第350話13-7ティアナの浮気!?

 13-7ティアナの浮気!?



 「ううっ、太陽が黄色く見えますわ‥‥‥」




 あたしはみんなに話が有る為に隣の建物へと向かっていた。

 ティアナと一緒にいた時は大丈夫だったのに今は歩くたびにまだ痛みと違和感が襲ってくる。



 「あれ? エルハイミじゃないの、昨日はどこ行ってたのよ? って、なんか歩き方変よ?」


 隣の建物に入った瞬間にシェルに見つかった。

 あたしはよろよろとしながらシェルの近くにまで行く。


 「ちょっと昨日はティアナの所へ‥‥‥」


 「え? まさか一晩中!?」


 「いろいろありましたのよ、本当にですわ‥‥‥」


 実はあたしはティアナ散々襲われまくった後にいろいろと話を聞いていた。

 とはいっても既に日が昇ったくらいからだったのでだいぶ誤魔化された所も有るような気もする。


 今思い起こせばティアナをもっと問い詰める必要が有ったと思う。



 ぴりっ

 ぴりっ!



 「うわっ、何が有ったか知らないけどあたしに八つ当たりだけはしないでよね?」


 おっと、どうやらまたまた勝手に頭の周りに電気が走っていたようだ。

 大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。




 そして自分もやってしまった事を思い出す。


 シェルを嫁にしたり、イオマを妹として面倒見ると言ってしまったり‥‥‥


 ‥‥‥

 ‥‥‥‥‥‥





 ああぁっ!

 でもっ!

 でもやっぱりぃ!!



 目の前で他の女の子に手を出すとかどう言う事よ、ティアナ!!


 そりゃぁ、あたしがいなくなって寂しかったりジュメルの生贄にされそうになった子を助けて面倒見てるとか事情はあるかもしれないけど!!

 


 あたしの目の前だよ!?



 しかもあんなに手慣れた感じで口づけしてるなんて!?

 それにあの子たちもティアナに口づけされてうっとりとした顔してたし、きっとあたしのいない所で組んずほつれづの‥‥‥



 ばりばりばりっ!



 「うわっ! 危ないってエルハイミ!!」


 シェルは思い切りあたしから距離を取って鑑賞樹の植木の後ろに隠れた。

 そのシェルの行動にあたしは我に返って体中に放電していた雷を止める。


 「と、とにかくみんなに話が有りますわ。他のみんなは何処にいますの?」


 「それなら丁度広間に集まっているわよ。エルハイミがいないのでこれからみんなで探そうとか言っていた所だけどね」


 都合よくみんな集まっていてくれたみたいだ。

 あたしはシェルと共にみんながいる部屋へと向かった。



 * * *



 「すんすん。お姉さまから嗅いだ事の無い香水の匂いがする‥‥‥」


 「まあ、朝帰りだし、ティアナと会ってたわけだし」


 「あ、主様が思い人と‥‥‥ くっ、私の体がもっと早く成長していれば!」


 「まあ、主様らしいでいやがりますけど」


 「そんな事より主様、我々に何か話が有るのでは?」


 「で、主よ、話とは?」


 みんな各々に自由な事を言っている。

 一つ一つ応えるのは面倒なのであたしはずばり一番重要な事を話す。



 「私たちは今後連合軍に所属しティアナ将軍を手助けしながら秘密結社ジュメルの討伐をして行こうと思うのですわ!」



 あたしがびっと人差し指を立てて核心的な事を宣言する。

 しかし他のみんなは特にリアクションが無い。



 ありゃ?



 「えーと、お姉さまがいる所があたしのいる所ですからティアナさんと毎晩する事が終わったら帰って来てくれれば私はどこに行っても構いませんけど?」


 「あたしはエルハイミのいる所があたしの居場所だし」


 「主様にお仕えし、主様のご要望にすべてお答えするのがこのコクの幸せ! 何なりとお申し付けください! 必要ならこの体も差し上げますから!!」


 「黒龍様が主様について行かれるのですから私も一緒に行くのが当たり前でいやがります」


 「ジュメルの輩は我が同胞の竜族をもてあそんだ罪があります。その報いは受けさせなければなりませぬ」


 「主のやりたい事に俺は従うまでだ」



 そしてみんな声を合わせてこう言う。



 「「「「「予定どうり(ですね)」」」」」



 えーと、みんな良いのあたしたちに付き合ってくれて?

