第55話3-30ミロソ島

3-30ミロソ島



 生徒会主催の合宿に参加した俺たちは学園都市ボヘーミャと貿易都市サフェリナの丁度真ん中あたりにあるミロソ島に来ていた。



 なんという事だ!

 それはまさしく絵にかいたような保養地!!

 空と海は青く砂浜には白く輝く砂が敷き詰められ、海の水は清く透明、椰子の木が生茂り島に点在する白い壁と赤い屋根の建物がまるで前世のヨーロッパ、ポルトガルのナザレのようだ。


 いやー、馬車で数時間、船で半日という距離にこんな素敵な島があるとはね!

 気分はすでにバカンスモード一色!


 「うあー、きれい!!」

 

 「噂には聞いていましたが確かに美しい所ですね。」


 「おお、確かにこれは我がガレントではお目にかかれない風景ですな!」


 みんなもその光景に喜んでいる。



 「きゃーっ!すごいきれいじゃない!!」

 

 「同じ水辺でもうちの国とはだいぶ違うわね」


 「あ、でも海洋生物はもうやだなぁ。」


 「やっぱ泳ぐ?泳ぐ??」


 キャイキャイとはしゃぐ声。


 今回の合宿には俺たち以外も結構参加している。

 特に留学生で自国がボヘーミャから遠い子は居残り組が多い。

 各国も魔導士杯参加のご褒美か、今回の合宿には結構参加させてくれている。

 先ほどのキャイキャイ騒いでいるのは第二戦目で戦ったスィーフチームの面々だ。

 その他にもサフェリナ、イザンカやユグリアの子たちまでいる。


 

 「はい、では皆さん宿舎であるアインシュ商会直営のホテルにご案内します。ついてきてくださいね。」


 そう言って下船したばかりの港から生徒会長は参加者を引き連れてすぐ近くにある大きな館へ誘導する。



 そこは港から徒歩五分くらいですぐ目の前は海が広がり白い砂浜が有る。

 南国風の館は数階建てで壁や屋根は他の建築物と同じだが所々にトロピカル感を漂わせてまるでタイの高級ホテルに足を踏み入れたようだ。


 「それでは皆さんに今後の予定をお話します。まずは皆さんにお部屋にチェックインしていただきましてから一度このホールに集まってもらいます。今後のスケジュールと特別企画参加者の募集をしますので。」



 ん?

 特別企画??

 なんだろね?



 そんなことを思っていたら部屋割りの話が来た。


 俺たちは当然女性陣と男性陣の二部屋を取るのだが、考えてみれば女子会のお泊りって初めてじゃないだろうか?

 ちょっと楽しみである。

 ロクドナルさんはお付のサージ君と一緒。

 なんかサージ君嬉しそうにしているが、大丈夫だろうか?息が荒い。


 アイミに荷物を持つのを手伝ってもらい、一同部屋へ。


 入って驚いた。

 ティアナが三人もいるから大部屋が良いって言ったので王族のプラチナカードをちらつかせ一番良い部屋取っちゃったよ!


 部屋はなんと三部屋もあって寝室、リビング、執務室と別れている。

 そして何より驚かされるのが広いベランダにプライベートジャグジーがあると言う事だ。

 この世界では場所によっては湯あみや水浴び、浴槽につかる風習は有ったけどジャグジーがあるの何て初めて見た。

 


 ぴこぴこっ!


 なんかアイミが騒いでる。

 見ると寝室の窓からは先ほどの砂浜と海が一望できる。

 

 「うわぁっ!すごいきれいですわぁ!!」

 

 思わず声が出る。

 同じビーチでも視点が高い所から見るとその雰囲気がガラリと変わる。


 「ほんと、きれいですね。」


 アンナさんもその風景を見て笑う。


 「なになに?そんなにきれいなの??」

 

 ティアナもこちらに来て窓からその風景を見る。

 海辺からやわらかい風が吹いてきて部屋に入る。

 窓辺に手をかけて外を見ているティアナにやわらかい風が吹きつけて、真っ赤な髪の毛を躍らせる。

 その髪の毛を耳の後ろに手でかき上げながら最高の笑顔でティアナは言う。


 「うん、すっごいきれい!エルハイミ、来てよかったね!」



 ズキューン!!



 うあ、なにこれ!?

 今の何!?

