第六章
第129話6-1師匠のお出かけ
6-1師匠のお出かけ
新学期が始まりバタバタする日々が落ち着きをし始めたころ、あたしたちはいよいよ精霊都市ユグリアに向けて出発することになる。
「あー、もう少し右、そうそこです。」
「師匠、なんでこんなにこってるんです?」
「お茶入りましたわ~。」
あたしたちは今師匠の私室にいる。
以前にもまして和風テイストになっており、畳や障子はもちろん壁もそれっぽく改装されている。
最近はお花を飾るスペースや習字を飾るスペースまでできている。
かこーん!
障子を開けると小さいながらも庭園が広がっておりししおどしが良い音を立てている。
あたしたちが修行していた時には日本庭園なんてなかったのにいつの間に?
「ご苦労様です。ああ、だいぶ楽になった。」
師匠の肩をもんでいたティアナはあたしがお茶を入れてくると按摩を終えこちらに来てきれいに正座をして一緒にお茶を飲む。
師匠もお茶をすすってからあたしたちを見る。
「ふむ、姿勢もよろしいしお茶の頂き方も忘れてはいないようですね?合格としましょう。」
「あ、あの師匠もし不合格の場合は?」
「もう一度ここで叩き直してあげます。」
うっ!
ティアナとあたしは一瞬びくつく。
今はいろいろとあるので出来ればそれは遠慮願いたい。
「さて、明日には出発しなければなりません。先方にはすでに連絡済みなので八大長老には連絡が行っています。」
師匠はお茶をもう一度すする。
そしてティアナを見る。
「と、時にティアナ、あなた最近成長しているのですか?」
師匠はティアナの胸を凝視している。
あたしたちは赤くなりながら乾いた笑いをする。
「え、ええと、師匠成長と言うのは、そ、その胸の事ですよね・・・?」
「せ、成長期なのはわかりますがこのひと月で急激に大きくなっているのですか??」
「え、ええ~と、ま、まあ成長期なので。」
あたしたちは真っ赤になりながらあはははっと乾いた笑いをする。
『まあ、毎晩お楽しみなら少しは大きくなるわよね。昨日の夜もだいぶお楽しみだったみたいじゃない?』
シコちゃんに言われてびくっとするあたしとティアナ。
このひと月、確かにティアナは成長を始めた。
たったひと月でこうも効果が出始めるとは・・・・
あのティアナが一気にあたし越えを果たしたのだ。
では何が有ったか?
・・・お願い、恥ずかしいから聞かないで!!!
二人して真っ赤になりながら頭から湯気を出している。
「ま、まあティアナは大きくならないと問題が有るのでしょうからよい事でしょう。何をしていたかは聞きませんが、二人ともほどほどにしておきなさい。」
バレバレである。
あたしたちは更に赤くなって二人して下を向いてしまう。
そんなあたしたちに話題を変えるため師匠はお茶をすすってからあたしに聞く。
「時にゲートの使用は私一人くらいの追加なら問題無いと言っていましたが、もう少し荷物が増えても大丈夫ですか?」
「ええと、どのくらいでしょうかしら?」
「一升瓶が八本です。長老たちにお土産としてどぶろくを贈呈しますので。」
そう言って師匠は手元にあった籠のふたを開ける。
そしてそこからとっくりを出す。
設樂焼の狸が持っていそうな大きいやつである。
そしてぐい飲みを三つ出しそこへどぶろくを注いでいく。
「あなたたちの年齢なら一杯くらいなら大丈夫でしょう?味見です。」
そう言ってあたしたちにぐい飲みを差し出す。
いいのかな、飲んで?
十一歳の体がアルコールに勝てるか疑問だけど、一杯くらいなら大丈夫かな?
ティアナは既にそのぐい飲みを受け取り中をのぞいている。
「師匠、なんか甘い香りがしますね?それにしても何ですこれ、白く濁っていてとろみがある?ワインと違ってずいぶんと濃厚そうですが?」
「これはどぶろくと言ってお米を発酵させて作った私の国のお酒の一種です。比較的甘くて女性にも飲みやすく発酵しないモノはおとそと呼ばれる飲み物になります。」
師匠はそれの香りを楽しんでから一口飲む。
「ふむ、良い出来です。発酵も頃合いで一番いい状態ですね。」
あたしたちはつられてそのどぶろくを一口飲む。
すると途端に口いっぱいに甘酒のような味わいにフルーツを入れたかのような香りが鼻腔をつく!?
何これ!?
生前にも口にしたことのないようなおいしさ、まるでメロンみたい!?
しかも甘みが強く、まさしく甘酒じゃないの?
しかし、後口に残るアルコールの味わいがそれをお酒だと認識させてくれる。
「し、師匠なんですこれ!?お、おいしい。」
ティアナが驚いている。
果実酒とは全く違う甘みと香り。
穀物由来のそのうまみはこの世界の住人でも十分においしいと感じるだろう。
「濁り酒ですが純米無濾過中どりと言う一番おいしい部位です。これには火を通していませんから早く飲まないと味が変わってしまうという非常に貴重なお酒です。」
なんと純米酒!!?
そんな高級品生前でもめったにお目にかかれないというのに!!
あたしはそれを味わってもう一口。
ほど良い甘みとさわやかな香り、それでいて濃厚な舌触りで染み込んでいくそれは絶品!
