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翌日、私は翼の写真を封筒に入れ真に送った。
愛らしいこの子の顔を、真に見てもらいたかったからだ。
真が翼を見たら、どう思うのだろう。
翼に逢いたいと……
翼を抱きしめたいと……
きっと思ってくれるよね。
――私は狡い女だ。
真に『一人で育てる』と断言したくせに、真の心を揺さぶるなんて……。
翼の写真を見た真が、この子に逢いにきてくれると願った。
――そして……私の願いは通じた……。
真が、翼に逢いにきた。
真の顔を見て、感極まり涙が溢れた。
元気よく泣いている翼の声を聞き、真は玄関先で我が子の泣き声を視線で追った。
私は真を家に上げ、和室に案内する。
ベビーベッドで泣いている翼をバスタオルでくるみ抱き上げ、真の腕の中に渡した。
――翼……パパだよ。
パパが逢いにきてくれたんだよ。
心の中で、翼に話し掛ける。
真は翼を両手で抱き締め涙を溢した。
そして私を抱き寄せ『奈央……ごめんな』って言ってくれた。
もう……泣いてもいいよね……。
真のアパートを飛び出して、次第に大きくなるお腹を抱えて、アルバイトをしていた不安な日々が蘇る。
――『奈央……。俺と一緒に暮らそう。俺……翼の父親になりたい。……俺と……結婚してくれないか』
本当なの……?
涙は止まることなく溢れ、私は真の胸で子供みたいに泣きじゃくる。
翼に……父親が出来る……。
母子家庭で育った私は、父親のいない寂しさを十分知っていたから。
真が『翼の父親になりたい』と言ってくれたことが、何よりも嬉しかった。
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