会社員はケツァルコアトルスのことを思わない

作者 伴美砂都

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★★★ Excellent!!!

イエモンに「Burn」という曲があって、
なんとなくその歌詞を思い出した。

「飛べない鳥は胸や背中は大人だけど取り残されて」

みたいな歌詞だった、と思う。

飛べないケツァルコアトルスの姿が
大人になれない主人公の姿と相似した。

子どもの頃は大人の姿を見て、
大人になればもっといろんなことが上手くやれるのだと思っていた。
でも、全然そんなことはなかった。
たぶんそれは、主人公以外の登場人物も同じだろう。
彼ら彼女らの姿を見ていると、等身大、という言葉が去来する。

みんな飛べなかった。大きくなったからだ。

成長の痛みの物語であるとともに、優しさの物語だと思った。
登場人物たちは、みんな優しい。
でもその優しさは、何ひとつ救ってはくれない。
「本当の優しさ」という言葉は、誰もがいつか聞いたことのある言葉だろうけれど
誰もその意味を分かっていないから切ない。

救いはないけれど、それは誰がいつどこにいてもそうだろう。
ケツァルコアトルスは飛べない。
でも、想像のなかでだけ飛べるとしたら、それが救いなのかもしれない。

★★★ Excellent!!!

 本作には、快刀乱麻を断つような答えはなく、「会社が悪い」「同僚が悪い」あるいは「主人公が悪い」……わかりやすい悪者もいない。
 主人公が持つ特徴によって、主人公はもとより、同僚も、会社もそれぞれに苦悩している、その姿が、主人公の言葉を通して描かれている。
 すっきりしない、読後、こころになにかちいさな重しを残してゆくような作品。


 けれど、わかりやすい答えがない、そのこと自体がひとつの答えであるようにも思う。
 物語の、その先に行くためには、「わかりやすい答えがない」と腹をくくることが必要になるはずだから。