046-魔王四天王「炎のメギドール」との戦い!
【聖王歴128年 緑の月 43日 夕刻】
<フロスト王国北部 雪原地帯>
『これはひどい』
顔をひきつらせながら呟くハルルを見て、フルルは無表情ながらウンウンと強く頷く。
『え、駄目……でした?』
俺は首を横に振ると、不安そうにオロオロしているエレナの頭を優しく撫でた。
というわけで、俺達は今フロスト王国北部の雪原へとやって来ている。
もちろん目的は魔王四天王「炎のメギドール」を迎え撃つため。
……だったのだが。
「これ、伝記として書き残したら後世まで伝わるバカ話だよね」
『その言い方はどうかと思うよサツキちゃん……』
サツキとユピテルがのんびりと空を見上げた先には、何の変哲もない曇り空が広がっているが、実はさっきまでそこに居たのである……炎のメギドールが。
『炎に包まれたゴーレムを冷却すると単なるゴーレムになる……。とても勉強になった……』
――少し話はさかのぼる。
俺達はメギドールの襲撃から都を護るため、事前に北門の外で待ち伏せしていた。
そして夕日が沈む頃、そいつは現れた。
『カナタにーちゃん、あそこっ!!』
夕闇に染まる空に一筋の光が現れると、その光同士が繋がり、空中に巨大な魔方陣を描きだした。
稲光を辺りに散らしながら空の一郭を切り裂くように現れたのは、炎に包まれた巨大な岩……いや、ゴーレム!
「間違いない! ヤツが魔王四天王……炎のメギ――」
『エターナル・ブリザード・ノヴァーーー!!!』
直後、フロストの凍えた大地によって大幅に威力が増強されたエレナの一撃が空に向かって放たれた。
空に描かれた魔方陣すら見えなくなるほどの猛吹雪に襲われたメギドールは一瞬にして消火され、ポテッと地上へと落下。
『……』
雪に埋もれたままこんな顔 ( ・_・)でしばらく固まっていたメギドールは、起きあがった後もエレナを見ながら、こんな顔 (・_・)のまま呆然としている。
わざわざ自称で『炎の~』って名乗ってたくらいだし、相当こだわりがあったのだろう。
どうやら再び火を熾そうとしているのか、必死に両手で身振り手振りしているが、一向に火が付かない。
しばらくして諦めたのかこんな顔 ('A`)になると、くるりと背を向けた。
そして、自身のアイデンティティを失ったメギドールは、悲しそうに肩を落としながらどこか北の大地へ歩き去っていったのだった……。
…
……
『哀愁……フロストの空は……悲しい色……やね』
『オイラ、思わず泣きそうになっちまったよ。あんな悲しい背中ったら無いって』
「でもさー、あのメギドールってヤツ、また火が付いたら復讐しに戻ってきたりしないかな?」
サツキの素朴な疑問に対し、フルルは無表情のまま大丈夫と諭すように答えた。
『ゴーレムは
「って事は、やったねおにーちゃん! これで一件落着~」
『じゃなーーーい!!』
「!?!?!?」
いきなり大声を上げたハルルに皆が目を白黒させて驚く中、フルルも無表情のままウンウンと驚いた。
『私らの神殿をぶっ壊しておいて、何いきなり大団円で終わらせてんすか!! さっきのヤツを追い払うのと、神殿壊したのは別問題でしょーがっ!!!』
「忘れてた……」
メギドールの一件ですっかり失念していたけど、俺達が登山中に
いくら妖精だからと言っても、炎で破壊された廃墟で暮らせと言うのはいくらなんでも酷であろう。
「でもさー、責任って何すればいいの?」
のんきに問うサツキに対し、フルルは無表情のまま少し困り気味に口を開いた。
『私達の神殿は……神が世界を創造した時からあった……。地上の民の技術力では……直せない』
「そんなぁ~!」
『うう、一体どうやってお詫びをすれば……』
恐る恐るエレナが尋ねるものの、当のハルルとフルルも困り顔だ。
『ぶっちゃけ、元に戻せってのは無理なのは分かってるし、新たに立て直せってのも無理だと思うんすよ』
『でも……天井の無い場所じゃ……寒さをしのげないと……つらい』
そう言うと、ハルルとフルルは互いに顔を見合わせてウンウンと頷き――
『とうっ!』『とー……』
サツキのモフモフ付きのフードの中にスポッと飛び込んだ。
「???」
皆が呆気にとられる中、ハルルとフルルはフードから顔を覗かせながら、とんでもない事を言い出した。
『てなわけで、私らが新たな拠点を見つけるまでヨロシクっす』
「は?」
『次は……もっと過ごしやすいトコが……いいな。雪国は飽きたし……常夏の島がいい』
「はあ」
……ってオイ!!
「まさかついて来るつもりなのか!」
『そりゃ、こんな屋根も無い場所で凍えて暮らすわけないっすよ。里に降りたところで頼る当てもないし』
『期待してる……寒いの嫌い。レッツエンジョイ……
あんまり過ぎるコメントに俺は愕然となる。
というかフルルは無表情なだけで、本音ダダ漏れの感情表現がド直球ですよね!!
「っていうか君ら、フロストの都を見守る妖精じゃなかったの?」
『別に強制じゃないし』
『そろそろ時効……?』
「時効って、何やったんだよ……」
てなわけで、結局ムリヤリ押し切られる形で、ハルルとフルルがパーティに加わる事になってしまったのであった。
「あっ、おにーちゃん!」
「何?」
「首の後ろにハルルちゃんとフルルちゃん入れてると、めっちゃあったかい! ちょー快適っ!!」
「さいですか……」
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