 あたしの立たせた人差し指がくるくると宙を舞っている。


 「いまさらそんな事言わなくたって分かっているわよ、エルハイミ。それでティアナは?」


 「そうですよ、お姉さまですもの。それよりそろそろそのティアナさんに会わせてもらえませんか?」


 「そうですね、大事な主様を一刻でも預けられる人物かどうか見極めなければなりません。主様のその思い人と言うのに会わせてください」




 え、ええぇぇとぉぉ~



 あたしの意思表示を確固とするためにみんなに宣言したのがこの三人は必要にティアナに会わせろと言ってくる‥‥‥


 「大丈夫よ、エルハイミとあたしの関係は現在保留としてあげるから。あたしはずっと待っていてあげるからね」


 「お姉さまのお姉さまになる方なのでしょう? いや、お姉さまの旦那様か。だったらあたしも義理の妹としてちゃんと挨拶しなきゃですよね?」


 「ふふっ、主様と私の関係をがどれほど深いか見せつけてやりましょう。この姿がすべてを物語っています!」



 あたしは脂汗をだらだらと流し始めた。

 なんかみんなティアナに対してものすごく黒いオーラが立ち昇っているようにいるように見えるのだけど‥‥‥



 「修羅場でいやがりますか‥‥‥」


 クロエさんがポツリとそう言うのだった。

 

 

 * * * * *



 「そうですか、貴女がエルハイミの義理の妹となるのですか。それとシェルも私のいない間にエルハイミの面倒をよく見てくれたと。しかしエルハイミ、この子は一体どう言う事か説明はしてもらわないといけませんね」


 ティアナは無表情にしているけど頭の後ろにおこマークがついているのをあたしはしっかりと感知していた。


 「ティアナ様、その様な方々等どうでもよいでは無いですか。それよりティアナ様のお好きなお茶が入りました。どうぞ。 ああ、皆さんにも入れましたのでどうぞご遠慮なくお飲みください。毒など入っておりませんからご安心ください」


 「ティアナ様、お砂糖は三つでしたよね? ミルクは濃いめなのがよろしいでしょうか? 私はティアナ様の濃ゆいのが好きですが」



 びきっ! 

   


 今あたしの後頭部にもおこマークが張り付いた!


 しかしこの場はあたしも冷静に表情を取り繕う。

 やたらとティアナにまとわりつくセレとミアムと言う二人の金髪碧眼の美少女たちを見る。



 「ティアナ、だいぶ仲がよろしいのですわね、そのお二人は」


 「よく尽くしてくれます。それよりその子は一体どう言う事でしょうか? あなたの幼き頃そっくりな子とは? まさか実の子と言う事は無いでしょうがあまりにも貴女によく似ている」


 「我は黒龍也。訳有って主様のお力にて再生を遂げた。故に我が姿形は主様から頂いた魔力おっぱいにより主様のお姿を受け継いだ。主様は我が母であり愛おしきお方だ!」


 コクはひるむことなくティアナにそうはっきりと言う。



 「エルハイミを母と呼ぶのですか? こ、子供と言うのですか‥‥‥」



 無表情のティアナに一瞬動揺が走る。

 そしてあたしに視線を向ける。



 「ティアナ様はコブ付きがよろしいのですか? その様な使い古しより私たちがお仕え致しますのに」



 びきっ!!



 確かセレって子だったわよねぇ~

 いい度胸だわ‥‥‥





 「こ、子供‥‥‥ お義母様が望まれた孫の顔‥‥‥」


 「仲がずいぶんと好いお付きの少女たち‥‥‥」


 ティアナとあたしは呪文でも唱えるかのようにぶつぶつと言う。




 『やばいわね。シェル聞こえる? みんなを壁際に退避させなさい! セレ、ミアムもあたしをティアナから奪って早くそちらにに行きなさい!』


 シコちゃんが何やら慌てて言っているようだけどあたしは既に怒りで良く聞こえない。

 それはティアナも同じようで無表情の顔に目の所だけ暗い縦線が入っている。




 「エルハイミ‥‥‥こ、子供ですってぇ~」


 「二人も若い子をはべらせてイチャイチャとぉ~」



 あたしとティアナの魔力が一気に膨らむ。





 『やばい! 【絶対防壁】【多重結界】!!』



 シコちゃんが防御壁や結界を張る。

 まるでそれを合図のようにあたしとティアナはその魔力を開放する!




 「アイミっ! 来なさい!! 【特殊技巧装着】!!」


 「我が魂よその奥に連なる力へとつなげよ!! 同調フルバースト!!」



 

 いきなり壁が崩れ巨大な女性の形をした赤いマシンドールが現れ、「ラジャーマムゥ」と答えてその背が開きティアナが飛び込む!

 そして一瞬結晶体の様な光がその巨大なマシンドールを光らせたと思ったら胸の所が開いて全身甲冑をまとった女性のシルエットの騎士が飛び出してきた!?


 あたしは瞳を金色に輝かせ魂の奥底からやって来る力に同調をする。

 それは髪の毛一本ほどのほんの細いものだったけどそれとあたしの意思が一つになる。




 「エルハァイミぃぃいいいぃぃぃっ!!」


 

 「ティィィァアナぁぁああああぁぁっ!!」





 カッ!!


 

 どかーんっ!!





 あたしとティアナはこの建物を半壊させ空中に飛び出る。



 あたしは左手をティアナに向け魔光弾を放つ。

 しかしティアナは懐から取り出した筒を展開させ一本の槍にしてその魔光弾を切り裂く。


 そしてそのままその槍をあたしに投げつけてくる。


 あたしは右手を振って見えない力の壁でその槍を弾くとティアナは手首から紐のような物で弾き飛ばした槍を回収する。



 あたしは両手を頭上に掲げ特大の魔光弾を溜めて作り出す。


 自由落下を始めたティアナにあたしはそれをぶつけようとするとあの巨大なマシンドールが緑の光を放ちながら飛んできてティアナを乗せ一気にあたしの頭上に飛び上がる。



 そしてティアナは両胸の装甲に手を当てるとそれを開き、中に四つの魔結晶石の輝きを見せる。


 あたしは大きくなった魔光弾を気合と共にティアナに放つ。




 「はぁっ!!」




 しかしティアナも胸の四つの魔結晶石を輝かせその魔力を放つ!




 「【最大旋風魔光破】マキシムトルネードぉ!!」




 ティアナの放つまるで竜巻の様な魔力の渦があたしの放った特大魔光弾にぶち当たる。

 そしてぶつかった二つのエネルギーが凄まじいプラズマを放ちながらその力を拮抗させ周りに影響を及ぼしながら消滅する。




 「【身体強化】、ライトプロテクター装着! ティアナぁぁっ!!」



 あたしは消え去ったその魔光弾と疾風魔光破の向こうにいるティアナにつっこむ。

 そしてあたしの拳とティアナの拳が空中でぶつかり合い周りに衝撃波を起こす。



 がきんっ!

 どぉっんっ!!



 「ティアナぁっ! なんなのですのぉあの子たちはぁっ!? あんなにいちゃいちゃと! しかも口づけまであんなに自然に! まさか夜も一緒だったのではないですの!?」


 「ぅぇエルハイミぃ! あんたこそあの子供はどう言う事よぉ!? 魔力与えたて生み出したぁ!? 誰が相手よぉ! あたしと言うものがありながら他の奴の子供産み出すなんてぇっ!!」



 拳と拳がぶつかり合ったままあたしたちは言いたいことを叫び合った。

 そしてティアナはあたしに対して誰かの子供をあたしが生んだと言い出した!?




