第444話15-33ユン神父
15-33ユン神父
ショーゴさんが「爆炎拳」を女神の分身に叩き込む。
しかしそれは別の女神の分身に阻止されショーゴさんは弾き飛ばされた。
「まさかまだ女神の分身を呼び出すとは! クロ、クロエ、ベルトバッツよまだか!?」
コクはあたしを守りながら時折襲ってくる女神の分身を弾き飛ばす。
「アイミ! 同調です! 【紅蓮業火】!!」
流石に剣技ではかなわないティアナはあたしの所まで下がってきてアイミと同調をして【紅蓮業火】を発動させる。
巨体の体から炎の柱が立ち昇り女神の分身たちを薙ぎ払う。
「かろうじてですが、数体で来られるとアイミでも力負けします! エルハイミ!!」
「分かっていますわ! シコちゃん!!」
『いいわ! 行くわよ 【爆裂核魔法】!!』
魔力注入が終わったシコちゃんは荷馬車に向かってユン神父ともども業火の炎で焼き払おうとする!
カッ!
どがぁごがぁぁぁぁああああぁぁぁぁんッっ!!
完成したその魔法は赤い光を収束させ一瞬光って相手側に業火の炎をまき散らす!
「女神の杖」はこれでも破壊できないから後で回収すればいい。
これでユン神父も倒せたか!?
光が収まったそこにはあたしたちが信じられない光景があった。
なんと女神の分身が数体防壁を展開して荷馬車を守っていた!?
『これでだめなの!? くぅぅううぅっ、流石に女神の分身ね!』
シコちゃんが驚き悔しがるが問題は後ろに控えているユン神父が詠唱を続けている事だ。
「駄目ですわ! 時間が無い!!」
「アイミ!」
焦るあたし。
ティアナが同調したアイミが突っ込んで行く。
女神の分身数体を弾き飛ばすが最後の一体に止められる。
「くうっ! アイミ、三十六式が一つグレートソード!!」
アイミが大きく右手を振り上げつま先立ちになるまで伸びてからから竹割の様にその右手を振り落とす。
女神の分身はそれを頭上で両手を交差して受け止めるがアイミの重量も乗っている為その衝撃で膝まで地面に埋まる。
「今ですアイミ!」
最後の女神の分身が動けなくなった隙を狙ってティアナはアイミをユン神父へと向かわせる。
「ティアナ! 上だよ!!」
マリアが叫ぶ。
見れば女神の分身の一体が上からアイミに襲いかかて来ていた。
それは強烈な飛び蹴り。
いくら巨体のアイミでもそれを直接喰らてしまっては体勢を崩してしまう。
「くっ! アイミ!!」
ティアナは飛び蹴りを食らってよろめいたアイミを立て直す。
『エルハイミ!』
「はいですわ!」
あたしはシコちゃんに再び魔力を注ぎ込む。
そしてシコちゃんは女神の分身を捕らえるべく魔法を発動させる。
『足止めするわ! 【茨の拘束】!!』
シコちゃんの魔法が完成すると同時に地面から茨が伸び出て女神の分身を捕らえる。
が、怪力の女神の分身たちはそれをいとも簡単に引きちぎる。
『このっ! エルハイミ魔力の追加を!』
あたしがさらにシコちゃんに魔力を注ぐと更に茨が地面から生え出てきて女神の分身を捕らえる。
「ティアナ、あっちからも来た!!」
マリアが再びティアナに叫ぶ。
見ると守りに徹していた女神の分身までこちらに襲いかかって来る!?
「エルハイミ! 大きいの行くわ!! 大地の精霊よ、穿て!!」
シェルが大地の上級精霊を駆使して地面から鋭いキリの槍を大量に女神の分身に穿つ。
それは通常の【地槍】などでは無く黒色の石の槍。
触れるモノを切り裂く刃になっている。
それが大量に女神の分身に刺さっていく!
「今です! アイミ!! ユン神父を止めなさい!!」
「させません! ユン様!! 闇夜の精霊たちよ彼の者を捕らえよ!!」
女神の分身を飛び越えアイミがユン神父にとびかかろうとするのをダークエルフのヨルンが闇の精霊を使って阻止する!?
