第85話 4-22開発チーム
4-22開発チーム
久しぶりに開発チームの部屋に行ってみる。
最近はいろいろとあって忙しかったのでこちらに足を運ぶ機会が少なくなっていた。
そう言えば数か月前からソルミナ教授も開発の研究に参加しているそうだ。
精霊のエキスパートが参加したので量産にも目途が立ってきたらしい。
良きかな良きかな。
あたしは開発チームの部屋について扉を開けるとそこはすごいことになっていた。
「エルハイミちゃん!ちょうどいいところに来ました!!サラマンダーがそっちに逃げたので捕まえてください!!」
「イヤヤワー!ミズノセイレイトナンカヤッテラレヘンワー!!」
ええっ!?
魔晶石核が勝手に飛び回っている!?
緑色の光に包まれていた部屋はサラマンダーの意志が直接頭の中に聞こえてくるのだけど、今まで魔晶石核が飛び回ることなんて聞いたことない。
あたしは同調してすぐさまその動きを見切ると魔晶石核をキャッチする。
「捕まえましたわ!」
「ホンニカンベンシテクレナハレ、ゴショウヤカラ!」
相変わらず嫌々する魔晶石核を見る。
「何をそんなに嫌がっているのですの?」
「アノアネーチャン、ワイヲミズノセイレイトイッショニシゴトサセルツモリヤ!」
見ると双備型魔晶石核の片方にもう一つ水色の光を点滅させている魔晶石核がある。
「うふふっ、サラマンダーさん、そんなに痛くはないわよ、ちょっと実験なんだからすぐ終わるわよ。」
怪しい顔したソルミナ教授がいる。
「痛いのは最初だけ、すぐに良くなるわよ~。」
なんか怪しいこと言ってるけど、この人大丈夫か?
あたしは一番話が分かりそうなアンナさんに向かって事情説明を求める。
「今までは同族での共鳴による効果でしたが、別種族同士での共鳴が可能かどうかの実験をしていたのですよ。」
そう言ってアンナさんはあたしの手から魔晶石核を受け取る。
「ヤメテェー、カンニンヤー!!」
「うふふ、さあ行きますよ~!!」
ソルミナ教授はそう言いながらサラマンダーの魔晶石核を双備型魔晶石核に取り付ける。
「カンニンヤァー!!」
と、とたんに緑色の光が引っ込む。
なんとなくサラマンダーの悲鳴が聞こえたような・・・
見ると双備型魔晶石核は沈黙している。
いや、よくよく見ると緑色を消して水色になった普通の魔晶石核だけいる。
あたしは同調してマナと魔力の流れを見てみる。
と、完全に単体での運転しかしていない。
しかもサラマンダーの方は完全に消えていて、ただの魔晶石の原石に戻っている。
「あの、これってサラマンダーが霧散しちゃってるんじゃないですの?」
可哀そうに、サラマンダーの気配は全く無い。
「あら、本当だ、せっかく非同族での共感で何しゃべるか楽しみだったのに、残念ですね。」
ソルミナ教授元の魔晶石原石に戻った石をつついている。
「それで、どうなんだねソルミナ教授?」
奥に座っていたマース教授はいくつかの魔晶石原石を並べながらソルミナ教授に話しかける。
「はい、マース教授。教授の言うように原石の選定も重要ですね。サラマンダーにつかった方は霧散しましたがウンディーネの方は残りました。やはり北の原石の方が良いようです。」
どうやら材質での変化も研究しているようだ。
最近は安定して双備型魔晶石核が作れるようになっていたので、さらなる強力なものが作れないか試行錯誤しているところだった。
本来はアイミの魔晶石核を作りたいところだけど、あれは格別で、上位精霊が必要だ。
通常じゃ上位精霊なんか召喚できないもんね。
「ところで、アンナさんガレントの方はどうなんですの?」
「マシンドールは生産予定数完了したと聞いています。今は初期の子たちのバージョンアップを始めているそうですね。」
「初号機も元気でやっておりますかな?」
実はあたしと一緒にロクドナルさんもくっついてきていた。
初号機には思い入れがあるんだろうなぁ。
そんなことを話していたらティアナたちがやってきた。
「エルハイミ、師匠が差し入れですって!」
ティアナが持ってきた師匠の差し入れというものをサージ君がお茶と一緒にみんなに配る。
「ほう、学園長からの差し入れか。学園長はたまに珍しい食べ物を提供してくれるからのお、楽しみじゃ。」
ゾックナス教頭はそう言いながらサージ君が配ったお茶請けを見る。
「・・・?」
「なんなんでしょうな、この黒い塊は?」
「なんとなく表面はみずみずしいですが、学園長のおつくりになるものはいつも不思議なものが多い。」
マース教授もジャストミン教授もしげしげとそれを見る。
頭使うときには糖分が必要と聞いたことがあるので、これは最適だと思うんだけどね、あたしは。
この黒い物体の正体はようかんである。
こっちの世界には小豆があったので、つい先日もお赤飯炊くのに使ったからあたしはすぐに分かった。
これを緑茶と一緒にいただくとおいしいんだよねぇ~。
「エルハイミ、これって食べ物なの?」
マリアがツンツン突きながらその指をなめる。
「うあっ!甘い!!」
「甘いのですか?それは楽しみですね!」
意外と甘党のアンナさんが反応する。
「では、いただくとしますかな。」
ゾックナス教頭の声でみんな食べ始める。
「!!っ」
「あっまぁ~い!!」
アンナさんやソルミナ教授も声を上げる。
あたしとティアナはいただきますと言ってから姿勢を崩さずそれを口に運ぶ。
とたんに和の甘さが口いっぱいに広がる。
そしてその甘さをすがすがしい緑茶で流し込む。
すっと甘さが引いて口の中をリセットしてくれる。
「これはいいですな、いや、この学園長がよく飲んでいるグリーンティーに合う。」
甘いのはあまり好きでなかったはずのマース教授が絶賛している。
そうでしょう、そうでしょう、和菓子と緑茶の組み合わせは最強なのだ!
「流石、師匠。甘さと苦さで調和を取る和みの境地!」
ティアナが感心している。
そうなんだよ、それなんだよねぇ~。
和むのだよ。
「それです!!」
アンナさんがいきなり席を立つ。
「ソルミナ教授、異種共鳴はやはり種族間の得手不得手が顕著に出ます。しかしすべての種族を同時に共鳴させたらどうなるでしょ?」
「全てと言うと、サラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノームを一度にですか?」
「得手不得手のサイクルが一周するはず、つまり調和がとれるのではないでしょうか?」
アンナさんの言葉にソルミナ教授はしばらく考え込んで、そしてみんなを見渡す。
「面白い、それはぜひやってみましょう。もしかすると今まで以上に共鳴サイクルが活発化するかもしれない!」
もごもごとようかんを咀嚼していたあたしはふと思う。
一度にあの子らがしゃべりだしたらどうなるのだろうと。
そしても当然のようにあたしも巻き込まれ四連魔晶石核の開発が始まるのであった。
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