第11話【カフェオレのように混ざる】

 カフェオレを満喫した後、本の続きを読みたくなった。【空想の世界〜夢と現実のはざま物語〜】を手に取る。ソファに腰かけ、本を開いた。

 彼女は、とある小屋にいた。どうやら、海の近くの小屋らしい。潮風の薫りがするらしい。彼女は絵を描いていた。とても穏やかな気持ちで描いているようだ。

 なんだかホッとする自分がいた。彼女の感情が流れ込んでくる。黒猫もどこか安心している様子が、文面に出ている。

 僕は、彼女の様子を文章でしか知らない。だけれど、「いつか彼女に出逢える」、そんな気がしていた。彼女なら優しい表情を浮かべて、きっと僕を受け入れてくれる。

 何故そう思うのかはわからない。だけれど、彼女に会いたいと思う自分と、きっと会えるという、不思議な確信があった。


「ねぇ、エドワード。ここには黒猫がいるって言っていましたよね? その子は何をしているんですか?」


 僕は、それとなく彼に訊いてみた。


「ルーンかい? 彼女なら、【絵描き】と一緒に、世界を飛び回っているはずだが……。彼女がどうかしたのかね?」


「ううん、一度も見たことないなあと思って」


 少し、わざとらしかっただろうか? しかし、彼女が絵描きと飛び回っていると聞いて、確信に触れた気がした。僕の予想通りであれば、きっとその絵描きは彼女ではないだろうか。


「その絵描きさんって、女性ですか?」


「え? さぁ、どうだろう? 私もまだお目にかかったことがないのだ。さては、興味があるのかね?」


 ニヤニヤと、紳士らしからぬ表情をするエドワード。僕はなんだか恥ずかしくなって、慌てて答えた。


「違うんです! ただ、どんな人なのかなぁと思って……」


「世の中では、それを興味と言うのだよ」


 ニヤリとこちらを見てきた。なんだか恥ずかしさが増した。恥ずかしさを隠すことができず、チャーリーが慰めるかのように、すり寄ってくれた。


「チャーリー。それは、傷口に塩を塗るようなものだぞ」


と、エドワードが僕の顔を見て笑う。


「んな?」


 チャーリーにはわからなかったらしく、不思議そうに僕を見た。僕は、ただ苦笑いを浮かべることしかできなかった。


「もう! エドワード! 僕をからかわないでくださいよ!」


「ははっ、すまない。あまりにも望が可愛らしかったものでな。つい出来心でしてしまったのだ。許してくれたまえ」


「今回だけですよ?」


「あぁ。もちろんだ」


 エドワードは、まだ顔が笑っていた。これはあまり期待できないかもしれない。


「もう……。僕は読書に戻りますからね!」


 照れ隠しのように、読書に没頭し直すことにした。

 本の中は、長閑で穏やかな時間が流れているようだった。楽しそうな彼女達に、僕はあっという間に惹き込まれていった。

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