第7話 ボッチの苦悩と策略

 友達が少ないと割とフリーな時間が多い。

 自分で言っていて悲しくなるが、縛られなく生きていけるのはメリットかもしれない。


 だから浩輔は昼休み、一人で過ごしている。

 妹の汐音は莉奈とクレープの話で盛り上がっている。

 一方、友達の少ない由利は一人で教科書を読んでいる。

 これはボッチの浩輔だから分かることだが、別に教科書を読んで頭が良くなりたいからではない。


 これは一種の自己防衛なのだ。

 私は忙しいアピールをして、はぶられているわけではなく一人で過ごしたいと周りに認知させているのである。

 そうすれば友達がいないから一人になっているわけではなく、一人が好きだから一人でいるというアピールができる。


 やっている本人はさぞかし虚しいだろう。


 だったら浩輔が話しかければ良いじゃないかと周りの人は思うだろう。

 そんな問いは愚問だ。

 そんなにコミュニケーション能力があれば、ボッチになるわけがない。

 そもそも、今まで話していなかったクラスメイトが急に特定の誰かと話し始めたらいろいろな噂が飛び交う。


 しかも相手は異性だ。


 恋や恋愛に興味津々の高校生がこのネタで盛り上がらないわけがない。

 そういう理由もあって、浩輔は由利に積極的に話しかけないのだ。

 別に、コミュニケーション能力がないとか、話しかける勇気がないわけではない。


 決してないわけではない。


 ここ、大切なところなの二回言った。


「トイレにでも行くか」


 誰も浩輔には注目していないので、浩輔がなにか独り言を言っても気に留める生徒はいない。

 それはそれで悲しいのだが。

 浩輔は誰にも注目されずにトイレに向かう。

 別にトイレに行きたいわけではないのだが、なにかしていないと『あいつ、ボッチなんだ。プププ』という馬鹿にするような視線を向けられたくないからだ。


「はぁ~、学校が辛い」


 浩輔は教室の息苦しさから解放され、ため息をこぼす。


 廊下は賑やかだ。

 廊下の端に集まり、グループで楽しそうに談笑している。

 廊下に出ると他クラスの生徒や先輩後輩もたくさんいるので、浩輔がため息を吐いたって誰も心配してくれる人はいない。


「どうした浩輔。ため息なんて吐いて」


 いや、いた。


「あっ、木村先輩。こんにちは」

「こんにちは。お前、まるで監獄生活をしている囚人よりも覇気はねーぞ」


 浩輔がため息を吐いても心配してくれる生徒が一人だけいた。

 それは木村龍次。汐音の彼氏だ。

 木村龍次は西条高校に通う三年生だ。

 身長は百八十半ばと高く、体もガッチリしているので、身長以上に圧力を感じる。

 龍次は不良で制服も着崩しており、また髪もオールバックに仕上げている。

 だけど染色はしないという謎のこだわりを持っていて、色は黒のままだ。

 見た目が怖くて勘違いされやすい性格だが、龍次は面倒見が良い。


「そんなに元気がないように見えますか」

「汐音の双子とは思えないほど元気がないように見える。むしろ、汐音に元気をわけてもらえ」


 双子と言っても二卵性双生児だし、汐音は特別な存在だ。

 誰にでも明るく優しくて、勉強も運動もでき、さらに友達もたくさんいて彼氏だっている。

 スペックだけ見ても完全に勝ち組である。


「……アハハ、確かに汐音の元気は羨ましいですよね」


 乾いた笑みを浮かべる浩輔。こんな時、どんな表情をすれば良いのか分からない。

 決して笑えば良いという状況ではない。


「そんなしけた面してんじゃねーよ。暇なら中庭でも行くか。ジュースぐらいおごってやる」


 廊下で立ち話するのも廊下を歩く生徒の邪魔になると思ったのか、龍次は自然な流れで浩輔を中庭に誘導する。

 その他にもあまり他の人に聞かれたくない話をしやすいように移動させたのかもしれない。

 龍次は見た目は不良だが気配りができる面倒見の良い先輩だった。

 でなかったら汐音の彼氏なんて務まらないだろう。

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