第11話 ストレッチって……エロい

 体育の日は憂鬱だった。

 でも今日からは違う。


「では好きな人ペアを組んでストレッチをしてください」


 今日も体育の先生、戸崎日香里が悪魔の号令をかける。

 いつもだったら、胃をキリキリさせながら先生と一緒にストレッチを行っていただろう。


 でも今日は違う。


「浩輔君、一緒にストレッチをしよ」

「うん、由利さん」


 今日の浩輔にはちゃんとパートナーがいる。

 由利が近づいてきて浩輔に話しかけてペアがすぐに完成する。


「お兄ちゃんにもちゃんとペアを組んでいる人がいるんだね。妹として嬉しいよ」

「お姉ちゃんも良かったね」


 妹たちがなぜか巣立つ子供を見送る親のような眼差しを向けてくる。


 遺憾だ。


 ちなみに汐音は莉奈とストレッチを行っている。

 妹同士仲が良くて結構。


「良かったね浩輔君。ペアができて」


 由利と一緒にストレッチをしていると、心配だったのか日香里が浩輔のところにやって来た。


 戸崎日香里。今年四年目の体育の先生だ。

 身長は百七十前半と浩輔とほとんど身長は変わらない。

 年は二十五歳。独身。そろそろ孫の顔が見てみたいと親にせつかれているらしい。

 大人も大人で大変らしい。

 黒髪のロングボブで活発な印象と同時に二十五歳の色気も併せ持っている。

 体育教師というわりには胸がありDカップぐらいある。

 そのせいで、日香里とストレッチをすると胸が浩輔の背中に当たりドキドキばかりしていた。

 十代とは違う二十代の胸は浩輔にとって未知の領域だった。


「はい、これで先生の手を煩わせる必要はありません」

「そんなに謙遜しなくても良いんだけど。でも浩輔君と一緒にストレッチしていたら高校生の頃を思い出して楽しかったよ」

「先生だってまだお若いじゃないですか」

「上手いんだから」


 先生とストレッチしていたおかげか、年上の女性、特に先生と話す方が同級生の女の子よりも楽になっていた。

 それはそれでどうかと思うけど、日香里はとても気さくで話していて楽しい。

 証拠に日香里は男女問わずに人気者である。


 副担任の真希とは大違いである。


「由利さん。もう少し強く押しても浩輔君は大丈夫よ」

「そ、そうなんですか」

「ちょっと代わってもらって良いかな」

「あっ、はい」


 由利は日香里と話し慣れていないのか、受け答えがしどろもどろである。

 浩輔だって最初はそうだった。

 こんなにも美人な先生に話しかけられたら最初はしどろもどろになるだろう。

 両足を開いてストレッチしている浩輔の後ろを由利に譲ってもらった日香里。

 日香里は体全体で、しかし優しく浩輔の背中を押していく。


「これぐらいなら浩輔君は大丈夫よ」


 ストレッチしながら由利に教える日香里。

 浩輔は筋を伸ばすのと同時に、日香里の胸の感触を堪能していた。

 十代の張りや瑞々しさはないが、その分大人の色気がある日香里の胸。

 大きさも平均より大きく、それになにより柔らかい。

 浩輔の硬い背中に日香里の柔らかい胸が潰れる度に幸福感に包まれる。


 ストレッチって……エロい。


 そんな馬鹿なことを考えてしまう。


「それじゃー由利さんもやってみて」

「はい」


 手本を見せた日香里は浩輔の背中からどいて、由利に譲る。

 その時、ほんの少し名残惜しかったのは秘密である。

 由利は手本を見せた由利のように体全体を使いながら優しく浩輔の背中を押していく。

 由利の胸が浩輔の背中に当たっているらしいのだが、全然その感触が伝わってこない。

 伝わってくるのはブラジャーの感触だけである。


 そうだった。


 浩輔はすっかり忘れていた。

 由利が貧乳だったことを。

 由利が貧乳過ぎてあの柔らかい胸の感触が伝わってこなかったのだ。

 それは残念だったが由利が一生懸命やってくれたのは嬉しかった。


「いいよ。ちゃんと浩輔君の筋は伸びてるよ」


 そんな二人を嬉しそうに見つめている日香里。


「……青春って良いな」


 その日香里の呟きだけは聞かなかったことにしよう。

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