あくりょうさんたちへ
木亥
あくりょうさんたちへ
ぼくの学校では、たいへんなことがおこっています。まい年学校で、たくさんのおともだちが、つぎつぎとなぞのびょう気にかかっています。ずつうをおこしたり、はいたり、にゅういんしたり、中にはしんでしまったおともだちもいます。そのおともだちの一人がしぬまえにこう言いました。
「...ノ...レ...ツ...」
ノレツ?
ぼくは、かれがさいごに言ったことが気になってメモをとりました。
そういえば、ぼくにはほかの人には見えないものが見えているのです。それは、おばけのようなこわい男の人たちです。そのうちのほとんどはおじいちゃんです。その男の人は町、家のちかく、学校、どこにでもいます。ぼくが学校に行くみちにも十人いじょういます。その男の人は
「のろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろうのろう」
とか
「ねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやしねだやし」
とか
「ころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころす」
とか
「ケ...フ...ズ...」
などとこごえで言っていました。ケフズも気になったのでメモに書きました。
ある日、よなかにおしっこしたくなって、トイレに行ったところ、あのこわいおじいちゃんがいました。ぼくはこわくてお父さんにたすけをよびました。
「おとうさんおとうさん、こわいおじいちゃんがトイレに...」
お父さんとトイレに行ったところ、そのおじいちゃんはまだいました。でも、お父さんは
「え、だれもいないぞ。ねぼけてんじゃないのか?」
と言いました。
「いるんだっては!ここにこわいおじいちゃんが!」
なんど言っても、お父さんは分かってくれませんでした。
あと、ぼくにしか見えていないものはこわい人だけではありません。ぼくのいえにいつもいたやさしそうなおじいちゃんです。そのおじいちゃんは、ぶつだんにあるひいおじいちゃんの顔にそっくりでした。そのおじいちゃんに聞いてみたら、本当にひいおじいちゃんでした。ひいおじいちゃんに聞くと、ぼくがうまれる二年まえになくなったそうです。ひいおじいちゃんはぼくにむかしのことをいろいろとおしえてくれました。
そんなひいおじいちゃんもきょ年、お空にのぼっていきました。もしかすると、あのぼくにしか見えない、こわい男の人たちもゆうれいなのかもしれない、そう思いました。
よく日、お父さんやお母さんにそのことをつたえました。それでもしんじてくれなかったので、ひいおじいちゃんがぼくがうまれる二年まえになくなったことや、ぼくがうまれるまえのことなど、ひいおじいちゃんに聞いたことをたくさん話しました。やっぱりしんじてくれませんでした。
こうなったらと、おばあちゃんに話してみました。おばあちゃんはいつもぼくの話を楽しそうに聞いてくれる大すきなおばあちゃんです。おばあちゃんならきっとしんじてくれるはずだと思いました。
「『ぼく』ちゃん、まさかゆうれいが見えるのかい?」
「うん、ひいおじいちゃんもぼくがうまれる二年まえになくなったんだよね?」
「ひいおじいちゃんに聞いたんだね?」
「うん、そうだよ!」
「じつはおばあちゃんも見えているんだよ。」
まさか、おばあちゃんにもゆうれいが見えているとは思いませんでした。そしてぼくは、学校でおきたこと、なくなったおともだちの一人がさいごに言ったこと、ゆうれいかもしれないこわい男の人たちについて話しました。
「やっぱり見えていたんだね...つらかったね...あんたも、あんたのおともだちも...」
おばあちゃんがこう言ったとき、おばあちゃんのこえがふるえているのがわかりました。
それからおばあちゃんはそのことについて話しました。あれは100年まえのへいせいというじだいのさいごにおこったそうどうでした。おともだちのさいごのことば「ノレツ」も、こわい人が言っていた「ケフズ」もそのそうどうにかんけいのあることばでした。そのそうどうがおこったころにはおばあちゃんもうまれていませんでした。そのそうどうにより、多くの人たちはいかりくるったそうです。かれらは、そのそうどうのかんけいしゃを一人のこらずぜんいんつぶそうと考えていたそうです。そのいかりは何年たっても何十年たってもきえず、やがてそのそうどうのかんけいしゃも、みんな年をとりしんでいきました。それでもその人たちのいかりはおさまりませんでした。かれらは
「しんで楽になったと思うなよ。一人も天ごくにも行かせねえ。ぜんいんのろってじごくにおとしてやる。」
とかんけいしゃをしぬまでうらみつづけたそうです。そして、かれらは今でも、こわい男の人たちであるあくりょうとして、100年まえのそうどうのとっくのむかしになくなったかんけいしゃをぜんいんのろおうとしています。
ぼくはあくりょうであるあなたたちにつたえます。あくりょうさん、そうどうのかんけいしゃはもうとっくのむかしにみんなじょうぶつさせられました。おねがいします。もう人をのろうのはやめてください。ぼくのおともだちもあなたたちにくるしめられています。おともだちをこれいじょうくるしめたりころしたりしないでください。あくりょうさんたちもおともだちがきずつけられるのはいやでしょう...?
2119年7月4日 「ぼく」より
あくりょうさんたちへ 木亥 @KAgeneKo
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