた。
と……まあ、そんな感じで俺たちはパーティーを楽しんだのだった。
++++++++++++++++++++++
『理沙視点』
某ホテルの厨房で、私はチョコレートと格闘していた。
「チョコはたくさんあるから、あと5、6失敗しても大丈夫だよ。
だから、もっとリラックスしようか。
今のままだと、すぐにバテちゃうよ。お姉ちゃん」
「ええ、それはわかっているんだけど。
どうしても手に力が入ってしまうのよね」
「だったら、ここはもう開き直って、チョコを渡したい相手のことを思い浮かべながら作れば。
自然と気持ちがウキウキしてきて、肩の力が抜けるかもしれないよ」
「でも、ちゃんと受け取ってもらえるかしら? 不安だわ」
「お姉ちゃんって、意外とめんどくさい性格だったのね。
普段は、自信満々でまったく隙を見せない完璧超人なのに……」
自分でも情けないと思うもの。
いけない、いけない……今はチョコ作りに集中しないと……。
++++++++++++++++++++++
『大助視点』
学校の宿泊行事で定番イベントと言えば『枕投げ』だな。
などと思いながらも俺は、参加しなかった。
はっきり言って、何が面白いのか? わからなかったからだ。
だが日頃の疲れをとるために温泉には入った。
「ふぅ~~~、とてもキモチがいいわ。
一日の疲れが、溶けていくかのようね」
「なんだか、年寄りくさいですよ、理沙さま」
みちるちゃんの声が聞こえてきた。
「ここの温泉は、疲労回復や美肌効果もあるみたいですよ」
殺妹ちゃんの声も聞こえてきた。
秘伝の塗り薬が効いているのか? 化け狐にはなってないみたいだな。
「でもみちるちゃんって、
「そういうって、殺妹ちゃんスタイルいいですよね」
二人とも名前で呼び合っていた。
みちるちゃんと殺妹ちゃんって仲が良かったんだ。
「理沙さま、どっちらが長く潜っていられるか? 潜水勝負しましょうよ」
「ええ、いいわよ。
温泉で潜水勝負は鉄板ネタですもの」
「じゃあ、あたしが審判をやるね。
2人とも頑張って」
姫川さんとありさちゃんが潜水勝負をするみたいだな。
で、審判はみちるちゃんか。
女性用の露天風呂との仕切りって、ヒノキの板みたいなのだけなのか?
そのせいで女性陣の話し声が聞こえてきた。
思わず聞き耳を立ててしまう。
「この勝負は、ありさお姉ちゃんの勝ち」
「理沙さまの敗因は、その牛のようにデカい乳です」
みちるちゃんが高々と宣言し、ありさちゃんのドヤ顔が目に浮かぶ。
「理沙さまのオッパイって、本当に大きいですよね。
羨ましいです。
どうすれば、大玉のスイカみたいな、オッパイになるんですかね」
みちるちゃんの素朴な疑問に対して姫川さんは――――。
「知らないわよ。
自然と大きくなっちゃ……きゃあっ!?
ちょ、ちょっと!? 殺妹。
へ、ヘンなところ、触らないでよ」
「でもさ、わたしたち双子なのに、お姉ちゃんの方が若干おっぱい大きいよね。
なんかズルイ!? ありさちゃんとみちるちゃんは、ザ・双子って感じのおっぱいなのに」
「確かに2人とも慎ましいオッパイよね。
どうして双子には、慎ましいオッパイの女性が多いのかしら」
「あたしたちのおっぱいが慎ましいですって。
たとえ理沙さまとはいえ、今の発言は許せません」
「きゃあっ!?」
姫川さんの可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。
山の温泉は、伝統的な日本文化だよな。
岩盤浴なんていう貴重な体験もできたし、浴衣姿のクラスメイトも見れたし、女湯を覗くのは失敗したけど。
露天風呂から見た夜景は、ほんとうにキレイだったな。
でも常連客から一昔前の露天風呂なら、男湯と女湯の間にはドアがあり、そこから子供が出入りしていたため、見る気がなくても、容易に『女性の裸』見ることができたという話しを聞いたときは、ショックを受けたが……やっぱり来てよかったな。
ちなみに夕食は『山で採れた山菜料理』だった。
まさに郷土料理だ。
これまた貴重な経験ができた。
お土産コーナで、妹から頼まれた『温泉饅頭』を購入し、少し夜風にあたろうと思って、玄関から外に出ると既に先客が居た。
「露璃村くんも涼みにきたの。
火照ったカラダに夜風がキモチいいわよぉ」
「ああ。そうだな」
確か? 女子は『温泉卓球』をやっていたな。
まあ姫川さんの圧勝だったみたいだけど。
浴衣姿も超絶カワイイな。
白い基調とした花柄で、手にはうちわが握られ、金色のキレイな髪に真っ赤なかんざしが良く似合っていた。
月明かりの下で見る彼女はとても幻想的だった。
そして別れ際に姫川さんからチョコを貰った。
ハート型でストロベリー味のめちゃくちゃ甘い愛情がたっぷりとつまった世界に一つしかない、市販品ではない『手作りチョコ』だ。
メッセージカードみたいなモノは、入っていなかったけど、彼女のキモチは、十分過ぎるくらい伝わってきた。
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