第2話【探索・謎】

 彼に訊いても埒があかない。とりあえず降りて、周囲を探索してみることにした。

 周囲は深い森に囲まれている。一先ず、丘を時計回りに一周してみる。

 四分の三程回ったところで、右手の丘の麓に扉があることに気付いた。

 ここなら、何かわかるかもしれない。扉に近付いて取手に手をかけたところで、手を止める。流石にいきなり開けるのは気が引けたので、ノックをしてみる。返事はない。念のため、もう一度ノックする。が、応答なし。


「さて……。勝手に入って良いものか……」


 扉の前で立ちすくむ。かといって、この辺りで人のいそうな場所がある気配はない。どうしたものか……。


「やはり、勝手にお邪魔させていただくしかないか……」


 ただし、鍵が開いていればの話だが。

 とりあえず、開けて声を掛けてみよう。誰かいれば反応があるかもしれない。


「失礼しまーす……。誰かいませんかー?」


 扉は簡単に開いた。しかし、返事はない。視界に入ってきたのは、壁一面びっしりと詰まった本棚と中央にガラスの蓋をして置いてあるジグソーパズルだった。ジグソーパズルはなんだかキラキラしているが、僕はそれよりも本が気になる。

 僕は読書を嗜んでいる。僕には、友達も家族と呼べる人もいない。幼少の頃に親の暴力から保護されて以来いたあの施設での生活も、決して人と触れ合う機会がなかったわけではない。

 しかし、とうとう『友』と呼べる人物には出会えなかった。

 ……いや、一人だけいたこともあった。だがしかし、結局彼が真の友にはなってくれることはなかった。

 僕には、特に好きな著者はいないが、恐らく有名どころの代表作はほぼ読んでいると思われる。

 そんな僕の目の前に、さまざまな言語の本が言語ごとに並べられている。まるで、好物の餌を目の前にぶら下げられている気分だ。


「どれも読んでみたい……」


 勝手に上がり込んで、勝手に読んでも良いものだろうか……。しかし、いけないことだと思いながらも、タイトルに惹かれて思わず手に取ってしまった。

「空想の世界〜夢と現実のはざま物語〜」とある。ページを開いてみる。

 この小説の主人公は女性のようだ。女性が夢の中で旅をしながら絵を描いていくストーリーらしい。

 そう言えば、そもそも今いるここは現実なのだろうか? 今は夜であるはずなのに、こんなにも明るいのは何故だろう?

どうやらここは、謎が謎を呼ぶ場所のようだ。

 僕は、謎の迷路に迷い込んでいくのであった。

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