第86話4-23相談
4-23相談
四連型魔晶石核。
それは下級精霊で四大元素となる地、水、火、風を魔晶石に融合させ各魔晶石核を同時共鳴させ循環系をなし破格の性能を引き出す機関。
実現すればかなりのものになると予想される代物。
そんな夢のような機関を作るために今この開発チームは動いている。
「しかし、問題ですな。この部屋だけでは小さいし、開発に携わる人員の足りない。」
ジャストミン教授はそう言いながら他の邪魔な機材を片付けている。
「だが、これが成功すればかの『賢者の石』に匹敵するやもしれないのですぞ?」
マース教授も程度の悪い魔晶石原石を袋に詰めている。
「もし成功したら精霊たちの声がもっと聴けて何を考えているのかもっと理解できますよ!」
にこにこしながらソルミナ教授もいろいろと片付けを手伝っている。
「うーむ、これは一度学園長にもお話しなければならんでしょうな。」
ゾックナス教頭は分厚い本を机の下から引き出して整理している。
ここ開発チームのいる部屋はもともと研究棟の一角にある使われていなかった部屋だ。
隣には別の教授たちの研究室があったりしてまさしく魔道最前線の場所である。
ただ、部屋自体がすごく大きいというわけではなく、前世の小中学校の教室くらいしかない。
これに隣接している準備室のようなものがあって、ここが物置になっている。
今回この開発チームはガレント王国の双備型魔晶石核の下請け生産も兼ねているので、結構モノがあふれている。
量産機の生産自体は徐々に進んでいるので、貴重な学園の収入源にもなっている。
しかし、さらなる研究をするとなると流石に手狭になってくる。
「理論上では四連になると循環スピードと相互スパイラルが強まって未知なる力が発生する可能性もあります。」
アンナさんの魔術方程式の算出ではその魔力発生量がなんと無限大と算出される。
まさに夢の機関なのだが、本当にそううまくいくのかな?
ちょっと疑問なあたし。
あたしは今、ティアナと一緒にテキパキとお掃除をしている。
うん、見えないところの埃も一網打尽よ!!
「ほんと凄いですね、殿下もエルハイミちゃんも、お掃除がすごく手際が良い。エルハイミちゃんなんかお料理も得意になっているし、お嫁さんに欲しいくらいです。」
笑いながらアンナさんがそんな冗談を言っている。
まあ、アンナさんの実態を知っているとうなずけるよなぁ、意外とだらしないというか、研究に没頭しちゃうと食事もお風呂も忘れるからなぁ。
「はっはっはっ、本当にですな。エルハイミ殿なら私が嫁に欲しいほどですぞ。」
っっな”っ!!!?
冗談のはずのロクドナルさんの発言に何故かあたしは ぼっ! と顔が真っ赤になってしまい頭から湯気が出てしまう。
「なななななななっ、何を、い、言っているのですののの!!!」
なんか言葉も変になってしまう。
「ダメに決まっているじゃない!!エルハイミはあたしのだもの!エルハイミはあたしの嫁よ!!!」
なんかティアナまで参戦してきている。
周りから笑い声が上がり、しばしこの話題でいじられるあたし。
最後にはマリアがロクドナルさんの嫁になる騒ぎしているし。
しばらくして開発チームの部屋はだいぶ片付いた。
しかし、量産機分のスペースを考えるとやはり狭い。
「仕方がないですな、学園長に私から相談に行って来ましょうかな。」
そう言ってゾックナス教頭は席を立った。
数日後、今度は引っ越しが決まった。
なんと学園長は最近作っていた建物丸ごと開発チームに使わせることにしてくれたのだ。
理由は二つ。
今後の開発を研究棟でやるには手狭だったと言う事が一つ。
これは今回のように下請け生産のよる学園の収入増加も考えての事。
それに何かある毎に爆発されてはかなわないと言う他の研究者や教授からの苦情もあったらしい。
あれはイレギュラーよ!!
ちゃんとその後いろいろ直したからいいじゃない!!
ちょっとトラウマなあたし。
もう一つの理由は今回の四連型魔晶石核の効能が絶大で、理論値では測りきれない魔力の発生が期待できるのだけど、実はアンナさんが内緒に教えてくれたもう一つの可能性に師匠は反応したのだ。
それは無から無限の魔力を生み出すのは不可能だけど、この機関が相互スパイラル、つまり渦巻のような回転をしながらその力を急速に増すとその運動エネルギーが魔力を発生するという理論。
では本当に無限に魔力が発生するのか?
そんな都合の良い話はないはずである。
アンナさんの見立てでは、女神様や始祖なる巨人に起因しない別の所からスパイラル効果で魔力が引き寄せられるのではないかと言う事だ。
それは何処からかと言えばズバリ異世界。
意外な話、魔法とは等価交換で成り立っている。
百あるもので百の分の効果しか出せない。
かの「賢者の石」ですら蓋を開けてみれば女神アガシタ様の一部で、使い切ったら無くなっちゃうんだからやっぱり有限なのだ。
ただ、伝説にもあったように膨大な魔力を秘めていたので人間からしてみれば無限に感じるだろうけどね。
まあ、同調出来たり心眼開いた人たちはズルして近くのマナを魔力にして使かちゃっているけど、やっぱりマナがなけりゃ何もできない。
とかくこの世は良く出来てます、ってことかな?
あたしなりにも考えたのだけど、異界からの召喚ってなんで昔そんなに簡単にできたのだろう?
今はレイム様の様子を見ているといろいろと都合が悪いから女神様が回収命令出しているみたいだけど、あたしみたいな異界からの転生者だってもしかしたら他にいるんじゃないだろうか?
どうもその辺がよくわからない。
ま、今は考えても仕方ないので手前のお片付けするのが最優先なんだけどね。
そんなわけで新しい建物へ行くと、なんじゃこりゃ!?
試験場に二階建ての建築物が合わさったようなまさしく前方後円墳!?
「来ましたか。ここでなら思う存分開発が進められるでしょう。」
先に来ていた師匠はあたしたちを見るとそう言って笑った。
その笑いには大いに期待していますわよと言っているかのようだ。
「学園長、本当にここを使ってもよろしいのですかな?」
ゾックナス教頭が建物を見ながら師匠に聞いている。
「もちろんです。もともと各国の開発依頼は受けていたのですが、最近のモノは大掛かりな研究を要するものが多い。今後のこともあります、あなたたちの過激な研究にはピッタリな場所だと思いますよ。今回はメテオストライクがあったってもびくともしませんからね。」
師匠、それ核シェルター以上よ!!
唖然とするあたしたちに師匠は笑って、「期待しています。」とだけ言って立ち去ってしまった。
ああ、やっぱりかなり期待してるんだなぁ。
頑張らなくっちゃ!!
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