第10話 ボッチのさだめ

 友達が少ないと人間関係が楽だが弊害もある。

 それは授業で度々ある『好きな人と二人でペアを作れ』という先生の言葉だ。


 この好きな人と二人でペアを作れというのは教師から生徒へのパワハラではないかと浩輔は考える。

 確かにリア充グループの人間はたくさん友達がいるのから好きな人とペアを作るなんて朝飯前だろう。


 だが浩輔たちボッチは違う。

 誰と組むと、そしてどう誘うか毎回胃がキリキリして痛い思いをする。

 そもそもそんなに仲が良い人がクラスにいないし、余った人同士で組むと『どうしてお前がこんなところに来たんだよ』という目で見られてしまう。

 特に体育では組む人がいないのでいつも先生と二人でストレッチを行う。


 本当に恥ずかしい。


 でも唯一の救いは若くてキレイな女性の先生というところだろう。

 もし四十代五十代の男性の先生だったらもっと嫌だった。


「「はぁ~」」


 偶然にもため息が重なる。


「どうしたの浩輔君」

「そちらこそどうしてため息を吐いてるの由利さん」


 今は五時間目と六時間目の間にある休み時間。

 今日最後の授業はなんと体育だった。


「だって体育だから」

「僕も……」


 お互い次の授業が体育ということで憂鬱になっている二人。


 ここは更衣室。


 お互い着替えの途中で、由利はブラウスを脱いでブラジャーとスカート姿だった。


この日本では数十年前から男女共用社会が定められ、男女の区別や差別がなくなった。

 そのため、トイレや更衣室、お風呂など、男女で分かれていたものが一つになっていた。

 だがもちろん、同性異性問わずに人を不快にさせることは禁止されている。

 例えば、ボディータッチなどが上げられる。つまり、見るのはセーフだが触るのは人によってはアウトということだ。

 だからここで浩輔が由利の胸を揉めばセクハラが成り立つ。

 そんなことするつもりはないが。

 由利のブラジャーは真っ白の無地で、ほとんど色気がなく、また膨らみもなかった。

 更衣室には男女入り乱れているので女子のフローラルな匂い男子の男らしい匂いが混ざり合いカオスになっている。


「莉奈ちゃんって大きくて羨ましいよね」

「そうかな。大きいと肩が凝ったり可愛いブラがなくて大変だよ」

「だっておっぱいが大きい方が男の子は喜んでくれるでしょ」

「「「そうだ。そうだー」」」


 汐音と莉奈が胸を見せ合いながら胸の話をしていると、男子の七割が茶々を入れる。

 ここにいる男子も年頃である。


 おっぱいは大好物である。


「ほらね。やっぱり龍ちゃんも大きい方が好みなのかな」

「龍ちゃんって木村先輩のこと?そもそも木村先輩に彼女がいるなんて信じられないんだけど。あの木村先輩がメロメロな姿やデレデレな姿が想像できない」

「龍ちゃんって結構可愛いところがあるんだよ。例えばね……」

「えっ、そうなの」


 着替えながらキャッキャ言いながらじゃれ合う二人。

 不覚にも龍次の可愛いところを知りたくなった浩輔だった。


「体育って二人一組でストレッチしなきゃいけないから嫌なの」

「僕も。あれって拷問だよね」

「そうそう。そもそも私友達が少ないしいつも莉奈と一緒のグループに入れてもらって。それが少し恥ずかしい」

「あっ、だから僕が余るのか」


 なぜいつも自分だけが余るのか不思議に思っていた浩輔の謎が解けた。

 他の学校はどうか分からないが、基本偶数になるように分けられる。

 浩輔たちのクラスもそれは例外ではなく、偶数だ。

 それなのに浩輔だけが余るのはおかしいと思ったがまさか、由利が莉奈と三人グループを作っていたとは。


 通りで浩輔だけが一人余るわけである。


「ご、ごめんね」


 由利はなぜか浩輔に謝る。


「別に大丈夫だよ。もし良かったらなんだけど、今度から僕と一緒にペアを組んでくれないか」


 自分でもビックリするぐらいにスラスラと言葉が出てきた。

 今までの浩輔だったら人をなにかに誘う言葉など喉に引っかかって言葉すら出てこなかっただろう。


「い、いや、莉奈さんと一緒が良いならそれでも良いけど」


 出過ぎたまねをしたと思った浩輔は自分に予防線を張る。

 こうすれば断られた時、ダメージが少なくて済む。


「別に大丈夫だよ。むしろ、こちらこそよろしくお願いします」


 由利はハニカミながら頭を下げる。


「こちらこそありがとう」


 この雰囲気は自分も頭を下げないといけないという見えない圧力がかかり、浩輔も頭を下げる。


「なんだお見合いか」

「お兄ちゃんにも春が来たの」


 妹たちにからかわれてますます顔が赤くなる二人だった。

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