第386話14-11師匠への相談

 14-11師匠への相談



 「しかしほんと凄いわね、ゲートで一瞬でボヘーミャに来れるなんて」


 

 あたしたちは今ボヘーミャに戻って来ていた。


 冒険者で魔術師のイパネマさんにしてみれば古代魔法であるゲートはとても興味を持つ事だろう。

 しかもその使い方についてもシコちゃんのおかげで正式な使い方も分かって今ではアンナさんクラスの魔術師ならばこのゲートを難なく使えるようになっている。



 「これでもっとゲートが世界のあちらこちらに有れば便利なんだけどねぇ」


 「でもシェル、寒いとこ嫌だ! あたし暖かい所が良い」


 シェルの肩にとまっていたいたマリアがうーんと伸びをして羽根をパタパタ動かしている。


 

 「こ、これがゲートですか? 思っていたのとは違って一瞬でしたねティアナ将軍」


 「こっちてだいぶ暖かいのね? もしかして日光が強いのかしら? 日焼けしない様に気を付けなきゃね」


 ゲート初のアラージュさんやカーミラさんもついてきちゃって大所帯になっている。


 あ、ちなみにアイミも一緒だけど今はなんとティアナのポーチの中だったりする。

 正直あたしも驚いた。

 まさかあの小さな入り口からあの巨大なアイミが入ってしまうとは思ってもみなかった。



 「嫌なら付いて来なければいいのに‥‥‥」


 「それよりティアナ様、大丈夫ですか?」


 セレとミアムはティアナの側にいる。

 勿論ティアナの真横にはあたしがいるけど最近こいつらティアナにくっつきすぎよ!


 まあ、ティアナの事が心配なのは分かるけど‥‥‥ 


 まあそんな感じで大人数でわいわいがやがやとやってきたわけだ。 


 

 「風のメッセンジャーで先に連絡はしてあります。先ずは師匠の所へ行きましょう」


 「そうですわね、先ずは師匠にご挨拶ですわ」


 ティアナはそう言てあたしたちは師匠の所へと向かうのであった。



 * * *



 「よくぞ『女神の杖』を見つけてくれました」


 師匠はそう言ってみんなにお茶を入れてくれる。

 流石にこの人数、あたしとイオマもお茶を入れる手伝いをするけどセレやミアムはティアナにくっついたままだ。



 少しは手伝いなさいよ!



 軽く睨むあたしだが二人はツーンとしてこちらと目を合わせないようにしている。


 

 おのれセレにミアム!

 ティアナに呪い移したときは内緒にして貸出してやんないからね、覚えときなさいよ!


 

 あたしはそう思いながら師匠と一緒にみんなにお茶を配る。 


 「ありがとうございます師匠。それで師匠にお話と相談が有るのですが」


 お茶を配り終わる頃ティアナが師匠に話し始める。

 師匠はお茶を一口すすってからティアナに向き直る。

 そして先にティアナに聞いた。



 「十二使徒が現れたそうですね?」


 「はい、それもあの『巨人戦争』にいたヨハネスがいたのです」


 ヨハネス神父の名を出す一瞬ティアナの声に怒気が混ざる。

 しかし師匠は静かにティアナのその後の言葉を待つ。


 「ヨハネスは異界の悪魔王と融合しています。その力は絶大、『魔人戦争』での魔人より上位種だそうです」


 ティアナのその言葉に師匠は反応する。

 そして静かに湯のみを置いてティアナに質問をする。



 「ティアナ、それは本当ですか? あの魔人の上位種が現れたというのですか?」



 「はい、エルハイミがあの力を使い確認をしました。そして私の最大攻撃【最大旋風魔光破】をもしのぎました」


 ぴくっ


 師匠の手が一瞬震えた。

 


 「まさかティアナの攻撃さえしのぐとは‥‥‥ 正直あの技であれば魔人でも一撃で滅せたでしょう」



 師匠は急須にお湯を注ぎ自分の湯飲みにお茶を注ぐ。

 しかしその手はわずかに震え、動揺しているのが分かる。



 「師匠、何か手は無いでしょうか?」



 ティアナのその単横直入の質問に流石の師匠も黙ってしまう。

 そして師匠がお茶を注ぐ音だけが流れる。



 ことっ



 師匠があたしたちの湯飲みにもお茶を注いでくれて急須を置く。



 「正直な話、私もその様な者を相手にどうして良いか分かりません。黒龍よ、貴女の見立てはどうです?」



 それまで黙ってあたしの横に座っていたコクに師匠は話しかける。


 「異界の者よ、私の見立てでは今の私でもあの者にはかないません。もし私が成龍となれば機会はあるやもしれませんがあの者は我が僕のクロやクロエをも凌駕しています」



 ざわっ!

 

 

 思わずここにいるみんなが動揺をする。

 それもそのはず、ドラゴンニュートの二人を凌駕するって事は普通の手段では太刀打ちできないと言う事だ。

 そして今わかっているのは対抗するにはアイミのあの力とあたしの魂の奥底のあのお方の力だけと言う事だ。



 「やはりそうですか。ティアナ、残念ながらその者に対抗できる手段は貴女とエルハイミだけです」



 師匠はそうはっきりと言って湯のみを取り上げお茶を飲み始めた。

 

 「そんな‥‥‥」


 ティアナはそれだけ言って黙ってしまう。

 師匠ならばあるいはと思うのはあたしだけではない。

 しかしその師匠からあたしとティアナのあの力意外打つ手なしと言われてしまったのだ。



 「だったら、やはり私があの力を使いこなせるようになりますわ!」



 「エルハイミ?」


 あたしは意を決してそう言う。

 ティアナにもうアイミの力は使わせない。

 それにあのあたしはあたしが成長すればもっと力を送り込めると言っていた。


 だったら‥‥‥



 「エルハイミ、貴女のその力は本当に制御できるものなのですか?」


 「して見せますわ。もうティアナにアイミの力は使わせさせませんわ!」


 あたしのその断言に師匠はあたしをじっと見ている。

 そして重々しく口を開いた。


 「ならばやはり魔法王ガーベルに助言を求めなさい。彼はまだあの宿にいる様です」


 「師匠?」


 師匠はもう一度お茶をすすってから言い始める。


 「エルハイミ、貴女のその力は私たちには理解できるものではありません。しかし冥界の女神セミリア様の所でいろいろを学んだ魔法王ガーベルなら何か手段を知っているやもしれません」  




 師匠に言われあたしはご先祖様に会いに行く事としたのだった。 

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