第239話9-11第八層
9-11第八層
「シェル、お願いですわ!!」
あたしは【絶対防壁】を展開してゴーレムの一撃を受け止めた。
そして動きが止まった瞬間にシェルの矢がゴーレムに突き刺さり爆発する。
やっと外装がはがれたか!
そう思っているとすかさずショーゴさんが駆け込みむき出しの内部に深く剣を突き立てる。
「主よ、頼む!」
そう言ってショーゴさんはそのゴーレムから飛び退く。
それと交代であたしの【雷撃魔法】が飛んでいきゴーレムのコアを焼き払う。
ばりばりばりっ!
どぉおおぉぉん!
中途半端な格好だったのでゴーレムはその場で倒れてしまった。
壁際ぎりぎりまで下がっていたあたしたちは、ほっと息を吐く。
「危ないですわね、こっちに倒れられていたら避けられませんでしたわ」
「お姉さま、もうこれ以上下がれません、はぁはぁ、でもお姉さまに押しつぶされるの気持ちいいかも??」
別の意味でも危なくなってき始めている。
どうも『試練の道』以来イオマは何かに目覚めてしまったらしい。
あたしは慌ててイオマから離れる。
「ああんっ、お姉さま急に離れるなんて」
額に手を当てながらあたしはため息をつく。
「イオマ、遊んでいられませんわ。早いとこゴーレムからミスリルを回収して次に行かないと今日はまだ二体目ですわよ?」
そう、今日はまだ二体目だ。
あれから大体一か月くらい、あたしたちはミスリルゴーレムをどれだけ倒しただろうか?
最近は一日三体くらい倒していると思う。
「しかしおかげですべての剣がミスリル製になった」
「あたしの弓も更に軽くなって使い勝手が良くなったわ! ゴーレム狩りも最近は慣れてきたし、今度は防具ね!?」
一日三体も倒していれば潤沢なミスリルが手に入る。
あたしはそれをもとにショーゴさんやシェルの武器を【創作魔法】で作り直した。
流石に魔晶石の融合品は手に入らないから従来のモノを再利用している。
そして余ったミスリル合金でイオマのライトアーマーを作ったのだが魔晶石が足らなかった。
なのであたしの魔導士ライトアーマーの魔晶石を何個か分けてやって自動防御が出来るようにした。
その分あたしは気をつけないといけない。
勝手に体が動いて防御してくれる部分が減ってしまったからだ。
いまは左手と胸当て、そして左足の防具にだけ魔晶石が取り付けられている。
イオマも同じく左手と胸当て、そして左足の防具にだけ魔晶石がついている。
全身が勝手に動かない分、動きが鈍くなったり勝手に動くのが左半分になってしまって動きづらいけど、一度だけゴーレムが石を投げてきた時にイオマのライトプロテクターが反応して事無きを得た。
やっぱりこう言ったモノはまだまだ必要だ。
あたしは気を付けてさえいれば思った瞬間に防御魔法が発動できる。
なのでよほどのことがない限り問題は無いはずだったのだが‥‥‥
「お姉さまのいけずぅ~、今晩こそはマッサージしてもらいますからね!」
最近この子の粘着度が酷くなっている。
さっきもイオマがいなければもっと簡単に動けたものをずっとあたしにべったりついている。
仕方ない時もあるけど、さっきみたいに防戦一方で一所に固まっているのはよろしくない。
あたしは少し考えて意を決する。
「決めましたわ、イオマ、私と共にもっと魔法の訓練をしましょうですわ!」
あたしはイオマに向かってびっと人差し指を立てる。
イオマはきょとんとしているけどこれは今後にとっても重要な事。
見た所イオマの魔法レベルは中級レベル。
駆け出しの冒険者としてはまあまあのレベルだ。
「でも、お姉さまたちがいればあたしが魔法使う必要なんて無いじゃないですか?」
「万が一の時には自分の身は自分で守らなければなりませんわ。イオマだってもっと魔術を上達させたいでしょうですわ?」
イオマはう~っと唸っているが事実なので小さく「はい」と返事をする。
いよぉっしぃ!
これで胸のマッサージは回避できた!
内心ガッツポーズをとるあたし。
何故かつまらなさそうにしているシェル。
そしてこの後の休息からイオマの魔術訓練が始まるのであった。
* * * * *
「お、お姉さまもう限界ですぅ!」
「まだですわ、魔力を全部使いきるまでですわ!」
あたし次の休息からイオマが気絶寸前まで魔法を使わせる。
まずは基本の両手両足に重りをつけてのあたしからの攻撃回避!
両手両足の重りを念動魔法で動かすか、重力魔法で重さを軽くするかをし続けなければんらない。
「だ、駄目ですぅ~もう限界‥‥‥」
そう言ってイオマはばたっと倒れる。
そこにあたしの死なない程度の雷撃が当たる。
「ふぎゃぁ! ああぁぁ、でも気持ちいい‥‥‥」
ぽてっ
最後に変な事言って完全に気絶するイオマ。
うーん、思っていた以上にダメダメだったな。
あたしはイオマに魔力を注入して回復魔法をかけてから浄化して奇麗にしてやる。
そして毛布を敷いて寝かせてやる。
「エルハイミ、いきなりイオマに魔術訓練だってここ出たら別れちゃうかもしれないんだよ? 良いの?」
「イオマの力量ではこの先も大変でしょう、だから今のうちに鍛えられるだけ鍛えておけば生き延びられる確率も上がりますわ」
あたしはそう言ってすやすや眠るこの子を見る。
こうしてみると寝顔だけは可愛いのにね。
「まあ、エルハイミに好きなようにすればいいと思うわ。二人のイチャつきが見れないのはつまらないけど」
「シェル、覗き見るものではありませんわ! この事は絶対にティアナには内緒ですわよ!!」
シェルは「わかった、わかった」と言いながら手を振りポーチから食料を引っ張り出す。
そして真顔であたしに話しかけてくる。
「急がないとやはりだめね。この階にも食べれる物があると思ったらゴーレムしかいない。もってあとひと月よ」
「やっぱりそうですの。既に水を多めにしたものでお腹の足しにはしていましたがあとひと月で何とかしなければですわ」
イオマには内緒にしていたけど実は食料がやばくなっていた。
上の階のように食べれる物がこの階には全くない。
お金になるミスリルはゴーレムを倒せば沢山有るというのに。
「しかし一つだけ分かった事も有る。ゴーレムのいる方へ行けば確実に奥に進めていると言う事だ。いない方は行き止まりか元の道に戻ったりしていたからな」
ショーゴさんが剣の刃こぼれの様子を見ている。
確かにショーゴさんの言う通り、ゴーレムがいる方に行けば奥に進んでいるようだ。
上の階と同じくらいならここも最短を通れば二ヵ月くらいで下への道が見つかるかもしれない。
「とにかく進めるだけ前に進めるしか手はありませんわ。ここから戻っても『試練の道』を逆走できる保証もありませんわ」
一番怖いのは戻っても上の階に行けない事。
あの『試練の道』は特別だからその可能性も考えておかなければならない。
「ふう、早いところここを抜け出して新鮮な果物をお腹いっぱい食べたいわ」
シェルは背伸びしながらそう言ってあたしに食材を渡して来る。
あたしはそれを受け取り料理しながら思う。
もう充分ウエストは元にもどった。
でもこれ以上痩せるつもりは無い。
早いとこ何とかしなきゃと思うのだった。
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