 俺は今までに感じたことの無い感覚に驚く。


 

 「え、ええ、そうですわね。」


 俺は窓の外ではなくティアナの顔を見ながらそう言った。






 しばらくして参加者全員がホールに集まった。

 生徒会長はそれを見て早速今後のスケジュールと特別企画を発表する。



 まず初日の今日はミロソ島の観光案内。

 島自体は徒歩で一日もあれば一周できるくらいの大きさで、漁業と観光で成り立っているとか。

 もともと漁村があったが、あまり裕福ではなく、アインシュ商会が島の位置とその環境に目をつけ、島ごと買い付け漁村の人々には島で生活をしてもらいながら観光事業にも従事してもらうこととなったらしい。なので島の住民全員が従業員と言う事になる。

 観光事業は成功し特にお金持ちから人気があり結構潤っているらしい。



 で、二日目は自由行動。

 おすすめは目の前に広がる砂浜で海水浴だとか。

 あまり海に馴染みのない人たちもこの砂浜は湾のようになっていて波が少ない。

 さらに言えば島民が徹底的に清掃、安全管理を行っているので湾の入り口には網が仕掛けられ危険な海洋生物は入ってこれない。

 しかもケガしやすい岩や小石まできれいに取られているので人口のビーチも顔負けな感じになっている。

 砂浜には適度に日陰になるように椰子の木や休憩場、出店なんかも完備されている。


 そして二日目の夜には特別企画の肝試し大会があるそうだ。

 以前この島、村の丘の上に貴族の館があったそうだが、いろいろと不幸があり今は誰も住まない廃虚となっているそうだ。

 そこへ行ってその屋敷の庭にしか咲いていないという花を摘んで帰ってくるというモノらしい。

 


  

 三日目は自然と一体になって学ぶサバイバル訓練。

 これは参加自由形であるが、用意された内容が海編では食料調達と称した釣り大会、山編では遭難時の食料調達や拠点の作り方、野営時の野生動物や魔獣からの身の守り方とこっちは結構役に立ちそうな内容である。




 そして四日目はこの島にある古代遺跡の迷宮探索。

 既に迷宮全てが探索しつくされ、中にいたモンスター駆除も終わり危険な仕掛けやら何やらは排除済み。

 たまたま出入り口が島の南北にあるので入り口と出口を決めて迷宮脱出ゲームがここの売りらしい。

 迷宮には別料金で冒険者風案内役を雇ったり、特別コースにはアトラクションが用意されていてモンスターと疑似戦闘が楽しめるらしい。



 うーん、お金持ちの坊ちゃん嬢ちゃんには受けそうだな。



 最終日の五日目はもう一度自由行動の日が設けられている。

 ビーチで遊ぶも良し、釣りしたり山の中でもう一度サバイバル実践するもよし、迷宮に入るも良しである。 

 

 一通り内容を聞いてから二日目の特別企画も参加するとティアナが言ってるので参加する事となった。



 本日はこれから島観光。

 と言っても、この辺の近くをぶらぶらするしかない。

 だってさっき聞いた話では島の住民たって五十人くらいしかいないらしい。

 賑やかなのもホテルの近辺だけらしい。

 

 とりあえずホテルを出て近くをぶらつくが、店なんか土産屋が二軒と飯屋が一軒、リラクゼーションのお店とかエステの店くらいしかない。

 村から見える丘の上にはボロボロの洋館がある。

 あとは港だが、さっき来たばかりなので特に面白みは無い。


 うーん、観光終り?


 まあ売りがこのビーチと迷宮位だから仕方ないか。


 そろそろ夕刻と言う事もあり、唯一の飯屋に入る。

 ホテルでも食事はできるけどせっかくなので地元の料理も食べようと言う事になった。


 店に入ると既にスィーフの子たちがテーブルを囲んでいた。


 「あら、ガレントの人たちじゃない?お姫様がこんな所へ?」


 リーダー格のイリナ=タルトが話しかけてくる。


 「地元のお料理を食べてみたくてね、あなたたちも?」


 気さくに回答するティアナ。


 「まあね、さっき聞いたけどここの店は海産物で特にエビがおいしいらしいわよ。」


 「へえ、そうなんだ。じゃぁ、あたしたちもそれ頼もうかな?ありがと、教えてくれて。」


 いいっていいって、と手をひらひらさせて仲間たちとの会話に戻るイリナ。

 意外とさっぱりした性格なのかな?



 俺たちも席につき、ウェイトレスに注文をする。

 おすすめはやはりエビ料理で、島の近くで良く捕れるらしい。

 料理方法はお任せであと数品頼んで料理を待つ。


 しばらくして出された料理に俺は驚いた。

 車エビくらいに思っていたら伊勢エビが出てきた!!

 しかもてんこ盛りで!!

 元日本人としては海産物は非常にうれしい。

 流石に刺身とかの生食はこちらの世界ではしないらしいが、伊勢エビの姿焼きから始まって、グラタンらしきもの、野菜と煮込んだスープや油で揚げたらしきものまである!

 まさしくエビづくし!!

     

 

 俺は大いに喜びながら食事をするのであった。

 

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