第一章 双子同士

第4話 木村龍次の苦労

 その後漆原姉妹と夕飯を食べ終え、家に帰った後妹はすでに帰っていた。


「お兄ちゃん遅かったじゃん。なにしてたの」

「由利さん莉奈さん漆原姉妹に会って夕飯食べてた」

「へぇ~お兄ちゃんが誰かと一緒にこんな時間まで遊ぶなんて珍しい」


 時刻は夜の九時。あの後ファミレスで漆原姉妹と結構話していた。

 主に、莉奈が話していたのだが浩輔も由利も自分から話すタイプではなかったのでありがたかった。

 夜遅くまで友達と遊んでいたことが意外だったのか、浩輔の話を疑っている。


「それより汐音の方が早かったよな。十時ぐらいまでいると思っていた」

「私ももっと龍ちゃんと一緒にいたかったんだけど私が余計なことして追い出された」


 性欲モンスター汐音のことだ。もっと夜のお楽しみをしていると思っていたのだが意外にも帰りが早いことに驚いた。

 汐音的にはもっと龍次と一緒にいたそうな顔をしていたがきっと、龍次が気を利かせて早めに帰らせたのだろう。

 ちなみに龍次は十八歳になっているので車の免許を持っており、汐音は基本、龍次の車に乗って帰ってくる。


 この方が夜道を歩くより安全だ。

 不良みたいな顔をして、優しい龍次だった。


「あまり木村先輩を困らせるなよ」

「分かってるよ~」


 浩輔も龍次のことは嫌いではない。

 性的な意味ではなく、頼りになる先輩として浩輔も龍次に好意を寄せていた。

 汐音は心外だと言わんばかりに唇を尖らせている。

 妹に彼氏ができたことに少し寂しさはあったが、それでも妹の幸せそうな顔を見ていると浩輔も幸せな気持ちになる。

 龍次に『お義兄さん』と呼ばられることを考えると違和感しかないが、龍次が汐音の彼氏で良かったと思う。

 むしろ龍次以外汐音の手綱を握れる男はいないだろう。


「木村先輩が苦労しそう」

「なに言ってんのお兄ちゃん。龍ちゃんもこんな可愛い妹が彼女で幸せなはずだよ」

「それ、自分で言うか」


 浩輔が龍次のことを案じていると、汐音はなぜか誇らしそうに胸を張っている。


 本当に謎だ。


「汐音はお風呂に入ったのか」

「うん、龍ちゃんの家で入ってきた。もう汗だくだったからね」

「それじゃーお風呂に入ってくるわ」


 妹のいらない性情報を聞かされげんなりする浩輔。

 汐音はそういうところに恥じらいがない。


 その後着替えを持って脱衣所に行き、服を脱いでからお風呂に入る。

 湯船に浸かると今日一日の疲れがお湯の中に沁み出ているのではないかと錯覚するぐらい、疲れが取れる。

 お風呂から上がると、一応ある人物に電話をかける。


「もしもし、木村先輩ですか。浩輔です」

『もしもし、どうした浩輔』


 浩輔の電話の相手は汐音の彼氏、龍次だった。


「今日は妹を送っていただきありがとうございます」

『別に礼を言われることじゃねーよ。それにしても浩輔も律儀だよな』

「木村先輩は先輩ですから。これぐらい当然ですよ」

『たかが一歳しか違わねーだろ。そんな気遣い俺には不要だ』


 龍次は浩輔の先輩である。

 汐音が車で送ってきてもらったのだ、兄として礼を言うのは当然だ。

 汐音のことだ。絶対に『ありがと~』程度の軽いお礼しか言っていないのが目に浮かぶ。


「木村先輩にはいろいろとお世話になってますから。汐音のことで」

『……確かに汐音のことだと否定できない』


 まさか彼氏にまで否定されるとは。汐音のマイペースは誰にも制御できない。


『こないだも生でやらせろと言われてな。それは結婚してからだと怒鳴ったら無理矢理犯しに来たから締め上げた』

「……お疲れ様です」


 龍次の愚痴に浩輔はこの言葉以外なにも思いつかなかった。

 男が生でしたいという気持ちは分からなくもないが、まさか女が生でしたいと言い出すとは。


 やはり汐音は性欲モンスターである。

 それとやはり見た目と違い、龍次はかなりしっかり者だった。

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