第3話 おっぱいビーム
忘れモノをしたことに気がついた俺は、大急ぎで高校に戻ってきた。
薄暗い廊下を抜け、教室に入る学園のアイドルでクラスメートの姫川理沙さんがなんと『スマホでおっぱいアニメ』を見ている姿を目撃してしまった。
たとえ双子でも、おっぱいの形や大きさが同じとは限らない。
おっぱいが左右同じように見えても、ちょっとずつ大きさが違うみたいにな。
おっぱいソムリエである俺が、姫川さんのおっぱいを見間違うわけがない。
あれは、間違いなく姫川理沙だ。
「おっぱいビーム」
大声で技名を叫び。
セクシーポーズまで決めるという熱の入れようだった。
「なかなかさまになっているわね。
自分の才能が恐ろしいわ」
さらにその様子をビデオカメラで撮影しているみたいだな。
「次はこのポーズを試してみようかしら」
姫川さんは胸元をはだけさせたり、スカートをたくしあげたり、髪を掻き上げたりといった感じで、次々とセクシーポーズを取っていく。
この世のモノとは思えないほどの存在感を放ち、穢れなき『美』がそこにあった。
それを見た俺は、我慢できずにおっぱいを揉んでしまう。
長い髪が乱れ、そのひと房が俺の鼻先をくすぐる。
かぐわしい髪の香り、熱くした肌の匂いも強く。
汗ばんだ肌は光り輝いて見え、ずっと嗅いでいたくなるような、男性の本能を刺激するような汗の匂いだった。
【ダイちゃんて、本当におっぱいが好きだよね。
初めて会った時もいきなり揉んできたもんね。
あの頃は、いまほど……膨らんでなかったけど】
俺は一心不乱に彼女の胸を揉み続けていると、おっぱいの声が聞こえてきた。
その声を聞いて、俺がなぜ彼女のおっぱいにこれほどまでに魅了されたのか。
わかった気がした。
おっぱいソムリエ失格だな。
たとえおっぱいの形や大きさ、ハリが変わっていてもすぐに気づくべきだったんだ。
「一度ならず二度までもおっぱいを揉まれることになるなんて!?
屈辱以外の何も出もありませんわ」
物凄い殺気と嫌悪感が伝わってきて、俺は慌てて手を離すと、バランスを崩して机の角にぶつかってしまう。
机が大きく揺れ、一冊のノートが床に落ちる。
「何かしら?」
姫川さんは乱れたブラウスと、はだけたスカートを整えってから立ち上がり、背筋がすっと自然に伸び。
「これ、アナタの机から落ちてきたけど。
授業で使っているノートにしては古臭いし、かなり使いこまれているわね」
さらに綺麗な姿勢になり、お人形のようなルックスとエレガントさを兼ね備えたお嬢様は、淡々とした口調で表情をまったく変えないで聞いてきた。
落ち着いた涼やかなもので、人を惹きつける品性のようなものを感じさせ。
「か、返してください」
「ふ~ん。
その焦りよう。
よっぽど見られたくないモノみたいね。
どれどれ……」
姫川さんはパラパラとページをめくり。
「よくもまあこれだけの情報を集めたモノですね。
まさに『おっぱい博士』と呼んでもいいレベルですよ。
おっぱいを描くのだけは上手いみたいですね。
それ以外はまるでダメですけど」
しっかりとくびれた腰に手を当て、姫川さんは自分の意見を述べた。
彼女の表情から少しだけ硬さが消え。
優しげなものになり、俺の方に顔を近づけて
「これも運命かもしれませんね。
私もおっぱいが大好きなんです。
ほら、見てください」
彼女は鞄からスケッチブックを取り出し、真剣な表情で、スカートを翻して迫ってくる。
「上手く描けているでしょう」
間近から上目遣いで見上げられ、思わずドキリと胸が高鳴った。
キレイに整った顔。
鼻や口のつくりはすっきりとしていて、どこか気品が感じられ、特に艶のある唇から発せられた鼻にかかった甘ったるい声。
淡雪のように白い頬は心なしか、色みを帯びているように見え。。
女性に対する恐怖心はすっかりと薄れていた。
男って生き物は、意外と単純にできているものだ。
「ああ、おっぱいが好きなのが、スゴく伝わってくる素晴らしい絵だな」
「でも私が『おっぱい好き』だということは、誰にも話さないでほしいんです。
約束できますか」
上目遣いで見つめたまま恥ずかしそうに話す姿に、俺は思わず見惚れてしまう。
「約束してくれるなら、エッチなお願いも聞いてあげても良いよ」
俺を誘うように、姫川さんは
ゆっくりと、まるで焦らすようにたくしあげられていく。