「し、師匠もう一杯いただけないでしょうか?」
すでにぐい飲みを空にしたティアナがおずおずとぐい飲みを師匠に出す。
「ええ、良いでしょう。むしろこれだけは私としても今晩中に飲んでしまおうかと思っていました。時間が経てばこの旨さは無くなってしまいますからね。しかし、そうなると何か肴が欲しくなりますね。」
「師匠、私が何か作ってきますわ。お台所お借りしますわ!」
「ああ、それなら昨晩からつけておいたカツオもどきもあります。エルハイミなぶり焼きは知っていますか?」
「確かつけておいた魚を軽く焼くやつですわね?知ってますわよ。では師匠それも作ってまいりますわ!」
流石師匠の所!
こういった和食の素材や食べ物が豊富だ。
あたしは急いで台所へ行って酒のつまみを作成していく。
そして出来上がったいくつもの料理をお膳にのせて運んでくると・・・
「そうなんれすよぉ~、エルハイミにしてもらうと気持ちよくてぇ~おかげで効果抜群なんれすよぉ~。」
「そ、そんなにいいのですか!?ひ、一人でするよりも!?そ、それでどんな感じですか!!?」
「ええぇとぉ~、昨日はエルハイミに揉んでもらいながら先の方を口でぇ~・・・」
「ティ、ティアナぁっっ!!そこまでですわぁぁっっ!!!!」
そこには出来上がっていた師匠とティアナがいた。
既に二人は顔を真っ赤にしてふらふらしながらティアナなんか「あ~エルハイミだぁ~」なんて言ってケタケタ笑っている。
『ねえ、あのお酒ってだいぶ強いやつなの?二人とも飲むごとにおかしくなってたわよ?』
シコちゃんがこの二人がおかしくなっていく様を教えてくれた。
そう言えば、おとそだってたくさん飲むと酔う場合があるって聞いたことあるし、火入れしてないお酒って確か日本酒よりずっとアルコールが強いって聞いたことが有ったわね・・・
「エ、エルハイミ、そんなに効果的なのですか!?そ、それって私にも効きますか!?私だってこっちに召喚された時は十六歳、まだまだ成長の余地はあるんです!」
「師匠!気をしっかり持ってください!!」
「わ、私だって頑張ったのに。毎晩自分で揉んだり知りうる限りのことをしていたのですよ!!ぐすっ!!」
師匠真っ赤な顔でお酒臭さまき散らしながら涙目でからんでくる!?
ま、まさか泣き上戸に絡み酒!?
「あははははっ!エルハイミが師匠泣かせてぃぁ~!」
けらけらと笑うティアナ!
こいつ笑上戸か!!
幸いお膳はもう他の所に置いているけど、何故あたしの服を脱がそうとするティアナ!!?
「あはははっ!師匠見てください!毎晩エルハイミにしてもらっているかりゃぁ、エルハイミより大きくなったんれすよぉ~!!!」
そう言って自分も脱ぎだす!!
さらに追加であたしの服もはぎとる!!
「ちょ、ちょっとティアナ!!駄目ですわ!!ら、らめぇえええぇぇl!!!」
「あなたたちだけ大きくなるなんてずるい!私も混ぜなさい!!」
そしてとうとう師匠まで脱ぎ始めた!!!
うきゃーっ!!
だ、誰かとめてぇぇぇぇっ!!!
「【状態回復魔法】っ!」
その声に魔法が発動して絡んでいた師匠とティアナが我に返る・・・・
「え、ええと、今回はこれでいいんですよね?」
そこには資料を携えたアンナさんが立っていた。
「あ、アンナさぁ~ん!!助かりましたわぁ~!!」
あたしは半裸状態でアンナさんにすがりよる。
「エ、エルハイミちゃん、これも誤解ですよね?ま、まさかみんなで不潔なことしてたんじゃないですわよね!!?こ、これ以上エルハイミちゃんが汚されるならいっそ私が・・・」
ひっ、ひえぇぇぇぇぇっ!
アンナさん何言ってんの!!?
「んんっ、み、見苦しいところを見せました。それでアンナ、どうしたのですか?」
うあっ!
師匠いきなりもとに戻って話しかけないで!
ギャップが激しいから!!
「え、えっと、明日の会議の魔術的資料です。」
そう言って渡された資料を師匠は軽く目を通す。
「十分です。これで技術面は説明ができます。さて、エルハイミ、ティアナ今日はもうお開きとしましょう。明日は朝から移動です。遅れないように。」
そう言って師匠はそそくさと片づけを始める。
一人ポカーンと半裸のティアナを引っ張ってあたしたちはいそいそと退出する。
* * *
「いやぁ、途中から記憶が無いのだけど、何が有ったの?」
「知らない方が良い事って世の中にはありますわ・・・」
『ま、あの酒飲むのはほどほどにした方が良いってことよね。面白かったけど。』
「エルハイミちゃん、本当にやましい事じゃなかったのですね!???」
アンナさん何も無いって!!
ただの酔っぱらいですって!!!
「何もありませんわ!!この人たちが酔っぱらってただけですわ!!」
くうぅぅ~。
あたしとティアナのお腹が同時に鳴る。
「なんかお腹すいた。」
ティアナの一言に何も食べずに出てきてしまった事を思い出す。
ああ、せっかく作ったごはん食べれなかった~!!!
部屋に戻って携帯食をかじるあたしたちだった。
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