第285話10-27連絡

 10-27連絡



 「主様ひどいですよ。私たちを置いて行こうとするなんて!」



 コクがふくれている。


 あの後あたしたちは急ぎ支度して元レジスタンスの人に断ってから王城から荷馬車で出た。

 あまりに急いでいたのでコクたちに連絡するのを忘れていたらちょうどクロエさんが王城の外に用事がありばったりと出会ったのだった。


 あたしたちは急いでいることをクロエさんに言って、コクには王城で待っているよう伝えてもらったはずなのに今しがた竜の姿の三人が追いかけてきたのだった。


 「ごめんなさいですわ。でも急がないとイオマが危ないのですわ!」


 あたしはコクに謝罪するが、コクはふくれたまま不満を言う。


 「イオマもイオマです。主様にふられたからと言っていきなり居なくなるのはよろしくありません。会ったらしっかりとお説教です!」


 なんだかんだ言ってもコクもイオマと仲は良かった。

 どうやらコクはあたしに置いてきぼり喰らったのとイオマがいなくなったこと両方が不満のようだ。


 「主よ、ユエバの町までは一日もあれば着くはずだ。あの町には冒険者が多いが聖騎士団相手だと魔法が効かない。急ごう」


 ショーゴさんはそう言って馬車を急がせる。



 * * * * * 



 「とまれ! 貴様らユエバの町に何の用だ?」


 聖騎士団がちょうどこの街道を閉鎖していた。

 まさかこんな所で聖騎士団に会うとは。



 「あなたたちこそ何なのですの? 何の権利があって私たちを止めるのですの?」



 あたしの物言いにその聖騎士はあたしを見ながら嫌らしい顔をしてこう言う。


 「我らは女神ジュリ様に立てつく邪悪な異教徒を成敗する為にここに居る。女、お前も取り調べる。こっちへ来い!」


 その騎士はあたしの手を取ろうとしたがショーゴさんがその手を掴む。


 「貴様らこそ我が主に対する無礼、見過ごせぬぞ!」


 義手でその手をつかまれたその騎士は悲鳴を上げる。


 「いだだだだだっ! き、貴様ぁ、我ら聖騎士団に立てつくか!? 皆の者、出合え! ここに異教徒がいるぞ!!」


 それを皮切りにショーゴさんはその騎士を放り投げる。

 通常の人にはできないその怪力にその騎士はなすすべもなく投げ飛ばされた。



 どがぁっ!



 「うおっ、何事だ!?」

 

 「異教徒だと!?」


 「また冒険者共がたてつくか!?」


 わらわらと騎士団が集まってきた。



 「死にたくなければ道を開けなさい!この黒龍、女神ジュリには思う所があります!」



 コクは馬車の上に立ち大声でそう言う。


 「なんだこのガキは!」

 

 「ガキ、ジュリ様に何たる物言いだ!?」


 「かまわん、こいつらをひっとらえろ!」


 「おい、あの魔導士の女とメイドは殺すなよ! 後で楽しむんだからな!!」


 騎士団の連中はそう言って下品な笑いをした。

 コクはあたしを見て「よろしいですよね?」とひとことだけ言って、「クロ、クロエ!」と叫んだ。



 「はっ!」


 「お任せを!!」



 とたんにクロさんとクロエさんが飛び出て瞬殺で騎士団を始末する。



 どかっ!

 ばきっ!!

 ぐしゃ!

 どしゃっ!!



 「ひっ、ひいぃぃぃっ!! お、お前ら我らジュリ教聖騎士団にこんなんことしてただで済むと思うなよ!!」


 「言いたいことはそれだけでいやがりますか?」



 クロエさんは騎士の胸に手を突っ込み心臓をつぶした死体を最後に残ったそいつに投げ飛ばす。


 「い、一体何モンなんだお前らはっ!!」


 「私はガレント王国がティアナ姫の伴侶、エルハイミですわ!」


 あたしがそう言うとその騎士は泣きながらこう叫んだ。


 「ひぃぃぃぃいいいぃぃっ!! あの化け物、『育乳の魔女』だとぉぉぉっ!!!?」



 「誰が『育乳の魔女』ですのよっ!!」



 思わず突っ込むあたしをよそにクロさんがずいっと前に出た。


 「おしゃべりが過ぎた。消えろ」  


 

 ザシュザシュっ!



 そしてその騎士はバラバラにされたのだった。


 「あー、相変わらず容赦ないわねクロやクロエは」


 シェルは呑気にそんな事を言っているが、こんな所にまで聖騎士団がいるのだ、ユエバの町が心配だ。

 

 「急ぎましょうですわ、イオマが心配ですわ!」


 あたしたちは急ぎユエバの町に向かうのだった。



 * * * * *



 「主よ、これは時間がかかるな」


 丘を過ぎた頃ユエバの町と思われる城壁が見えてきた。


 このイージムは昔から妖魔や幼獣が多い地で村や町は防衛の為に城壁が築かれていることが多い。

 なのでこうして外部から攻め込まれる場合は城壁を基準に攻防が繰り広げられる。


 「あれじゃあ町には入れなさそうね、しっかし騎士団てどれだけいるのよ?」


 シェルも荷台に立ってその様子を見ている。

 どうやら町にはまだ入っていないようだがざっと見ても千近くの騎士団がいる。


 あんな小さな城壁の町なんてすぐに陥落してしまうだろう。


 「ふん、人間如きどれだけいようが簡単に蹴散らしてやがりますよ!」


 クロエさんが指をぽきぽき鳴らしている。

 見た感じ城壁ももう少しで破壊され騎士団が城内になだれ込むだろう。


 「時間がありませんわ。狙うのは聖騎士団だけ、それとジュリ教にジュメルだけですわよ!」


 あたしがそう言うとコクが無言頷きショーゴさんも服を脱ぎ始める。

 

 「よっしゃ! 始めるわよ!」


 そう言ってシェルが矢を放つ。

 それは開戦の狼煙となって騎士団数人を吹っ飛ばした!



 「クロ、クロエ、主様のお心のままに!」


 「御意!」

 

 「わかりましたでいやがります!」


 「むんっ、転身! ストライクモード!!」



 みんなが一斉に騎士団につっこむ。

 あたしやシェル、コクは聖騎士団以外に変なのがいないか探す。


 「エルハイミ、いたっ! 魔怪人よ!!」


 「やはりジュメルもいましたわね! コク、あれがジュリ教を母体にする秘密結社ジュメルですわ!」


 「女神ジュリの手先なんですね? 良いでしょう、ディメルモ様に敵対した連中なら容赦要りませんね!? クロ、クロエかまいません、そいつらも消しなさい!!」


 それを聞いたクロさんやクロエさんはそれこそ無双状態。

 ショーゴさんも人間相手にまさしく鬼神の如き働き。


 あたしたちに気付いた騎士団やジュメルはこちらに向かってくるけどたった三人に押されまくっている。

 たまにぽろぽろとあたしたち丘の上にいる後方組にも襲ってくるけどシェルの矢やあたしの【岩石弾】ストーンブリットや【地槍】アーススパイク、コクのドラゴンブレスであっさり撃退される。


 その攻防ともならぬ一方的な攻撃はどんどんと聖騎士団たちの数を減らしていく。


 そしてとうとう聖騎士団は撤退を始めた。

 彼らはユエバの町の反対の方へと逃げてく。

 どうやら本陣はあちらに有るようだ。



 死屍累々の道をあたしたちはユエバの町に向かう。




 そしてユエバの町の城門が開くのであった。

 

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る