第322話12-10スィーフに忍び寄る魔の手


 12-10スィーフに忍び寄る魔の手



 「ここに逃げ込んだぞ!」


 「早く捕まえろ!!」



 あたしとミネルバさんはその声に今の状態に引き戻される。

 と、同時に店の扉が開いてあのメル教の服と鉢巻をした数人の男がなだれ込んできた。



 「見つけたぞ、魔女め!! よくもメル様の教えの邪魔をしたな!! 許せん!」


 「とっ捕まえてメル様の前に引きずって行ってやる!」



 物々しくも彼らは全員手に武器を持っていた。


 「や、やばっ!」


 ミネルバさんはそう言って【炎の矢】の呪文を唱えだした。



 ちょっとっ!

 こんな狭い店の中でそんな呪文使ったら大火事になっちゃうわよ!?



 あたしは慌ててその男たちに【睡眠魔法】を使って眠らせる。

 いきなりバタバタと倒れ始めいびきをかきながら眠っている男たちを見てミネルバさんは唱えていた呪文を中断する。


 「あなた、ガレントのエルハイミよね? ありがと、助かったわ。しかし流石無詠唱の使い手ね」


 そう言って体の埃を落としながらあたしに向かってお礼を言ってくる。


 「何が有ったのか知りませんが、イリナさんもいきなり彼らを爆破するとか一体どうなっているのですの?」


 あたしのその質問にミネルバさんは「イリナも?」とだけ言ってあたしたち全員を見る。


 「そう言えばティアナ姫は一緒じゃないの? 知ってる顔もいないし、あなたも何かの任務中?」


 「いえ、私は‥‥‥」


 あたしがそう言いかけた時だった。


 

 「いたぞ! こっちだ!! 仲間みたいのもいるぞ!!」



 どうやら他の信者たちがミネルバさんを見つけたようだけど、何その仲間って!?

 あたしがまた扉を見るころには今度はさっきの倍くらいの人数がいた。



 「ふう、落ち着いてお話も出来ませんわ。マスターお代はここに多めに置いておきますわ。ミネルバさん、とりあえずこの人たちを眠らせて落ち着ける場所へ!」


 あたしは言いながらまた【睡眠魔法】をその人たちにかける。

 が、今度は全員が眠らない!?



 「おのれ、魔女の仲間め! この程度の魔法で我らがメル様への思いは打ち砕けんぞぉ!!」



 意外と魔法抵抗に成功しているわね?

 よほど精神が高ぶっていると言う事かしら?



 じゃあ。



 「ショーゴさん、お願いしますわ。殺さないでくださいですわ」


 「仕方ない、しかしこれ以上この店にも迷惑をかける訳にもいかんからな」


 そう言って立ちあがると同時に動き出し一瞬で信者たちの懐に入り素手で彼らを殴り飛ばし気絶させていく。



 「うわっ、凄腕ね!? でも助かった。 流石にあたし一人じゃあれだけは対処できないからね。 エルハイミ、付いて来て」



 ミネルバさんはそう言ってあたしたちを引き連れていくのだった。



 * * * * * 



 「ガレントのエルハイミも大きくなったもんだね。しかし、あんたたちも何かの任務中かい? それとも連合のティアナ姫とは別行動で何かあるのかい?」


 あたしたちが連れられて行ったのはベルトバッツさんが言っていた詰め所だった。

 あたしはみんなを簡単に紹介してからイリナさんたちを見る。


 そこにイリナさんを含めスィーフのあの面々がいた。

 みんな美人な大人の女性であの頃には考えられないダイナマイトボディーになられている。


 あたしは内心ウキウキしながら彼女たちを見ている。



 「エルハイミ、鼻の下が伸びてるわよ!」


 「お姉さまっ!」


 「主様はやはり大人の女が良いのですね? くっ、早くこの体を成長させねば!」



 シェルに耳を引っ張られ、イオマに怒られコクに引っ付かれるあたし。


 い、いいじゃない、眼の保養位したって!



 「相変わらずね、エルハイミは。学園にいた時から女の子はべらしていたのだもの。あっ、まさか痴情のもつれでティアナ姫との仲も!?」


 「ミネルバさん! 何なんですのそれ!? 私はティアナ一筋ですわよ! それに大人の女性になられた皆さんに驚いて見ていただけですわよ!!」


 「はっはっはっはっ、その割にはあたしの胸ばっか見てたじゃないか? なんなら今夜相手してやってもいいんだよ?」



 え?

 マジですか!?


 

 あたしは思わずイリナさんを見てしまった。



 「エルハイミぃ~!!」


 「お姉さまっ!!」

 

 「主様、駄目です! 私が大きくなるまで待っていてください!!」



 またまた三人に怒られるあたし。

 な、何よ、ちょっとイリナさんを見ただけじゃないの!!



 * * *

 

  

 シェルたちを落ち着かせ、今まで何が有ったかを話した。



 「そうだったのか。それは難儀だったねぇ。しかしよくここまで戻れたもんだ」


 「それで、イリナさんたちは何をしているのですの?」



 イリナさんたちは顔を見合わせてからあたしを見る。



 「ガレントのエルハイミだ、話しても問題無いだろう。いや、むしろあんたには協力してもらいたい。連合軍は今別の事で動きがとれない。ティアナ姫でさえ苦戦していると聞いている。だからここの件はエルハイミ、あんたに協力してもらいたい。あの新興宗教、メル教は背後にジュメルがいるんだ」


 「!?」

 

 あたしはイリナさんの言葉に驚きを隠せなかった。

 ジュリ教では無くメル教として活動をしていると言う事?

 じゃあ、あのメルって教祖はジュメルの関係者?


 「あたしたちはあいつらの布教を妨害しつつ尻尾を掴んで信者たちにそのことを暴露してこのスィーフで起こっているメル教崇拝者の増大を止めなきゃならないんだ」


 イリナさん以外の人たちはその言葉に相槌を打っている。




 ジュメルがここでも問題を起こしていたのだった。

 

 

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