015-救いのないセカイ2
~ 旅の記録 ~
【聖王歴128年 青の月 26日】
聖王都プラテナに到着した俺達は、いきなり国王への謁見を許された。
勇者の肩書きすげえな~……とか思いきや、どうやらカネミツに勇者の名を与えたのは国王その人であり、この日に帰還して状況報告を行う事が事前に決まっていたらしい。
そういえば、端っこからチラチラとコチラを見ているお子様がいて「何だこのガキンチョは?」と気になってはいたのだが、なんとこのお方こそ国王の実娘であるプリシア姫だった。
この娘をうっかりガキ呼ばわりなんぞしようものなら、危うく首が物理的に飛ぶところだった。
ホント、口を滑らさなくて本当によかった……。
【聖王歴128年 青の月 27日】
勇者カネミツに連れられて大きな神殿にやって来た。
どうやら神に祈る事で自らの天職を授かる事が出来るらしく、俺は魔法使いを希望したものの、シャロンから「私と被ってどうすんのよ。バカじゃないの」と一蹴された。
結局、俺は
勇者曰く「盗賊という職が悪なのではなく、それを私利私欲に悪用してしまう弱い心こそが悪なんだ」とのことだが、正直まだ納得は出来ていない。
【聖王歴128年 青の月 28日】
早朝いきなり呼び出され、とんでもない話を聞かされた。
プラテナ国王曰く――プリシア姫が何者かに誘拐されたらしい。
大臣のワーグナー氏の目撃証言により、プリシア姫は東の森からやってきたドラゴンに連れ去られたと判明し、俺達は住処とされる洞窟へとドラゴン退治に向かった。
だが、荒れ狂うドラゴンの吐く灼熱の炎は凄まじく、シャロンの防御魔法が無ければ俺達は確実に消し炭になっていただろう。
俺は覚えたばかりの
【聖王歴128年 青の月 29日】
プリシア姫が戻った事が皆に伝わると、民衆は歓喜に賑わい城内の兵士達も皆喜んだ。
だが、お姫様だけはずっと暗い表情で遠くの空を眺めていた。
捕らえられている間に何か辛い事があったのかもしれないが、単なるシーフである俺が姫に対して何か言えるわけもなく、ただ憂いを帯びたその顔を眺める事しか出来なかった。
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