第278話10-20激熱
10-20激熱
あたしたちはとうとう最後の詰め所まで来ていた。
「この詰め所を抜ければ王城だ」
ショーゴさんはそう言って最後の詰め所の扉に手をかける。
重々しい音がして扉が開いた。
あたしたちは用心しながら中に入る。
『とうとうここまで来たのか? 全く他の連中は何をやっているのだか』
そんな不満の声を発しているのは緑の髪の毛の海パン一丁の筋肉ムキムキでさわやかな笑顔が似合うナイスガイの悪魔だった。
「またこんなのだよ、本当にリッチの呼び出した悪魔って人材不足なんじゃないの?」
シェルがため息混じりにそんな事を言う。
確かにあたしもそう思うけどだからと言ってこいつらが弱い訳じゃない。
『まあいい、相手してやろう、かかってきなさい!』
さっきから何か言うたびにポージングしているこの筋肉マッチョが一気にその魔力を高める!
すかさずショーゴさんは変身し、クロさん、クロエさんがが前に出る。
シェルも矢を構え、イオマでさえ呪文を唱えようとしている。
『行くぞ! ポージング!!』
そう言ってキメのポージングをすると床から沢山のシャボン玉が出てきて筋肉悪魔の背景に赤や黄色の色とりどりの魚の群れが右から左に大量に流れた!
なっ!?
水の中でもないのになんで魚の魚群が!?
『きたきたきたぁっ! 激熱だぁ!!』
そう言った筋肉悪魔の魔力が一気に高まり一瞬サメたちが現れたと思ったら大量の鉄の玉が飛び出してきた!!
鉄の玉一つ一つは小さく無数に飛んでくるので避けることは出来ない。
あたしはすかさず【絶対防壁】を展開する。
「シェル、イオマ、コク! 早くこちらにですわ!!」
「うわっ! いたたたっ!!」
シェルはまるで脱兎のごとくあたしが展開して絶対防壁の後ろに逃げ込む。
イオマもコクも退避済み。
クロさんやクロエさんも自分で防御壁を展開している。
ショーゴさんは新しい鎧のお陰で難を避けていた。
『ふん、単発では倒せないか? ならばこうだっ! むううんっ!!』
さらに力んで筋肉を盛り上げまたまたポージングをする!?
すると筋肉悪魔の魔力がさらに大きく膨張して、床からまたまた泡が立ち上り背景にあの魚群が流れる!
今度はところどころにサンゴ付きの岩が立ち上がり、ますます水中のようになってくる!?
『おおっ超激熱だぁっ!! いいぞぉ!!』
筋肉悪魔がそう叫ぶと今度は一瞬ジュゴンたちが乱舞するのが見えたと思ったらまたまた鉄の玉が大量に飛んで来た!?
『ふはははははぁっ! 確変が決まったぁ!! 倍々で連続攻撃だぁ!!」
先ほどの鉄球の倍以上の飛来が続く!
「エルハイミ何とかしなさいよ!! これじゃぁ身動きできないわよ!!」
「そんなこと言われても、これでは私だって何もできないですわぁ!!」
まるで散弾銃の攻撃を受けているかのような鉄球にあたしたちも身動きが取れない。
せめてこの攻撃の隙があればいいのだが‥‥‥
『おおっ!? まだまだいけるぞ! 連チャンだぁっ!!』
鉄球の嵐は止まる事を知らずまだまだあたしたちを襲っている。
ちょっ、さっきの攻撃より激しいっ!!
絶対防壁のおかげで何とか耐えているけどこれって直撃喰らったらやばいわよっ!
「隙が出来ないと攻撃に移れない! 一体何なのよこの鉄球!?」
シェルは試しに矢を放っても無数の鉄球のせいですぐに矢が撃ち落とされる。
これでは肉弾戦を得意とするクロさんやクロエさんも動けない!
「アサルトモード! 全弾発射!!」
ショーゴさんがアサルトモードになり魔光弾を連射するもやはり鉄球の数が多すぎて話にならない。
ミスリルの鎧だけではきついのでショーゴさんもあたしの防御魔法の傘に入ってくる。
「こうなったら雷撃魔法で一気に勝負に出ますわ!」
「待ってください、お姉さま! 鉄球がだんだんと床に!!」
あたしが広範囲雷撃魔法で勝負に出ようとしたがイオマが待ったをかける。
言われた床を見れば鉄球の玉がどんどんたまって来ていた。
これでは雷撃なんか使ったら電気がこちらまで伝わってきてあたしたちまで感電してしまう!