 「何を言っていますの!? 私の体は、操はティアナ以外に与えていませんわぁっ!! 全ての初めてだって全部ティアナに捧げたのですのよぉっ!! コクは自己再生する折に再生速度を上げる為に私が魔力を注ぎ込んだだけですわぁ! 私の体はティアナだけしか捧げていませんわぁっ!!!!」




 「えっ?」


 

 ずるっ



 ぶつかる拳と拳がずれてあたしはそのままティアナに体ごとぶつかりそのまま空中で抱き合った。



 「私はティアナだけを求めて此処まで戻ったのですわ! シェルやイオマやコクに迫られたって、誘惑されたってずっと我慢してティアナだけに操を立てていたのに! 私がティアナ以外の子供を産むはず無いですわぁっ!!」


 あたしはそう大声で泣きだしながらティアナにしがみつく。

 


 「エ、エルハイミ?」


 「うわーんっ! ティアナの浮気ものぉっ!! いくら私がいなくなって寂しかったからって、いくらジュメルの生贄になっていた子を助けたからって私の目の前であんな事しないでですわぁ! ティアナのばぁかぁぁぁっ!!」



 わんわん泣くあたしにティアナはあたしを抱きしめ返してくれる。

 そして甲冑姿のティアナはその甲冑を光の粒子に変え元の姿に戻る。



 「エルハイミ‥‥‥ ごめん。でもあなたを愛しているのは本当よ。あたしが愛するのはあなただけ」


 「ティアナぁっ!」


 あたしは泣きながらティアナに口づけする。

 強く強く。



 そしてしばらく空中で抱き合っていたのだった。


































 * * * * *


 「それで、痴話ゲンカが原因と言う事は分かりました。エルハイミとティアナの魔力量なら十分に直せますね? ちゃんと元どうりにしなさい」


 師匠は物静かにそう言うが額におこマークが張り付いていた。


 幸いな事にシコちゃんのおかげで死人は出なかった。

 多少ケガした人もいたけど治癒魔法で治るレベル。

 あたしとティアナがその辺は治癒して破壊された建物や被害のあった場所を直せば元どうりになる。


 「しっかし何だったのよあれは?」


 シェルはアンナさんに聞く。


 「あれはアイミたちです。アイミたちは『巨人戦争』で大破し、アイミ以外は魔結晶石のコアが有りさえすれば復活できたのですがアイミだけはそうもいかず全身のパーツを取り込みながら補強をした結果、五体のマシンドールが一つの大型マシンドールになってしまったのです。ただその際に膨大な力を結晶化して身体強化に使えると言う事が分かり殿下の魔力も手伝ってあの驚異的な身体能力を持つ騎士の姿になれるのです。その力は皆さんもご覧になられたとうりです」


 アンナさんがティアナのあの力について説明をする。


 まさかあの大きなマシンドールがアイミたちだったなんて。




 「お疲れ様です、ティアナ様。お茶が入りましたから一休みしてください。あ、一応エルハイミさんの分もいれときましたから仕方ありません、飲んでいいですよ」


 「ティアナ様、お疲れでしょう? 私がマッサージしますよ?」


 セレとミアムが一息入れたあたしとティアナにお茶を持ってきた。

 しかし何かある毎に突っかかってくるこの二人。


 「ありがとう、エルハイミ少し休みましょう」


 「わかりましたわ、ティアナ」


 結局ティアナは将軍職の関係から今の態度を取っているけど二人っきりになると昔のティアナに戻ってくれる。

 

 「ティアナ、夫の浮気の一つや二つは仕方ありませんけど私の前ではだめですわよ?」


 「勿論です、ちゃんとその辺はわきまえていますよ」


 お茶を飲みながらティアナは二人と話している。

 しかしあたしの前ではセレとミアムには手を出さないみたいだ。

 あたしはため息をつきながらティアナを見る。


 仕方ないよね?

 惚れた弱みってやつかな?

 でもやっとティアナと一緒にいられるようになった。





 今のあたしにはそれだけで十分幸せだったのだった。   

 

 

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