第23話 妹と一緒にお風呂

とりあえず濡れたままでいると風邪を引くと思い、浩輔は汐音を脱衣所に連れて行った。


「汐音、一人で脱げるか」


 浩輔が聞くと汐音は黙ったまま頷いた。

 濡れた汐音を背負って来たので浩輔までびしょ濡れである。


「……ゴメンね、お兄ちゃん」


 汐音はなにに謝ったんだろう。

 浩輔に心配させたことなのか。

 それとも、浩輔を濡らしてしまったことなのか。

 今の汐音からは察することができなかった。

 こんな弱弱しい汐音を今まで見たことがなかった浩輔は汐音が心配だったので、一緒に入ることにした。


 服を脱ぐと、いっそう小さく見える。

 汐音の身長は平均的な女子と比べると高いが、胸は小さい。

 スラリと長い手足はモデルのようだ。

 全体的にスリムで、胸は慎ましく存在している。

 サーモンピンクの乳首は、元気がなくぶら下がっている。


 一人では体を洗うのも大変なぐらい憔悴している汐音の体を洗い、お湯に浸かる。

 浩輔はお風呂に一回入ったので、特に体は洗わなかった。


 お風呂は適温だ。


 きっと、濡れて冷えた体にお風呂の温かさが染み渡っているだろう。

 龍次の家でなにか問題が起こったのは間違いないだろう。


 でも、一体なにが起こったのだろう。


 今まで龍次の家に行って、こんな憔悴しきって帰ってきたことなんてなかった。


 よくあるカップルなら無理矢理犯されたとか、浮気されたとか考えられるが、犯す方はむしろ汐音の方だし、龍次が浮気したとは考えられない。

 そもそも龍次に彼女にできる人どころか、友達も少ないのだから。


「……木村先輩に犯されたのか」

「……」


 汐音は首を横に振る。


「……浮気でもされたのか」

「……」


 またしても汐音は首を横に振った。

 やっぱりと思ったが、そういうことではないらしい。


 不良みたいな見た目だけど心優しい龍次のことだ。

 汐音を傷つけることはしないだろう。


 その後はしばらくの間無言が続いた。

 汐音と一緒にお風呂に入るのはいつぶりだろう。

 汐音が龍次と付き合ってからは一度もなかったはずである。

 汐音が龍次と付き合ってからほぼ毎日のように遊びに出かけていたような気もする。

 そのため、一人で家にいることが多く、お風呂も一人で入っていた。


 隣には全裸の妹、汐音がいる。

 ついさっきまで龍次と体を重ねていたのだろう。

 そう考えるといつの間にか汐音も遠い存在になってしまったと思う。


「……あっ」


 お風呂は基本温かく、入っていると自然に血行が良くなる。

 そのおかげで、浩輔の頭に血が回り一つの答えに辿り着く。

 なんでそんな簡単なことを思い出せなかったのだろう。


 しかも今日の放課後のことだ。


 自分でも自分が馬鹿で笑ってしまう。


「……もしかして木村香織のことか」


 浩輔が木村沙織の名前を言った瞬間、瞳孔を大きく開き体をビクンと震わせる。


 ビンゴだ。


 きっと、龍次の家に行っている時に香織と遭遇したのだろう。

 あの時の香織は憎しみに燃えていた目をしていた。


「やっぱりそうなのか」


 あの時の香織は普通ではなかった。

 きっと香織が汐音にひどいことしたのだろう。


「汐音、一体木村さんになにをされたんだよ」


 こんな可愛い妹を虐めるなんて香織を許せなかった。

 その怒りの矛先が汐音に向いてしまい、汐音の肩を思いっきり掴んでしまった。


「……痛いよ、お兄ちゃん」

「ご、ごめん」


 汐音に言われて冷静さを欠けていたことに気づき、浩輔は汐音に謝る。


「汐音、一体木村先輩家でなにがあったんだ」


 兄という生き物はどうしようもないぐらい妹のことが心配な生き物である。

 最初は無言を貫いていた汐音も、事の顛末をポツリポツリ話し始めた。

 そして全部を聞き終えた浩輔は香織に対して、マグマのような熱く滾る怒りが込み上げてきた。


「……許せない」


 一言で今の浩輔を表現すると、香織を許せない気持ちでいっぱいだった。

 汐音はなにも悪いことをしていない。


 もちろん、龍次もである。


 二人は仲良く、セ〇クスをし付き合っていただけである。

 確かに最初、妹が龍次と付き合うことになった時はショックだったし心配もした。

 でも、龍次は汐音が選んだ相手であり、例え兄妹であっても過度に干渉するのは間違っていると浩輔は思う。


「……お兄ちゃん」

「大丈夫だ汐音。汐音はなにも間違っていないよ」

「うぅ~お兄ちゃん」


 香織に責められて自分が悪いと思っていたのだろう。

 汐音は性欲旺盛な女子高生だが、繊細で傷つきやすい女子高生でもある。


 汐音はソッと浩輔の胸に倒れ込み嗚咽を漏らす。

 浩輔はただ優しく抱きしめる。


 冷えていた汐音の体はいつの間にか、温かくなっていた。

 でも心はまだ冷たいだろう。


 女性らしく柔らかい汐音の体。

 汐音もどんどん女性らしくなっていることを知り、ますます可愛い妹だと思う浩輔だった。

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