第125話5-31大臣たちの良心
5-31大臣たちの良心
「と言う訳でバティックやカルロスでも出来そうな簡単なカードゲームを作りましたわ!」
あたしの前にガードが出来上がっている。
みんなでわいわいできる万能ゲーム、トランプカードゲーム。
これならば弟達でも簡単にできるし人数だって簡単に変えられる。
あたしは王道のババ抜きのやり方を教える。
二枚あるジョーカー一枚を抜き取ってからシャッフルして弟たちに配る。
そして同じ札を捨てさせてから順番を決めゲームスタート。
相手のカードを抜き去るときにその表情やわずかな動きでババかどうかを見極める。
何度かやっているうちに要領を覚えた弟たちがはしゃぎ始める。
「姉さまこれすごく面白い!」
「うう、またババだ!姉さまもう一回!!」
何度かやっているうちに他の人も寄ってきた。
「エルハイミちゃん、何をしているのですか?」
「あ、アンナさん。新しいゲームを弟たちに教えているのですわ。」
「ほう、新しいゲームじゃと?」
将棋をやっていた爺様が丁度終わったので興味を示してロクドナルさんとこちらに来る。
「カードでありますか?」
この世界にはトランプは無い。
ただ、身分証明書などでカードなんかはある。
このトランプはちょうどそのカードと同じくらいの大きさだ。
「ババ抜きっていうんだよ、姉さまが教えてくれたの!」
カルロスは爺様たちに何をやっているか得意げに話す。
「それほど難しくないルールですわ、皆さんもやってみますかしら?」
あたしの提案に爺様、アンナさん、ロクドナルさん、そしてマース教授まで参加してきた。
「ルールは先ほど教えた通りですわ。最後にババのジョーカーが残った人が負けですわ。」
そう宣言して順番を決め、始める。
しばしやっていくうちにジョーカーが誰のもとにあるか分かってしまうリアクションがしばし。
しかしそれが逆に次のプレーヤーにプレッシャーをかけなかなか白熱したゲームになった。
「ふむ、このままでは負けてしまうと言う訳ですか。さて、エルハイミ君私からさっさとジョーカーを引き抜くがいい。」
「マース教授、それはルール違反になってしまいますわよ。それにもしマース教授の手元に私が欲しいカードがあれば私は上がりですわよ!」
そう言ってフェイントをかけながらカードに手を伸ばす!
するとポーカーフェイスのはずのマース教授の口元がわずかに動く!?
あたしは引き抜く瞬間他のカードにチェンジ!
「くっ!」
「マース教授、残念でしたわ!これで私の勝ちぃ・・・・・い?」
「優秀な生徒は時に優秀過ぎて墓穴を掘ると言う事だよ、エルハイミ君。」
マース教授はニヤリと笑う。
あたしが手にしてたのはジョーカー!
くっ!
読みが災いしたか!!?
「こうなったら、アンナさん勝負ですわ!!」
わいのわいの。
その後他に神経衰弱や七並べ、ちょっと難しいけど大貧民、ポーカーとかのやり方を教えるとみんな大はまり!
時間が経つのも忘れてカードゲームに没頭し始める。
途中トランプが足らない事態が発生して急遽あたしが【創作】魔法を使って追加で二つも作る羽目に。
みんながわいわいやっているけどティアナたちは未だに何か話している。
あたしはちょっと怖くなってそちらに行ってみる。
* * *
「では、私がエルハイミに子供を産ませる方法を見つけ出せば私たちの事を認めていただけるという事でよろしいのですね、お義父様、お義母様!?」
「あらあらあら~、私はそれでもいいわよ~。ねえ、あなた~。」
「い、いやしかし殿下、仮にも王族の貴女の伴侶が我が娘と言うのは世間体的にもまずいのではないでしょうか?」
「大丈夫です。王族と言っても王位継承権なんて末端も末端、何ならお爺様にお願いして二人でガレントの無詠唱の使い手の防人と称し、このユーベルト近郊に屋敷を構えることも可能です!お呼びがあれば私たちの子供をすぐにでもお連れいたします、お義母様!!」
おいこら、なんて話しているんだ!!!
既にティアナの目はぐるぐる巻きの渦が瞳を覆っている。
顔だって興奮の為赤くなったままだし、頭上ステータスが「色欲、混乱」になっている。
パパンの頭上には「混乱」のステータスが浮いているし、ママンの頭上には「孫」の一文字だけ浮いている。
あたしの目の錯覚じゃないような気がするのが怖い。
「何のぉ~お話をしているのですのぉ~!!?」
「エ、エルハイミ!ねえ、お願い、あなたからもお義父様、お義母様に言って!」
「エ、エルハイミ、本気なのか?いいのか?そりゃぁお父さんも変な男にエルハイミを持っていかれるよりは殿下の下の方が安心ではあるが・・・」
「あらあらあら~、お母様は早く孫の顔が見たいわぁ~。」
あたしは盛大にため息をついて人差し指を立てながら説教する!
