第297話11-8イザンカ国王崩御
11-8イザンカ国王崩御
イザンカの国旗が半旗で掲げられている。
黒い喪服に身を包んだ人々が葬儀に参列している。
「我が父は偉大な王であった。みなに愛された父はその最後までこの国を思い皆を愛した。今はただ安らかに眠ることを祈る」
アビィシュ殿下のその演説は悲しむ人々の心に響いた。
あたしたちも外来として葬儀に参列している。
「こんな時にだけど、ジマの国との連絡は取れたの?」
「ええ、クロエさんに行ってもらってます。ミグロ、じゃなかった、ミナンテ陛下にはきっと協力が得られますわ」
あたしは参列の中で少し離れた所でフィルモさんと話をしている。
国王陛下が崩御されて既に三日目、流石にレッドゲイルにもこの事は伝わっているようで内戦下であっても今朝には花を摘んだ荷馬車がブルーゲイルの城門前に置かれてたという。
内戦で争っているのは兄王子とだから父王である陛下の崩御には一応敬意を払っているという事か。
「ユエバの町はどうですの?」
「勿論こっちに着くわ。ロックワードも冒険者たちに依頼を出しているし、前回の事でみんなも頭に来ているわ」
フィルモさんはそう言ってアビィシュ殿下が演説を終える様子を見ている。
この葬儀が終わりしばらくすればいよいよこの内戦を終わりにしなければならない。
あたしはカルラ神父を思い出す。
ジェリーンはあの様子だとヨハネス神父の為に今はカルラ神父の元で動いているとか言っていた。
そうなるとカルラ神父ももしかしたら「十二使徒」の一人なのかもしれない。
そこでふとある事を思い出す。
「コク、ディメルモ様に仕えたダークエルフってこの大陸にいましたわよね? 今はその隠れ里を引き払い何処かえ行ってしまったと聞きますわ。コクはその事について何か知っていまして?」
「主様、あやつらは私との関係がありませんでした。もともとはエルフだったのにディメルモ様のお力にすがり闇を愛しました。ちょうどこのイザンカに闇の森がありましたが今はどうなっているか知りません」
何だろう、コクはあまりダークエルフに対していい感情を持っていないようだ。
「コクはダークエルフたちに何か思う所があるのですの?」
「あやつらは我が配下ローグの民と対を成す隠密の一族でした。結果我が子孫のジマの王を殺された事も有ります」
なるほど、別系統の隠密か。
しかもコクの意の下に属さない隠密。
やはり厄介な存在なんだ。
「あいつらは陰険なのよ。あの戦争で知っているでしょう?」
シェルがあたしたちの話に割って入る。
真っ黒なドレスに身を包んだシェルは肌が白いのでそのコントラストがこの暗い雰囲気の中なのに彼女の美しさを引き立てる。
あたしは静かに話始める。
「師匠の話では秘密結社ジュメルはその中心幹部である『十二使徒』がいて、師匠と同じ『時の指輪』をはめているらしいのですわ。つまり私と同じ時に縛られない存在。そしてその『時の指輪』を提供しているのはダークエルフ。いままでは歴史の裏側で静かに何か事を進めていた。しかし『女神の杖』を欲してとうとう表舞台に上がった。ジュメルは巧みに各国に入り込み既にその魔の手に国自体が乗っ取られている所まである。ここイザンカだってその犠牲者ですわ。イルゲットさんとやらも既にジュメルに洗脳されているよううですし、この戦い何が何でも勝たないといけませんわ!」
そう、全ての悪の元凶ジュメル。
この世界は前にいた世界程文明が発達していないけどいい人ばかりだ。
ゆっくりと時代が流れ、伝統を重んじ、同じ毎日をゆっくりと繰り返す。
あたしは前の世界のようなギスギスした感じの無いこの世界が好きだ。
だから思う。
そんな世界を壊そうとするジュメルは許せない。
「主よ、花を」
ショーゴさんがあたしに一輪の花を渡して来る。
最後に国王陛下に献花するのだ。
あたしはその行列に並び思う。
このイザンカをジュメルの魔の手から救いティアナのもとに帰るのだと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます