第156話6-28卒業

 6-28卒業



 あたしたちは最後の制服を着こむ。


 

 本日あたしたちは晴れてこの魔法学園ボヘーミャの卒業となった。


 式典に出席する為にいつもの制服もきちんと奇麗にしてのりも効いている。

 胸にお花のブローチをつけて心なしか背筋もピンと伸びてしまう。


 ほとんどの者が中等科での卒業が多いけど高等科も数少ない卒業生はいる。

 その中にあたしたちも含まれるのだけど、ほんと少ないなぁ。


 「これでこの制服も着収めかぁ。結構動きやすくて気に入ってたんだけどねぇ~。」


 成長著しいティアナは胸元がだいぶきつそうだ。

 初めてこの制服にそでを通してから何回成長の為にサイズ交換した事か。

 それも今日で終わりである。


 「今後は私服ですわね。そうすると毎日がちょっと面倒ですわね。」


 「制服は楽ちんだものね~。ま、仕方ない。それよりそろそろね?アンナ、ロクドナルも準備は良いかしら?」


 「はい殿下、こちらは準備万端です。」

 

 「こちらも大丈夫ですぞ。」


 「ん、じゃぁ行きましょうか!エルハイミ!いこっ!」


 「はいですわ!ティアナ!!」


 あたしたちは式典に向かった。



 * * * * *



 式典はつつがなく済んだ。


 特に悪そうな令嬢が客観的にざまーみろとか、婚約破棄とか中等科の首席争いで陥れの様事も無く平穏無事に終わった。


 最後に師匠、学園長の卒業生に対するお言葉をもらっていよいよ閉幕。

 終業認定書を手渡されとうとうあたしたちはこの学園を卒業した。




 あたしたちが会場を出ると在学生の女の子たちがあたしたちに詰め寄ってきた!?



 「エルハイミさん卒業おめでとうございます!!是非そのブローチを私に!!」


 「いえっ!エルハイミお姉さまのブローチは私のモノよ!!」


 「何を言うの!そのご利益が一番必要なのはわたしよ!!」



 わいのわいの!!



 「なに?エルハイミ他の女の子からそんなに人気あったの!!?」

 

 「これは意外ですな、エルハイミ殿には殿下がおりますのに。」


 「エルハイミちゃんは可愛いですからね。それに陰ながら結構みんなにも気を配っていましたしね。」



 ええ?

 何それ!?


 ちょっと驚くあたし。

 お姉さまって言われても寄ってきた女の子だってあたしと同じかそれよりちょっと上な感じもするけど。

 あたしはうろたえながら言う。


 「ブ、ブローチですの?」


 「はい!是非とも私に!」


 「いえ!私こそ頂くにふさわしい!」

 

 「何を言うの?私の方が必要なのよ!!」



 あたしってそんなに人気あったの!?ざっと見るだけで十五、六人はいる。



 ちらっとティアナを見るけど、特に怒っている様子は無い。


 「でもあなたたち、わたくしの様な者のブローチを欲しがるなんてどういうことですの?」


 純然と好意と思って聞いてみる。

 すると・・・



 「「「「育乳の魔女と名高いエルハイミさんのご利益になんとしてもすがりたいのです!!!」」」」




 はいっ!?




 「見てください!ティアナ姫のあの胸!!噂ではエルハイミお姉さまのおかげでああなったとか!!」


 「いえ、私が聞いた話ではエルハイミさんは人間以外でも女性型であればその気になれば何でも胸を大きく出来るそうよ!」


 「確かに!エルハイミさんの周りにいる女性はみんな胸が大きくなっていく!きっとそこのエルフもそのうちエルフにあるまじき巨乳に!!!」



 ちょっとまて、なんだその「育乳の魔女」って!!?

 しかも人を見境なく周りの女性を大きくするみたいに!!



 「あ、あのねですわね皆さん?」


 「本当はもっとお近づきになってあたしも大きくしてもらったのですが、勇気が無くて・・・」


 「先輩にあたるエルハイミさんはいつもお忙しい様子だったので。」


 「お、お姉さまにはティアナ姫がおりますから・・・陰ながら応援は致します、しかしご慈悲を!!」


 ティアナを見るとケタケタ笑っている。


 

 あたしは無言で胸のブローチをむしり取り明後日の方向へと投げ飛ばす!!!


 「そおぉーーーーいぃぃぃ!!!!」


 ブローチに群がる女の子たち!!


 あたしは無言で踵を返してティアナに言う。


 「ティアナ、行きましょうですわ!!」


 ティアナは相変わらず笑っている。

 

 

 思わず歩くのが力強くなってしまう。

 が、あたしは会場の先の鑑賞樹の幹に背をもたらせこちらを睨んでいる人物に気付く。


 ゴエムだ。


 彼はあたしと目が合うとちっ!と言って何処かに行ってしまった。




 多分ホリゾンの留学生や一般市民は知らないのだろう、自分たちの国が本当はどうなっているのかなんて。


 学園都市ボヘーミャは中立の立場ではあるものの各国の支援で成り立っている。

 表と裏の面が有るのは仕方ないとしてもここボヘーミャではホリゾンの変な噂は聞かない。

 ゾナーが嘘を言っているとは思えないからやはり知っているのは一部、しかも上層部に限られるだろう。


 まだ気付いたのはほんの一部と言う事か。


 「エルハイミ?」


 考え事をしていたらティアナが呼びかけてきた。


 「エルハイミ、とにかく今日はお祝いよ!大使館でフィメールがお祝いの準備しているって!」




 ティアナに手を引かれながらあたしたちは学園を後にするのだった。    

 

 

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