第302話11-13永遠の終焉
11-13永遠の終焉
「はー、はーっ、ジェリーン、わ、私も連れて行ってくれぇ~」
カルラ神父は既によぼよぼの老人になっていた。
そうしてあの魔怪人の方へと這いずって行っていた。
しかし門から出てきた魔怪人はそんなカルラ神父に目もくれずそのまま踏むつぶしていった。
「う、うわぁぁっ! よ、よせっ イルゲットぉ! 私が分からんのかぁぁっ!!」
ぐしゃっ!
哀れカルラ神父は魔怪人、イルゲットにその頭を踏みつぶされ脳漿を地面にぶちまけたのだった。
「イルゲットなのか?」
アビィシュ殿下は我が目を疑っていたようだ。
魔怪人の胸の所に青白い男の顔がある。
それを見たフィルモさんはそれが弟王子のイルゲットさんだとはっきりと言った。
ジュメルめ、イルゲットさんを魔怪人に融合したな!?
「ウウ、ニ、ニイサン、ニイィィィサァアアアァァァンッ!!」
その魔怪人はうつろな声でそう叫ぶと魔光弾を発しながらこちらに向かってきた。
魔光弾は自軍の聖騎士団だろうがロックゴーレムだろうかお構いなしに乱射をしながらこちらに飛び込んでくる。
「殿下をお守りしろぉっ!!」
「おのれ化け物めぇっ!」
聖騎士団をかき分け突っ込んでくるイルゲットの魔怪人。
しかし近衛兵やユエバの町から来た冒険者たち、ジマの国から増援で来たドーテさんたちに阻まれアビィシュ殿下の所のまでたどり着けずその膝を土につけた。
「ニ、イサン‥‥‥」
瞳が定かでないイルゲットさんの顔が最後にそう言ってその魔怪人は倒れた。
「イルゲット‥‥‥」
アビィシュ殿下はその魔怪人の元へまで行く。
「殿下、お下がりください! 危険です!!」
近衛兵のその言葉にアビィシュ殿下は片手をあげ引かせる。
そして既に動かなくなった魔怪人のイルゲットさんの顔に手を当てその眼を閉じさせてやった。
「馬鹿者が。こんな姿になりおって‥‥‥ 父上の所へ行って謝ってこい。そして安らかに眠れ」
そう言ってしばし弟の顔を見つめていたアビィシュ殿下は立ち上がり大声で勝利宣言をする。
「我が弟イルゲットは名誉の戦死をした! 我が軍の勝利だ!! 皆の者、聖騎士団を許すな!! 彼奴等を全て打ち取れぇ!!」
おおっ―!!
雄たけびと共に残った聖騎士団にこちらの陣営がなだれ込む。
既に巨人も魔怪人も倒されている聖騎士団は蜘蛛の子が散るかの如くバラバラに逃げ惑う。
それを今までの恨みとばかりにブルーゲイルやユエバの冒険者たちが追い回す。
「終わったな」
ショーゴさんのその一言であたしも深いため息をつく。
相変わらずジュメルが絡むと何とも後味の悪い戦いになる。
あれがジュメル。
何度も味わっているのにやはりこいつらの非道さには反吐が出る。
あたしは拳を握る。
こんな奴らがいるから師匠もティアナもそしてあたしも苦労をするのだ。
ふとあたしの頬に一滴のしずくが当たる。
空を見上げるとよどんだ雲からぽつりぽつりと雨が降り始めた。
戦いは終わった。
みんなの心に嫌な傷跡を残して。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
内戦が終わって既に一週間が過ぎていた。
郊外戦のおかげで両方の街に被害は無かった。
しかし、レットゲイルはジュリ教の聖騎士団に占領されていたためにあらゆるところが被害になっていた。
特に町娘たちの被害が酷くかなり者のが癒えない傷を負わされていた。
「エルハイミ、やっとファイナス長老と連絡が取れたわ。ファイナス長老もあたしたちが生きていたので驚いている」
シェルのその言葉にあたしは大きく安堵の息を吐いた。
「良かったですわ。『女神の杖』はジェリーンに持ち去られましたがその力は収まったみたいですわね?」
「うん、それでね、あたしたちがいなくなっている間にガレントもいろいろあったみたいでティアナはティナの町にいないらしいのよ」
「え? それはどう言う事ですの!?」
「詳しくは又聞きになるので風のメッセンジャーで英雄ユカ・コバヤシに聞いてもらった方が早いらしいわ」
シェルはそう言って申し訳なさそうにしている。
あたしは慌ててアビィシュ殿下にお願いしてボヘーミャと通じる風のメッセンジャーを使わせてもらう事にした。
* * *
『よくぞ無事でいてくれました。あなたたちの事だからきっと戻ってくるとは思っていましたがやはり心配していました。それであなたたちが消えたこの二年弱、ガレントにもいろいろありました。まず約一年半前に国王陛下が崩御されました。今はアコード陛下が国を治め、ティナの町はエスティマ殿下が治められています。そしてティアナは‥‥‥』
師匠は一瞬言いよどんでハッキリとこう言った。
『ティナの町を出て今は連合軍の将軍を務めています。アイミたちを連れ各国を飛び回りジュメル殲滅に躍起になっています。エルハイミ、こちらからもティアナには連絡を取ってみますが、今の彼女は‥‥‥ いえ、貴女さえ戻ればきっとまた昔の彼女に戻ってくれるでしょう。まずはボヘーミャに戻ってきなさい。それが一番でしょう。あなたが帰ってくるのを待っています』
全く変わりのない師匠の映像はそこまで言って途切れた。
やっと連絡が取れた。
あたしは全身の力が抜けその場にひれ伏してしまった。
良かったぁ~。
やっと連絡が取れたぁ。
しかしそうか、もう二年近くたっていたのか‥‥‥
そうするとあたしももうすぐ十七歳になるの?
確かにたまにイオマの胸をマッサージしてて、だいぶ大きくなったと感じていたし、最近はイオマも奇麗になってきているのは分かっていた。
でもそうか、二年か‥‥‥
ティアナ、ごめんね。だいぶ待たせちゃったね。
でもティナの町にいないのかぁ。
あの町の事は色々と心配だけどティアナがいないのじゃ意味がない。
ここはやはり師匠の言う通りボヘーミャに向かおう。
あたしはそう思い久しぶりに安堵の中その日はひさびさに良く眠る事が出来たのだった。
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