現れた闇の精霊たちはアイミにまとわりつき精神攻撃をしてくる。
「くはっ!」
同調をしているティアナにその精神攻撃はダイレクトに伝わりアイミの動きが鈍くなる。
そこへ【茨の拘束】から抜け出した女神の分身がアイミを蹴り飛ばす。
「転身! 【爆炎拳】!!」
ショーゴさんはその女神に変身をして人ではありえない跳躍をしながら左手の義手で必殺技を叩き込む!
「うぉおおおぉぉぉっ! 【爆炎拳】!!」
それは見事に女神の分身に決まってその威力を発揮した。
「今だベルトバッツ殿!!」
なんとショーゴさんの体に液化して取り付いていたベルトバッツさんがそこから飛び出し人の姿に戻りながらユン神父に肉薄する!
「なっ! 風の精霊よ!!」
驚くヨルンはすぐさま風の精霊の刃でベルトバッツさんを切るが上半身だけのベルトバッツさんはそのままユン司祭に迫る。
「まだまだでござるよ!」
そして一旦引いて伸ばした手は鋭い槍に変化してユン神父の胸へと吸い込まれる。
どっ!
「がはっ!」
見事にその槍はユン神父の胸を刺す。
「ユン様!!」
「くはっ! しかし呪文は完成した!! 【転送魔法】!!」
ユン神父はそれでも最後の力を振り絞って力ある言葉を発する。
とたんにその効力は発揮され荷馬車の中に有った「女神の杖」がユン神父の頭上に現れる。
それは全て淡い光に包まれて光を増していく。
「こん畜生でいやがります!!」
そう言ってクロエさんがそれに飛びつき右手を伸ばす。
「我が命に代えて我らが野望を成熟させよ! 行け『女神の杖』よ!!」
最後にユン神父は叫ぶ。
すると光っていた「女神の杖」はクロエさんの右手を焼き払い天空高くへと飛び去って消えてしまった。
「女神の杖」が消え去ってしまうと同時に女神の分身もその場で動きを止めぼろぼろと崩れて消えていく。
「くぁぁああああぁぁっっ!」
右手を失ったクロエさんが弾き飛ばされて落ちてくるのをクロさんが受け止める。
そして荷馬車の上にベルトバッツさんの槍に胸を刺されたユン神父は膝から崩れる。
どっ!
「くぅうううっ! ジュメぇルぅううぅぅぅぅっ!!」
ティアナは拳を地面に叩きつけている。
「お母様! あのダークエルフが!!」
見れば荷馬車の上にいつの間にかヨルンがユン神父のもとに行っていて短剣を手にしていた。
ベルトバッツさんは切られた体を元に戻し刀を構えヨルンと対峙する。
あたしは周りを見ると既に生き残っているのはヨルン一人だった。
「ベルトバッツよ、その者を捕らえよ!!」
「御意!!」
コクがヨルンを捕らえるように命令したその瞬間だった。
ざくっ!
ヨルンはその短剣で自分の喉を突き刺しそのままユン神父の遺体の上に倒れ込む。
「なっ!?」
ここに居た全員がその行動に驚く。
しかしベルトバッツさんは静かにヨルンのもとに行き肩に手をあて引き起こすがヨルンは既に息絶えていた。
「なんと言う事です。自害とは! くっ、これで完全にガルザイルのどこに『女神の杖』が転送されたか分からなくなってしまった!!」
ティアナは再び地面を拳でたたく。
まさかジュメルの十二使徒ともあろう者が本当に自分の命を使ってまで「女神の杖」を転送させるとは。
女神の杖がガルザイルに転送されたと言う事だけは分かった。
あたしはティアナの肩に手をのせる。
「ティアナ、まだ終わってませんわ。急ぎガルザイルへ行きましょうですわ。まだです、まだ終わったのではないですわ!」
「エルハイミ‥‥‥ 分かりました。ガルザイルへ向かいましょう!」
あたしたちは急ぎ早馬に乗りガルザイルを目指すのであった。
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