むっちりとした新雪の白さを持った太ももを露出させ誘惑してきた。
ミニスカートから現れている脚は、ニーソックスに
開放されていく脚部の奥付け根から、汗蒸れたような芳香が漂ってきた。
普段は隠れているモノがあらわになると、ついドキッとして、目が行ってしまう。
あと、少し……もう少し、もう少しで見えそうなに、見えない。
この限界ギリギリの『チラリズム』をみてしまったら、おっぱい一筋で生きてきた俺でも、性的な視線を向けてしまう。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
そんな俺の心中を見透かしたように、姫川さんは上品な笑みをたたえたまま。
「なんなら、恋人(仮)になった上げてもいいわよぉ」
その声は甘く、耳を通して直接脳を刺激してくる。
そして『ふぅ』と吐息がかけられるたびに、全身に刺激が走り。
ここまで大胆にスカートをめくり上げているにもかかわらず、まだ一度も『パンツ』はその姿を見せていない。
まるでパンチラNGのアニメみたいに不自然なまでに、下着だけが見えなかった。
それは姫川さんの『高潔さ』の表れなのかもしれないな。
「誰にも言わない。
約束するよ。
俺は変態だけど、紳士だから死んでも約束は絶対に守るよ。
だから……」
「ふふふっ!?
もう、ダメ!?
ふはははっ。
笑いすぎてお腹が痛いわぁ。
き、キミって、本当に面白いヒトね」
いつもはうまく人と会話できないのに、今は興奮しすぎて、気が大きくなっているのか?
話し相手が『女性』だということを意識せず気軽に話せていた。
自分でも呆れるくらいのハイテンションで、身ぶり手ぶりを加えながら答えていると突然、姫川さんが腹を抱えて笑い出した。
「俺……そんなに可笑しなこと言いましたか?」
「昔、アナタみたいな人に会ったことがあって、それをちょっと思い出してしまいました。
とてもおっぱいが好きなシャイな可愛らしい男の子でした。
確か名前……は……もしかして、あのダイスケくんなの。
見違えるほど男らしくなったけど、内面は何も変わってないんだね」
「は、はい……そうです。
その節はお世話になりました。
姫川さんも見違えるほどキレイになりましたね。
特におっぱいが……ごふぅ……」
顔面に鋭い蹴りが飛んできた。
++++++++++++++++++++++
その日の夜。
自室でおっぱいアニメを鑑賞していたら、殺妹ちゃんからメールが来た。
『お姉ちゃんと付き合うことになったって、どういうことなのよ。
納得のいく説明をしなさいよ、この浮気者』
続いて、姫川さん(姉)からもメールが来た。
『妹に私たちが付き合い始めたことを、お話したところ。
わたしの彼氏をとらないでよ、と怒られてしまいました。
そこでダイスケくんにお願いがあります。
もし、妹の殺妹からメールが来たら。
私のことは気にしないでいいので。
妹のキモチに答えてあげてください。
大切な妹なんです。
だから、どうかよろしくお願いします』
最後まで読み終え。
姫川さんがどれだけ妹のことを大切に想っているのかが伝わってきた。
正直、俺は悩んだ。
俺が好きなのは『姫川理沙』だ!?
殺妹ちゃんじゃない。
でもそのことを正直に打ち明ければ、彼女たちとの関係性は確実に悪化するな。
今まで以上に距離を置かれ、口も聞いてもらえなくなるかもしれないもんな。
それに殺妹ちゃんが俺のことを好いてくれているのは、完璧すぎる姉に対してのコンプレックスからきているものだと思うから。
俺は殺妹ちゃんにこうメールすることにした。
『あんな暴力女なことを本気で好きになるわけないだろう。
俺が好きなのは、殺妹ちゃんだけだよ』
『そう言ってくれるのは、もちろん嬉しいですけど、やっぱり信じられません。
そこでわたし、考えたんです。
執事として一ヶ月間、私たちが住んでいるお屋敷で働いてもらうことはできませんか。
一ヶ月間……一緒に暮らして何もなかったら、私も前に進める気がするんです。
もちろん、お給料もお支払いします。
どうでしょうか』
俺にはこの提案を断るという選択肢はなかったので、お受けすることにした。
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