「いいですかしら?まずは私たちにはやらなければならないことが山ほどありますわ!それにティアナ、私たち云々の前にホリゾンのゾナーとの勝負に勝たなければそれどころではないでしょう? お父様もお母様も、私はまだ成人しておりませんわ!まだまだお嫁に行く事なんてこれっぽっちも考えていませんの!そもそも私はまだ子供が産めるような体ではありませんの!!お母様、孫の顔なんてまだまだ先の話ですわ!!」
ぜぇぜぇ。
本当にこの人たちときたら!!
「うっ、わ、分かっているわよエルハイミ。でもこんなチャンスめったにないんだから!」
何のチャンスだよ!?
「そ、そうだな、お父さん気が動転していたよ、そ、そうだよなエルハイミにはまだまだやることもいっぱいだし、結婚なんてまだまだ先の話だよな!!」
やっと混乱のステータスが解除されたか、パパン!?
「あらあらあら~、そうね、急いでもまだエルハイミが準備できていないのじゃいくら頑張っても孫の顔はすぐには見れないわねぇ~。」
何を頑張るんだよ、ママン!!?
あたしは頭を軽く振って、パパンに近況状況を聞く。
「お父様、そんなことよりマシンドールの生産はどうなっていますの?二百体以上はもう出来上がっていると思いますがその後に双備型換装でパーツの追加注文も来ているはずですわ。今は黒の集団改め秘密結社ジュメルが強力なキメラ怪人をはびこらせ組織的な行動を始めていますわ。ガレントだって早急にマシンドールを中心にした部隊編成を行わないと彼らの襲撃に耐えられないかもしれませんわ!」
するとパパンはまじめな顔になってあたしに答える。
「確かに報告は聞いている。わがユーベルトもそう言った意味では引き続きマシンドールの予備パーツ生産や双備型の改良パーツの生産に大忙しだよ。」
そう言ってパパンは懐から一通の手紙を出す。
「これは王都からの連絡だが、どうやらそのジュメルとかいう連中世界各国で行動を始めたらしい。」
「!?」
世界各国だと!?
と言う事はこれはガレントだけの問題ではなくなっている?
「実際にホリゾンからもガレントへ連絡があり、ホリゾン国内でも被害が出たそうだ。今は情報提供を要望されているらしく宮廷会議でもめているそうだ。」
「ホリゾン帝国が背景にいたのではないのですか?」
パパンは首を振り、言い加える。
「勿論当初はホリゾン帝国が背景にいると思われていたが、実際にホリゾンでも死人が出る騒ぎらしい。属国であったルド王国にも被害が出ているらしからな。」
あたしは衝撃を受ける。
どうやら秘密結社ジュメルの認識を変えなければならない。
母体であるはずのルド王国やホリゾン帝国に牙をむくなんて通常は考えられない。
しかも世界各国で被害が出始めると言う事はあたしたちの知らない巨大な勢力が存在することになる。
普通の人があんなキメラ怪人相手になんかできっこない。
ショーゴさんの体に埋め込まれていた魔晶石核がどういったルートであいつらの手に入ったかは定かではないけど、多分キメラ怪人のコアにも使われているんじゃないだろうか?
あたしは驚きを隠せないでいた。
「エルハイミ・・・」
ティナが心配そうにあたしを見る。
「そうだ、殿下昨日早馬で王都から殿下に荷物が届いておりました。どうも大臣たちからの様です。」
「はい、ありがとうございます。」
そう言ってティアナは荷物を受け取り開け始める。
木箱に入ってそれのふたを開け、中に入っていた手紙だろうか?
ティアナはそれを見て眉間にしわを寄せる。
もしかしてジュメルの資料か何かか!?
「ティアナ?」
あたしがティアナの名を呼ぶと眉間のしわに指をあてながらその手紙をあたしに渡してくる。
そんな、ティアナが表情を曇らせるような知らせ?
あたしは慌ててその手紙を読む。
『拝啓、ティアナ殿下。秘蔵の書を入手しました。我ら大臣一同納得のいくものです。どうぞご徴収ください。』
はぁ?
なんの秘蔵の書だ?
あたしはティアナの手元の箱の中を覗き込む。
『これであなたも巨乳!三か月間でバストを大きくするハウツー指南書!』
あたしの脳裏に親指をサムズアップしてドヤ顔の大臣たちが浮かび上がる。
ぺしっ!
あたしが手紙を床にたたきつけたのは言うまでもないだろう・・・・
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