第6話 桐山兄妹と漆原姉妹

「おっはよー莉奈ちゃん。昨日は私のお兄ちゃんがお邪魔してゴメンね」

「おはよう汐音ちゃん。そんなことないよ。お姉ちゃんと三人でとても楽しかったよ」


 教室に入るとすぐに昨日の話題で盛り上がる汐音と莉奈。

 この二人は今年初めて同じクラスになったのだが、二人とも社交的な性格ゆえにすぐに仲良くなった。


「おはよう由利さん」

「おはよう浩輔君」


 兄、姉の二人は内向的な性格ゆえに、朝教室で会っても控えめな挨拶しかできない。

 これでも進歩した方で、昨日まではロクに挨拶なんてしなかった。


「いや~昨日浩輔君と初めて話したんだけど、思ったより話しにくくなかったよ」

「えっ、昨日初めて話したんだ。なんか意外。クラスメイトなんだからもう会話ぐらいしていると思ってたよ」

「あたしも昨日改めて思い出したら汐音ちゃんと話した記憶はたくさんあるけど、お兄ちゃんの浩輔君とは全然話したことなかったな~って」

「それはマジで受ける」


 社交的な二人が集まると朝の眠い空気が蔓延している教室にも関わらずすぐになにかの話題で盛り上がることができる。

 ある意味これは才能だと思う。

 浩輔には絶対にマネできない芸当である。


「朝から仲が良いよね、莉奈と汐音さんって」

「そうだね。朝から元気だよね」

「……」

「……」


 妹たちが元気よく話しているのとは対称的に、会話が盛り上がらない兄と姉。

 浩輔と由利が話したのは昨日が初めてだ。

 話したらみんな友達という感性を持っている汐音とは違う。


「それで昨日龍ちゃんと一緒にセッ〇クスしたの」

「えーマジー。また木村先輩とセ〇クスしたの。ヤバくない」

「全然ヤバくない。ヤバいどころかマジで気持ちが良いよ」

「そうなんだ~。あたしも早く彼氏が欲しい」

「莉奈ちゃんならできるよ。可愛いし話していて楽しいし」

「おい、汐音。朝っぱらから下ネタ言うな」

「莉奈も朝から下品なこと言わないの」


 朝から下ネタを言って盛り上がっている妹たちを窘める浩輔と由利。


「別に良いじゃん。私たち高校生だよ。みんなセ〇クスに興味ある年頃じゃん」

「お姉ちゃんは初心だな~。処女には刺激が強すぎたかな」

「べーだ。童貞のお兄ちゃん」


 これが反抗期というものだろうか。

 汐音だけではなく莉奈も姉の忠告を受け取らなかった。

 それに意趣返しのつもりか、二人は童貞、処女と弄り始めた。


「しょ……処女」


 それに真っ赤な顔で動揺しているのは由利だ。


「童貞は言うなよ」

「良いじゃん、本当のことなんだから。童貞のお子ちゃまなお兄ちゃんにはまだ早すぎたかな。いてて、暴力はダメー」


 童貞と言われたことにカチンときた浩輔は汐音を怒鳴り、それが面白かったのか汐音は自分が処女ではないことを利用し浩輔のマウントを取る。

 だが、浩輔には武力制裁というスキルがあり、こめかみをグーでグリグリする。


 その痛みに悶絶する汐音。


 街中でやれば一発で通報ものである。


「またやってるよ桐山兄妹」

「汐音さんに彼氏がいるのに、仲が良いよね二人」

「確か木村先輩とも仲が良かったと思うぞ浩輔君は」

「三人で遊びに行くぐらい仲が良いらしいよ」

「それはある意味で凄いな」


 クラスメイトも二人のやり取りは見飽きているので、今更誰も止めにかからない。


「龍ちゃん助けて。お兄ちゃんに犯される~」

「おい、被害妄想は止めろ。もっと本気でやるぞ」

「いや~、龍ちゃんが助けに来ない」


 龍次に助けを求める汐音だが、そんなアンパ〇マンのように都合よく来るわけがない。


 ちなみに龍次はこの時、電車のつり革につかまって学校に向かっている途中だった。


「いい、そんなに淫らに自分の性情報を言うんじゃありません」

「はいはい。お姉ちゃんってそういうところ厳しいよね。処女だから」

「処女は関係ないでしょ」

「お姉ちゃんはまだ女の幸せを知らないんだね。あたしは中二の秋に卒業しちゃったけど」

「もうー私は莉奈をそういう子に育てた覚えはないわよ」


 漆原姉妹は漆原姉妹で、難航していた。

 いつもは大人しい由利だが、妹である莉奈に対しては強気だった。

 妹の莉奈は姉の説教がうざいのか、面倒くさそうにあしらっている。

 そんな二人を浩輔は汐音をグリグリしながら傍観していた。


「もうギブー」


 汐音の悲鳴が教室中に響き渡ったので、これで許すことにした。

 しばらくの間汐音はこめかみに手を当てて悶絶していたのは見なかったことにしよう。

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