──第22話──

俺が毒を飲まされる様になって早数ヶ月。

順調良く、毒の耐性も付いていき、今日はカインが『見せたいモノがある』と言うので一緒に歩いている。


『父さん、見せたいモノって何?』


カインと手を繋ぎながら、顔を見上げて問いかける。


『それは、見てからのお楽しみ、だな。』


優しい笑顔で答えをはぐらかされてしまった。


家を出てから広間を抜け、真新しく出来た道らしき場所を歩いて行く。


草をただ刈り取っただけの塗装もされてない道。


どこに向かっているんだろ?


その疑問を感じる間も無く、すぐに答えが分かった。

分かった、と言うか、見えた。


なんだ、これ?


そこに見えたモノは、人工造形物。

円形状になっている建物が目の前にあった。


これ、もしかして……

もしかすると……

まさか、ね?


『どうだ?ルディの為に闘技場を作ってみたんだ。』


やっぱり!?

そんな笑顔で言われても!

俺の為にちょっと作ったってレベルじゃないよね!?


『何で闘技場を作ったの!?』


『レベル上げの為もあるんだが、一人で魔物を倒せる様になってもらいたいと思ってな。ここなら安全に倒せる。』


安全に倒せるって何!?

いやいやいや、倒せなくても俺は大丈夫だし!

魔物から逃げれたら良いんだけど!!


『あの、父さ……』


『どうだ!嬉しいだろう?』


『ぁ……ウン、ウレシイナー……』


親が俺の為にって言って、こんな笑顔を見せられて否定出来るか!?

俺は出来ない!!

善意が怖い!

これから待ち受けるのが何となく予想がついて怖いっ!!


『ここが入り口だ。里からはそんなに離れていないから使いやすそうだろ?ルディを喜ばせたくて内緒にしてたんだが、喜んで貰えて良かった。』


『アハハハハ…ありがとう、父さん……』


重そうな扉をカインは俺と繋いでない方の手で開けると、中には数人の里の人達が待っていた。


『よー!カイン!ルディ!』


俺達に気が付いたジョセフが片手を上げて近付いてくる。

ジョセフの声によって気が付いた他の人達も続いてやってきた。


『おぅ、ルディ。頑張れよ!』

『お前、人間だからな!すぐに森に出す訳には行かないってカインに言われてな!』

『ルディなら大丈夫だろうけどな!何かあったら俺達が助けに入るからな!』

『殺られそうになったら逃げろよ!』

『皆からのプレゼントだ!十分に役に立ててくれよ!』


大人の人達に囲まれ口々に言われた。


一つ言うとしたら……

誰か作るの止めようよ!!

里ぐるみかよっ!

そりゃ気付かねぇわ!!


『皆、ありがとう……』


俺は大人の対応を覚えた。


ひきつった笑顔だっただろうが、誰も気付いた様子もなく話は進んでいく。


『そうだ、カイン。最初の魔物はどうするんだ?』


『そうだな……まずはサラマンダーで良いのでは無いか?ジョセフはどう思う?』


『ああ、それで良いと思うぜ!サラマンダーの攻撃は単純だからな!打撃が中心だから、即死は無いだろう。もしルディが燃えちまったら消火したら良いしなっ!』


俺、燃えるの!?

笑顔で不吉な話をしないでくれるかな!?

で、なにカインも納得してんの!?


『じゃ、準備してくるわ!ちょっと待ってな!』


『ルディ頑張れよ!』

『ちゃんと見ていてやるからな!』

『ビビんじゃねーぞ!』


ジョセフは俺達が入って来た方と反対側の扉へ向かうと、里の人達は俺に声援を送り円形状になった壁の上に飛び乗って闘技場の中を見ている。

壁の高さはそれなりにあるが、神狼族の脚力の前では軽々と飛び乗れる高さの様だ。

俺もそれなりに高く飛べる様になり、家の出入りは出来るが、これ位の高さになると【結界】で一度足場を作らないと無理だ。


それより


『父さん、今から何するの?』


答えは分かっているが何となく聞いてしまう。


『今からルディはサラマンダーと闘ってもらうぞ?捕らえた魔物は全て狂った魔物だから、安心して闘いに専念出来るぞ。』


やっぱり、そうでしたか。

〈闇落〉の魔物ってレベルよりも強いから、レベルがあんまり当てにならないんだよな……。


ライアと食料用の魔物を狩りに言った時、俺一人でも倒せたしな……。

同じ魔物で同じレベルのヤツでも〈闇落〉の強さは全然違うんだよなー……。


『お、来たようだな。ルディ、頑張れよ。』


俺の頭にぽんっと手を置き、カインは壁の上へと飛んで行った。


ジョセフは結界の檻に入れたサラマンダーを闘技場の中心へ運び手招きをする。


ため息を一つ吐き、闘技場の中心に向けて歩き出す。


『ルディ、俺がこの場から離れたら結界を解くぞ。そうなると、攻撃対象はすぐにルディになる。頑張れよ!』


『……うん、分かった。』


話してる間にサラマンダーを【鑑定】しておく。

サラマンダーのレベルは214。

〈闇落〉の確認も出来た。


心の準備をするために深呼吸をし、少しサラマンダーから離れる。


いつもはライアが止めを刺していたが、今回は俺が止めまでしなくてはいけない。


危険だと判断されれば助けてはくれるだろうが、それまでは一人での闘いになる。


不安と緊張が全身を襲ってきた。


カインから貰った短剣を握りしめ、戦闘体制に入る。


それを確認したジョセフは壁の上まで飛び、サラマンダーの結界が解かれた。


俺の……一人でする初めての闘いがこれから始まる。
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る