第267話10-9剛腕の者
10-9剛腕の者
あたしたちは次なる詰め所へと向かっていた。
そしてほどなく次なる詰め所に到着する。
ショーゴさんは詰め所の扉を開く。
そこは先程の詰め所とほぼ同じような作りだった。
そしてやはりその中央にはたたずむ影一つ。
『ほう、ここへ来たか。ならば少しは腕が立つな?』
見ると大柄な人型だけど頭が牛の所々を金色のプロテクターで覆っている悪魔がいた。
その容姿はミノタウロスに悪魔の翼と尾が付いたような感じだ。
「ふむ、ここは私が相手しよう。クロエは下がっていろ」
「クロ様、ここは私が!」
クロさんはずいっと前に出てクロエさんを制する。
「主様、やはり今後が有ります。クロエの治療を願います」
クロさんはあたしを見ながらそう言う。
クロエさんの治療ですって?
「その左腕、まだ完全には治っていないだろう。ここは剛の者が守るようだ、今のお前では力不足だ」
クロさんはそう言って襟首を少し緩める。
「うっ、分かりましたクロ様‥‥‥」
クロエさんは悔しそうにそう言いながら素直に下がる。
ええ?
本当に結構ダメージ喰らっていたんだ!?
あたしはすぐにクロエさんに【治療魔法】をかけてその傷を治すがどうも様子がおかしい。
『ふん、あやつの矛を受けたか? ならばその傷そうそう治るものでもあるまい。我ら悪魔の攻撃を受けし者はその傷に呪いがかけられる。そのまま放置しておけば傷はますますひどくなるからな』
そう言って牛頭は肩を揺らして笑う。
つまり悪魔の攻撃で傷つくとそのダメージはそうそう治らず、更に呪いがかかっていると言う事か?
だったら‥‥‥
「【解除魔法】!」
あたしはクロエさんの傷にかかっている呪いを解除する。
そしてその上に更に【治療魔法】をかけると今度は完全に治った。
『なにっ!? 貴様悪魔の呪いを解除しただと!?』
「おしゃべりは終わりだ、行くぞ!」
驚いている牛頭にクロさんは一気に距離を縮める。
だが腕を組んでいた牛頭が一瞬光ったと思ったらクロさんが弾き飛ばされた!?
「どういう事? あいつ何もしていないのにクロが吹き飛ばされた?」
シェルは驚いているがショーゴさんは何が有ったか分かっているようだ。
「居合と同じだな。初動が見えないほど速い。しかしクロ様はしっかりと防御している」
そう、弾き飛ばされていてもクロさんはノーダメージだ。
しかもその手には牛頭からもぎ取った角が握られていた!
クロさんはその角を牛頭に放り投げながら言う。
「ふん、なかなかの拳だが力に頼り過ぎている。その程度ではこの私を倒すことは出来ん」
『ぐぬぬぬぬっ、貴様いつの間に! ゆ、許せんぞぉっ!』
そう言って牛頭は鼻から荒い息を吐きながら目を真っ赤に血ばらせ突進してきた。
ぶもぉぉおおおおおぉぉっ!!
がしっ!
雄たけびを上げながらクロさんに突っ込んでくる。
しかしその突進をクロさんは難なく片手で止めた!?
「やはり力にだけ頼る類か、クロエとの殴り合いには有利やもしれんが私には意味がないな。終わりだ。ドラゴンクロ―!!」
ザザザザシュっ!
クロさんが空いている腕を一閃すると牛頭は体を小刻みにふるわせた。
「ぶもぉぉおおおおおぉぉっ‥‥‥」
牛頭はそう叫ぶと同時にバラバラにきざまれその場で崩れ落ちた。
そして何事も無かったように襟を元に戻しびしっとした執事の姿のクロさんはこちらに戻ってくる。
「お待たせしました、黒龍様、主様。さあ次へ参りましょう」
そう言いながら軽くお辞儀をしてくる。
あたしは素直に驚いている。
やはりクロさんはクロエさん以上に化け物だ。
もしかするとレイム様と同等かそれ以上?
あたしはコクを見る。
コクも今は幼い姿だけど元の姿に戻ればクロさんやクロエさん以上。
太古の竜は伊達では無いのだ。
「主様、どうしました?」
きょとんとした感じでくりくりの黒い瞳を見開き小首をかしげるコク。
ものすごく可愛いのだけどつくづく味方で良かったと思う。
「コクたちは本当に強いですわね」
「えへへぇ、主様に褒められたぁ~」
コクはそう言ってあたしに抱き着いてくる。
ほんと見た目は可愛い子なのにね。
「ううっ、主様うらやましいでいやがります」
「ほんとあたしたちって何もしなくていいのよね?」
「助かりますけどねぇ~、私じゃあんな化け物相手に出来ないですよ」
クロエさんは指をくわえこちらを見ている。
シェルはポーチから果物を出してつまみ食いしている。
イオマは杖を持ってため息ついている。
「主よ先を急ごう。ミグロが心配だ」
ショーゴさんのその言葉にあたしはうなずき動き出す。
そしてあたしたちは次の詰め所へと向かうのであった。
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