第4話【心持ちの解決】

 コーヒーの良い香りが、室内に漂う。


「さて、まずは君の名前を聞こうか」


「僕の名前は、狭間はざま のぞむと言います。あなたの名前も教えてもらえますか?」


「私は、瀬戸 エドワードだ。私のことは、エドワードと呼んでくれたまえ」


 そう言って、彼は微笑んだ。名前からすると、ハーフだろうか。色白なのも納得だ。

 しかしそれよりも、僕は解決したいことがある。


「えっと……。エドワードさん?」


「なんだね? なんでも訊いてくれたまえ。それから、さん付けは不要だ」


 なんだか、僕が読んだシャーロック・ホームズの主人公、ホームズの話し方に似ているのは気のせいだろうか? 話し方が独特だ。


「あの、まずここはどこなんですか?」


「ここは【夢と現実のはざま】という所だ。君はあの白猫のチャーリーに導かれてここにいる。ここは、その日飾られた【空】という物によって決まる。それは、僕らには扱えない。ロジャーというおじいさんしかわからない。あの中央のパズルが、その【空】と呼ばれるものだ。だから、決して触れないように」


 彼はそう言うと、この家と思しき場所の中央にある、ガラスで蓋をされたジグソーパズルを見つめた。雲一つなく、太陽が光り輝くジグソーパズルだった。


「わかりました。しかし、僕はなぜここに導かれたのでしょうか? 理由がわかりません」


 そう言って、僕は眉尻を下げる。


「ふむ……。おそらくだが、君の読書への貪欲さをチャーリーが見抜いたのではないかと思われるが……。私もその真意はわかりかねるのだ。申し訳ない」


 そう言うと、エドワードは少し困った顔をした。彼にもそこはわからないようだ。仕方がない。


「では、【僕の役目】が【本を読むこと】なのは何故なのですか?」


「それは、君がまっすぐ本に向かっているように見えたからだ。私はそこから、君は読書家なのだろうと推測した。誰もが長所と短所を持っている。長所を伸ばす方が効率的で、人生も生きやすくなるではないか」


 彼は、真っ直ぐ僕を見た。僕の現状を理解しているかのように。

 僕は、彼とやり取りをするうちに、なんとなく安心した。ここは安心して良い場所なのだ。

 気付くと、お互いのコーヒーカップは、すでに空になっていた。


「お代わりでもどうだね?」


「頂きます」


 そう言葉を交わして、お互い微笑み合う。まだまだ謎は残るけれど、小さな一歩を踏み出したような気がする。

 僕は一先ず、コーヒーの香りに酔いしれることにしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます