第14話 朝チュン

 昨日なかなか家に帰ってこなかった汐音が心配でスマホに電話をかけてもつながらなかった浩輔は不安でしょうがなかった。

 汐音の身になにかあったんじゃないだろうか。

 そんな時、龍次から電話をもらった浩輔は龍次の家に汐音がいることが分かり、安堵した。

 龍次の家にいるならなにも心配はないと思い、昨日は寝た。


「お兄ちゃん、起きて。朝だよ」


 なぜか汐音の声が聞こえてくる。


 これは夢だろうか。


 だって汐音は昨日、龍次の家にお泊りしたはずである。

 妹の汐音が家にいるわけがない。


「お兄ちゃん、どうしたの。今日は寝起きが悪いね。そうだ」


 浩輔が夢と現実の狭間を漂っていると、頬にふっくらと柔らかい感触が伝わってくる。


「うわっ」


 その感触があまりにも生々しい感触だった浩輔は飛び跳ねるように起き上がる。

 いつの間にか空の上には太陽が昇っていた。

 もう朝になっていたのだ。


「おはようお兄ちゃん」

「……おはよう汐音」


 笑顔で浩輔に挨拶をする汐音に、浩輔は半覚醒の頭を回転させながら挨拶を返す。

 そう言えば龍次が朝になったら送っていくと昨日の夜言っていた。


 今は朝だ。


 つまり、龍次が今日の朝、汐音を送り届けに来てくれたのだろう。

 あとでお礼を言っておかないとな。


「まさかお兄ちゃんが妹のキスで起きるシスコンだったとは。初めて知ったよ」


 からかう口調で自分の唇を押さえている汐音。

 今日の朝のあの、ふっくらとした柔らかい感触を思い出した浩輔の顔が紅潮する。

 あれは汐音のキスだったんだ。


「ちょ……お前、兄に対しなにしてんだよ」


 混乱している浩輔は言葉を噛みながら汐音にキレる。


「なにってキスだよ」


 さも当然と言わんばかりに表情を変えないで汐音は言う。


「兄にキスとかお前の貞操感、どうなってんだよ」

「だって別に頬だし。外国では挨拶代わりだよ」

「それでも木村先輩に申し訳ないだろ。……僕が」


 汐音はなんとも思っていないのかもしれないが、女子にキスをされたことがない浩輔にとってはとても刺激的なことだった。

 それに汐音には龍次という彼氏がいる。

 そんな彼氏に対しても自分がされたとはいえ、汐音にキスをされたことに後ろめたさを感じてしまう。


「大丈夫大丈夫。私たち兄妹だから。それは龍ちゃんも知ってることだし。それに私の貞操感のことはお兄ちゃんも知ってるでしょ。ほとんど毎日龍ちゃんとセ〇クスしてるんだから」


 確かに汐音の貞操感などもはや無いに等しかった。

 毎日セ〇クスしている汐音にとってはキスなんて、もはや呼吸同然なのだろう。


「それに口じゃないんだからお兄ちゃんこそそんなに騒がないでしょ。でも龍ちゃんは別だよ。龍ちゃんとは口でもキスしてるし、龍ちゃんのちん〇ん加えてフ〇ラしてるし」


 妹は恥ずかしくないのか、堂々と龍次との夜の営みの情報を兄の浩輔に伝えてくる。


 ってちょっと待てよ。


 起きて頭に酸素が回り始めた浩輔の脳が活発に動き出す。


 今日、汐音は朝帰りをしてきた。

 つまり、今まで汐音は龍次とエッチをしていたことになる。

 それはもちろん口でするフ〇ラも含まれるだろう。

 つまり、今の汐音の口は龍次の体液や龍次とエッチしてきた唇である。

 結論、今浩輔は龍次と間接エッチをしたということである。


 それはそれで嫌である。


 別に龍次のことが嫌いなわけではない。

 むしろ、いつも頼りになる先輩として、また妹の彼氏として好きである。

 でもそれとこれとは話が別である。

 さすがに龍次と体液交換はしたくない。

 浩輔が青い顔して口元を押さえていると、察した汐音が訂正してくる。


「大丈夫大丈夫。ちゃんとさっきお風呂に入って体も顔も頭も洗ってきたから。ホントお兄ちゃんってウケる」


 龍次との間接エッチで落ち込んでいる浩輔に汐音がケラケラと笑っている。


「なら、早く言え」


 妹に見透かされていることが恥ずかしかった浩輔は声を荒げる。


「はいはい。朝食できてるから着替えたら早く下りてきてね」


 汐音はにひひひひと笑いながら、浩輔の部屋から出て行った。

 その後、汐音に茶化された浩輔はモヤモヤした気持ちのまま、制服に着替えて下に下りていった。

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