『ふはははははっ!! いいぞぉ! またまた確定だ! じゃんじゃんバリバリいくぞぉ!!』
連続で筋肉悪魔の前にタコやカメ、エビにジュゴン、カニまで現れて鉄球の数が増していく。
いよいよクロさんやクロエさんまでも耐えられなくなってあたしの防御魔法の傘に入ってくる。
「主様、何か方法はないでいやがりますか!? あいつの所まで行けさえすれば速攻でぶちつぶしてやりやがります!」
苛立ちながらクロエさんはそう言うけど、試しに【氷の矢】なんか打ってもすぐにそこで鉄球によって固まって落っこちてしまう。
とにかくこの散弾銃の雨あられをわずかでも止められれば!
ん?
止める??
と、あたしは【氷の矢】で固まったものを見て思う。
「そうですわ!【アイアンゴーレム】よ!!」
あたしは床に散らばる鉄球に魔法をかけてアイアンゴーレムを作り上げる。
とたんに鉄球により表層がぼこぼこになるけど、かまわずどんどんアイアンゴーレムを作っていく。
やがてアイアンゴーレムの壁が出来上がり筋肉悪魔も見えなくなるほどになった!
しかしアイアンゴーレムのおかげでこちらには鉄球の被害がなくなった。
あたしは目の前にそびえるアイアンゴーレムたちを見てまだまだその向こうに鉄球が飛び交うのを確認する。
「とりあえずあの鉄球は防げたけど、この後どうするよのエルハイミ?」
「どうもこうもむこうが鉄球でいっぱいになって身動きが取れなくなるのを待つのですわ」
シェルの質問にあたしはそう答える。
「でもむこうだってそうなればこの鉄球の嵐を止めるんじゃないですか、お姉さま?」
でも多分止まらないだろう。
あたしは根拠のない確信を感じていた。
するとしばらくして館内アナウンスの様に女性の声で警告が鳴る。
『球を抜いてください。球を抜いてください』
『ぐおぉぉぉおおおぉぉっ!! 連チャンが止まらないっ!! 鉄球が詰まるぅ!! ぐ、ぐあぁぁあああぁぁっ!!』
ゴーレムの向こうから筋肉悪魔の悲鳴が聞こえてきた。
「主様、これは一体?」
「多分ポージングによる何らかの幸運度が上がりそれにより発動するこの鉄球の嵐があの悪魔の能力ですわ。でも連続で幸運を呼び寄せたためにその発動が抑えられなくなったのですわ。だからアイアンゴーレムでふたを閉めてしまえば必然とこの閉鎖空間では鉄球で詰まってしまいますわ!」
コクがかわいらしく首を掲げてあたしに聞いてくるのであたしは予測を話してみる。
するといよいよ向こう側は鉄球でいっぱいになったようで警告がさらに響きなる。
『係員を呼んでください。係員を呼んでください!』
あたしは床を確認してこちら側に鉄球が転がってないのを見てからアイアンゴーレムに手を当て【雷撃魔法】を発動させる。
バリバリバリっ!!
アイアンゴーレム全部が電気による感電を起こす。
そしてアイアンゴーレムの壁の向こう側でも。
『あばばばばばばばばばばっ!!』
しばらくして手を放し、アイアンゴーレムたちをどかしてみると所々が焦げて表面にまだ電気をぴりっ、ぴりっとスパークさせている筋肉悪魔が現れた。
既に白目で口から魂の煙を吐いている。
またまたどこからから「ちーんっ」とか言う音がしてこの筋肉悪魔はガクッと事切れる。
「えーと、終わりでいいのよね?」
「黒龍様、主様、トドメで心臓ひと突きしてやがりましょうか?」
シェルが弓で筋肉悪魔をつついていてクロエさんが手刀の爪を伸ばす。
「気持ち悪いから関わり合いたくありません。主様、先に行きましょう」
コクはあたしの服の端をぎゅっと握って筋肉悪魔を見ていた。
あたしはそのコクの手を握り首を縦に振る。
「そうですわね、これで十二詰め所は全て通過ですわ。 時間が無いですからリッチの元へ行きましょうですわ!」
「あ、景品って書いてある箱が落ちてる。おや? 中身は金色のコイン? エルハイミこれってオリハルコンかな??」
シェルが何か見つけたようだ。
多分オリハルコンだと思う。
でもすでにオリハルコンはいっぱい持っているしな、もしかしたらこの箱を近くの小屋で買い取ってくれるところがあるかも知れない。
あたしは漠然とそんな事を思いながら「邪魔にならないなら回収しておきましょうですわ」とだけ言って先に進むことにした。
さあ、これで十二詰め所は越えた。
あたしたちはいよいよリッチが待ち構える居城へと入っていくのだった。
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