第44話 不登校 由利

 あれから三日経っても由利が来ることはなかった。


「はぁ~」


 そして、日に日に莉奈のため息を増えてきた。


「ヤバいよ莉奈ちゃん。ここんところ毎日ため息を吐いてるよ」

「全くね。こっちまで幸せが逃げそう」

「香織ちゃん。莉奈ちゃんは悩んでるんだからそんな言い方しちゃダメでしょ」

「ご、ごめんなさい。別に傷つけるつもりはなかったのよ」


 汐音も香織も日に日にやつれていく莉奈を心配している。

 浩輔も莉奈の容態が心配だった。

 あのいつも騒がしいほど元気のある莉奈が、いつも静かなのだ。


 それに由利のことも心配だ。


 もう学校に三日も来ていない。

 しかし、クラスメイトはさほど気にしておらず、いつも通りの日常が流れている。


 それが浩輔にとっては歯がゆかった。

 クラスメイトが三日も来ていないのに汐音や香織以外、誰も気にかける人がいないのだ。


 薄情だと思う。


「莉奈さんも心配だけど由利さんも心配だな」

「そうだよね。もう三日も来てないしね」

「私たちでなにか力になれることはないのかな」


 浩輔三人たちは頭を抱えて悩む。

 前の兄妹喧嘩は妹の汐音と龍次の妹の香織だった。

 汐音は言わずもがな仲が良かったので、協力もでき、香織も龍次を通して協力を仰いだ。

 ただ、香織とは大喧嘩してしまったが。


 でも今回のケースは違う。


 浩輔は莉奈とも由利ともさほど仲良くない。

 そんな自分に一体、なにができるというのだろうか。


「私と香織ちゃんの喧嘩は結構周りのみんなに迷惑かけたよね」


 由利と莉奈の喧嘩で、あの大喧嘩を思い出したのだろう。

 懐かしそうに汐音は話す。


「あ、あの時は本当に悪いと思ってるわ」


 香織もあの喧嘩のことは思い出したくないのか、ツンデレしている。


「確かにあの時は大変だったな」

「浩輔君まで。確かに浩輔君とも大喧嘩したけど」

「あの時は僕もカッとなっちゃって」

「それはしょうがないことでしょ。……汐音さんを傷つけた私がこんなことを言うのもおこがましいかもしれないけど、私も汐音さんを深く傷つけてしまったんだから。兄の浩輔君が激怒するのは間違ってないわ」


 香織もあの大喧嘩のことをいたく反省している。


 それは浩輔も同じだった。


 もちろん、汐音もだ。


 浩輔は頭ごなしに香織にキレ、香織も頭ごなしに汐音と香織にキレた。

 お互い、お互いの言いを聞かずに喧嘩をし、龍次の手伝いもあって喧嘩は終息した。


「だけど、このままは嫌だよね」


 付き合いは短いが、由利も莉奈も浩輔にとって大切な友達だ。


 その二人がいがみ合っている。……いや、傷ついている。


 そんな二人のためになにかしてあげたい。


「うん。莉奈ちゃんの辛そうな顔を見るのも嫌だし、由利さんにも学校に来てほしい」

「私は、二人とはそこまで親交は深くないけど、やはり姉妹仲良しが一番よ」


 汐音も香織も浩輔同様二人のことを心配している。


「なになに、また竜ちゃんの惚気」

「なっ……別にそういうことじゃないわよ」


 汐音が下品な笑みで香織をからかう。

 からかわれた香織は顔を真っ赤にして反論するが、全然説得力がない。


「そうだよな。兄妹仲が良い方が良いよな」


 浩輔も兄妹は仲が良いと考えている。

 浩輔には双子の妹、汐音がいるがとても仲は良好だろう。

 一緒にお風呂に入ったり、たまに一緒に寝たり。

 さすがに高校生の兄妹だとそこまで仲が良い兄妹は稀である。


「そうそう。兄妹が仲が良い方が良いよ」


 汐音もウンウンと頷いている。


「当たり前だわ。そんなことこの世の真理よ」


 超ブラコンの香織も偉そうに威張っている。

 このブラコンのせいで大喧嘩をしたが、そのおかげで浩輔も香織と仲良くなることができた。


 結果、オーライだろう。


「でもそのせいで香織ちゃんが私と龍ちゃんに嫉妬して喧嘩になったんだけど」

「またその話を蒸し返すよ。女々しいわよ」

「はいはい。でもあの時のお兄ちゃんは優しかったな。一緒にお風呂に入ってくれて一緒に寝てくれて。最高だったな」


 汐音はその時の夜のことを思い出しているのか、表情が蕩けている。


 汐音も言わずもがな、ブラコンである。


「なに汐音さんはお兄ちゃん……この場合は浩輔君だけど、羨ましいことしてるの。私もお兄ちゃんに直訴しなきゃ」


 お兄ちゃんと一緒にお風呂に入り、一緒に寝たのがそんなに羨ましいのか、目が燃えている。


 きっと今、龍次の背中に悪寒が走ったに違いない。




「なんだ。寒気がする」




「……まっ、僕たち以外にも仲が良い兄妹はいるけど」


 浩輔はばれない程度に伊藤兄妹の方を見る。

 このクラスの双子兄妹のうちの一組だ。

 あの二人はいつも一緒にいる。

 そして自分たち以外の人たちを仲良く話している姿を見たことがない。


 控えめに言っても不気味な双子である。


「あらあら、浩輔君が私たちを見てるよ咲夜」

「そうね。浩輔君が私たちを見てるわね、咲夜」

「なにを三人で相談してるんだろう」

「なにを三人で相談してるんだろう」

「きっと由利ちゃんのことだろう」

「きっと由利ちゃんのことだろう」

「私たちには関係ないけど」

「私たちには関係ないね」


 浩輔の微かな視線を感じ取った二人は、会話に興じる。


「……汐音ちゃん、浩輔君、香織ちゃん。話があるんだけど」


 莉奈になにかしてあげたいけど、なにをしてあげればいいか分からず悩んでいたところに、莉奈本人がやって来た。

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