第77話4-14修行
4-14修行
本当の自分に気づいたあたしはその後も魂と体の同調を確実なものにするために毎日師匠の厳しい鍛錬を受けていた。
「エルハイミ、まだまだ甘いですよ!」
そう言って師匠の放った衝撃波をとっさに作った衝撃波で相殺しようとしたら衝撃波と同時に師匠が飛び込んできた!?
横からロクドナルさんの支援攻撃が師匠を襲う、しかしそれも読んでいたのか到達する前にロクドナルさんの前に土の壁がせりあがり行く手を阻む。
上からティアナが三十六式が一つピックの技で師匠に踵から全体重を乗せた鋭い蹴りで襲うが、それも読まれていて師匠は半身動いて刀の鞘でティアナの渾身の蹴りをなでるように軌跡を狂わせる。
ばこっ!!
軌跡を外されたティアナの蹴りは地面に穴をあけ膝近くまで埋もれる。
「くっぅ!!」
師匠の斬撃をあたしは寸前のところで【絶対防壁】魔法で受け止めるがそのまま弾き飛ばされる。
刀を振りぬいて一瞬止まった師匠にアンナさんが【雷撃】の呪文で攻撃をするけど師匠は慌てず刀を地面にさしてその雷撃を受け止める。
「まだまだですね。ロクドナル、攻撃をするときは瞬間に強化魔法をかけること、ティアナせっかくの技がマナの流れを見切っていないので簡単に流されてます、アンナ雷撃の魔法は物理的なものに阻害されます、もっと状況をよく見て使う魔法を選びなさい!そしてエルハイミ!!」
何とか吹き飛ばされた後立ち上がるあたしに叱責をする師匠。
「同調に頼りすぎていて基礎体力が足りなすぎます!学園のグラウンド二十周!!」
「ええっ!師匠、それはあんまりですわぁ!!」
「甘えない!あなたがこの中で一番体力がありません!走り込みは体力の基本中の基本、ぐずぐずしていると三十周に増やしますよ!」
あたしは慌てて走り出す。
あれから数か月が経ち、あたし以外にもティアナが同調を少しできるようになってきた。
もともとティアナは鑑定の時にも女神シューラ様とつながっていることは知っていたのでほんのちょっとのきっかけで同調ができるようになる。
もっとも、それを理解したり自分のモノに安定して使えるようにするにはまだまだ経験を積まなきゃならないけどね。
ぜぇはぁ、ぜぇはぁ・・・
あたしは息も切れ切れにグラウンドを走る。
「あら、ガレント所のエルハイミじゃない?」
グラウンドを走っていると見慣れた顔がこちらによって来る。
「ほんとだ、エルハイミ何してんのよ?」
見るとスィーフのイリナたちがやってきた。
「し、師匠に言われて基礎体力つくりのランニング中ですわ、はぁはぁ。」
「それ、ランニングだったの!?」
「あたしはてっきりゾンビか何かの仮装練習かと。」
「走ってるんだ、それ。」
「と言うか、普通に会話して徒歩のあたしたちと同じ速度のランニングって何なのよ?」
あたしの周りでスィーフの連中は好き勝手なことを言う。
あたしだってもっと速く走れますよ!
と言いたいけど既に体力は残り僅か、まさしくあたしHPは残り僅かよ!!て感じでかろうじて動いているわけ。
「あ、倒れた。」
残り三周であたしは倒れて意識を失った。
次に気づいたときにはあたしは学園の医務室で寝かされていた。
「おー、気付いたみたいだ、お姫さんもう大丈夫じゃないかい?」
「エルハイミ!よかった!!」
ティアナがだいぶ慌てている。
そう言えばあたし、ランニング中に倒れたんだっけ?
「軽い貧血みたいですね、もう大丈夫でしょう。」
アンナさんが隣であたしの様子を確認している。
「ま、なんにしても大事なかったんで良かったな。エルハイミもあんまり無理してお姫さんに迷惑ばかりかけてんじゃないぞ。んじゃ、あたしらは行くからね。」
そう言ってスィーフの連中は医務室を後にする。
「あ、イリナさん、ありがとうございましたですわ!!」
「いいって、いいって、じゃなっ!」
手をひらひらさせながら今度こそ彼女たちは去っていく。
あー、またイリナさんたちにはお世話になっちゃったなぁ。
「まったく、エルハイミはいつも無理しすぎるんだから!」
おこなティアナ。
うーん自分じゃそう言うつもりないんだけどなぁ。
でも体力が無いのは改めて思い知らされた。
「ごめんなさい、別に無理しているつもりはなかったんですわ。ただ、いつも気付くとこんな感じで・・・」
「まるで自分が頑丈な大男か何かと勘違いしているみたいね、エルハイミは!」
あれ?
そう言えばあたし今までの基準って生前の記憶をもとにしていたような・・・
とすれば、もちろん今のあたしと生前のあたしじゃ体力は天と地の差!
ああ、そう言うことか・・・
あたしは理解した。
そっちの方でも今まで彼に引っ張られていたんだ。
これはいろいろと見直さなきゃいけない問題だわ。
あたしは改めて「自分」と言う存在を理解しなおさなきゃいけない事に気付いた。
うーん、八歳の女の子ねえ。
ほんと、これってどうしたらいいのかな?
「あ、そうそう、師匠が後でエルハイミに来るように伝えてくれって言ってたわ。大丈夫?私も一緒に行こうか?」
悩んでいるとティアナが師匠の伝言を伝えてきてくれた。
呼び出しされた?
なんの用だろう?
「大丈夫ですわ、ティアナ。師匠の事だから私がちゃんとグラウンド走り切れていないのでお説教でしょうから。」
苦笑してティアナに言う。
ティアナも苦笑して乾いた笑いでそっかぁ、とか言っている。
ほんと、あの人こう言う所には細かいからなぁ。
翌日、あたしは学園長室に出向く。
師匠も忙しいはずなのにこういったお説教にはしっかり時間作るからなぁ。
気が重い。
しかしこのままでも行かないのであたしは扉をノックして出向いてきたことを伝える。
中から入るように声がかかり、あたしは室内へ入る。
「エルハイミです。お呼びがありましたので参りましたわ。」
見ると師匠はお花をやっている最中だった。
パチンっ!
花の茎を切る音がする。
「よく来ました。エルハイミ、いろいろ考えたのですが、貴女は女としての基礎がなっていない。なのでこれから私が『大和撫子』としての何たるかを教えることとします。」
「はぁ?」
『大和撫子たるもの、身なりはもちろんのこと常に毅然としなければならないわ。貴女も女としての自覚が出て来たみたいですから私が直接指導いたしますわよ。今後住み込みで私の所にいらっしゃい。女として鍛えなおしてあげますから。』
『えええぇぇっ!!?』
いきなり日本語で宣言される。
どういうこと?
師匠が何かに目覚めた?
あたしは有無を言わさず師匠に「大和撫子」の修行をさせられることとなった。
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