珈琲が冷めてしまう前に

【道具と武器】


簡単に人を殺せる道具があります。

これを使えば、あなたも簡単に人が殺せるでしょう。

ですが、これは道具です。

本来、人を殺すためのものではありません。

正しく使えば、あなたは素晴らしい人となるでしょう。


簡単に人を殺せる武器があります。

これは人を殺す目的で作られました。

これは人を殺すための道具です。

正しく使えば、あなたは素晴らしい人となるでしょう。


さて、あなたはどんなものを想像しましたか?



【贈りもの】


神様は自分の子供が全知全能ではないのを知っていたので、

意思を伝えるために言葉を与えました。

感情を伝えるために音楽を与えました。

そして子供達は、言葉と音楽で賛美歌を作り、神様に感謝したのでした。



【せかいへいわ】


私は世界を平和にしたい。

そんな考えにみんなが賛成してくれた。

だから私は頑張った。

頑張って、頑張って、頑張って、

上り詰めて、権力を手に入れて、国王となった。

そして、すべての国民を監視するシステムを作り上げ、

犯罪を犯す者は平等に死刑にした。

誰も誰かを傷付けず、誰も罪を犯さない平和な世界。

皆は私を独裁者と呼ぶけれど、とっても平和な世界。



【人の価値】


屋上から今にも飛び降りようとしている人に、誰かが言います。

「お金に価値があるのはね、価値があるとみんなが知っているからだよ」

「それが?」

「誰もがお金に価値がないと思えば、お金だってただの紙切れなんだ」

「じゃあおれはそれだ。価値のない紙切れだ」

誰かは首を振って言います。

「お金の価値は、みんなが決めているんだ」

「何が言いたいんだよ!」

「君の価値は、君が決めるものじゃないんだ。いいかい? よく聞いて?」


「私は、君が無価値だとは思えないから止めているんだ」

――その時点で、君が何を言おうと、もう君は無価値じゃないんだよ。



【内と外】


いつも笑顔の男がいた。

周りには友人が集まり、

明るい雰囲気で毎日を過ごしている。

その男はとても幸せそうに笑っている。

その男はとても幸せそうに笑いながら言う。

「幸せかって? ぼくは笑っているだけだよ」



【わたしの世界】


スピーカーから流れる音楽。

柔らかなソファー。

ポテトチップスの塩辛さ。

指に付いた油の感触。

ピザは少し冷めてしまった。

ジャンクフードには炭酸がよく合う。

ティッシュを一枚取る音。

指を拭く。

隣にいる君。

手を握り合う。

絡めた指から体温が伝う。

目が見えなくとも、世界はこんなにも鮮やか。



【ミス】


線を一本多く書いてしまったから、もう駄目だ。

待ち合わせの時間を一分過ぎてしまったから、もう駄目だ。

温度が一度だけ高かったから、もう駄目だ。

一円だけ足りなかったから、もう駄目だ。

昨日より一問多く間違えたから、もう駄目だ。


一度失敗したから、あの人はもう駄目だ。



【『できる』と『やっていい』】


とっても悪い子供がいる。

人を殺して、

物を盗んで、

時にはただ動物を痛めつけ、

意味もなく誰かをいじめた。

私はその子に、なぜそんなことをするか尋ねた。

「だって、できるんだもん」



【信じるもの】


幽霊を信じないの?

見たことがないから?

ならなぜ真実の愛と永遠を信じられるんだい?

見たことがあるの? ないよね?

なら幽霊だって同じじゃないか。

結局、君たちは自分が信じたいものしか信じないんだ。



【さようなら】


拝啓。大切な人へ。

どうか私を覚えていてください。

毎日ちゃんと食事をしてください。

好きなものを手放さないでください。

目先の誘惑に飛びつかないでください。

お風呂に入って身体を休ませてください。

夜更かしはほどほどにして眠ってください。

あなたを大切に思う人を大切にしてください。

泣きたい時は我慢せず思いきり泣いてください。

そしていつか、私を忘れる時間が増えたなら、

きっとあなたの側には、私以上に愛する人がいるはずです。

その時は、その人をちゃんと、見てあげてください。

あなたが幸せになってくれることを、心より望みます。


天国より。愛を込めて。

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白璃色の物語【短編・掌編集】 狛人 白璃ーコマビト ハクリー @hakuriiro

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