第8話 消された記憶

 光が差し込む。

 ただ一点に光が差し込んでいた。


 その場所にくぼみがあり、本が置かれている。

 そして、その隣に待っていたと言わんばかりに少女の姿が…。


「――待っていたよアスタ!」


 その瞬間、前世なのか過去の記憶が一斉に蘇えった。


 その瞬間、真っ白に包まれ、ぼくとは違う別の人格が入れ替わる形でぼくは意識を閉じた。


*****


 幼いころ、レイと親しんだ友達と草原を走っていた。

 どこまでも広く、どこまでも空が広がり、どこに行こうが草むらだった。


 その場所は「二人だけの秘密」だった。

 遠い、幼いころの記憶の場所だ。


 レイとは幼馴染みで、年頃の友達はいなかった。

 同じ種族通し、両親のつながりもあってすぐに打ち解けた。


 生まれながらにして二人とも異能の才能があった。

 わざわざ遠い場所から偉い人が足を運ぶほどに。


 ぼくは、6才の頃に中位魔法まで扱えるようになっていた。

 中位魔法を習得するにも2年の歳月はかかるほどの勉強をしなくては習得できないものだと言われていたからだ。


 ”大人でも覚えるだけでも苦労する。”


 その言葉が耳に残り、ぼくの宝物だった。

 周りより特別。そんな可哀そうな思いを持ちながら、レイとは比べ物にならないほど劣等感を抱いていた。


 レイは5才で召喚魔法を扱えるようになっていた。

 大人でも召喚魔法は手こずるほど厳しい修行を積まなくてはならない。それを5才未満で習得してしまったんだ。


 辺境の小さい村で奇跡ともいえるほどの存在が生まれた。


 これを機に、短期間で次々と使い魔を契約していったものから、レイは特別な存在で、ぼくよりも優秀で勝つことはできない存在だと圧倒された。


 7才を迎えるころには、ぼくとレイとは別々で済むようになった。

 レイは魔法国で直に魔法大学で勉強するという話をもらい、ぼくは魔法学校で学ぶというものだった。


 お互い、顔を見合わせる機会が無くなり、次第に合わなくなっていった。


 12才を超え、13才になるひと月前のこと。

 レイに夜、呼び出された。

 

 普段は外出するのさえ厳しい罰があるため、外出は控えていたはずだが、この日ばかりはレイとお別れになるような気持ちがこみ上げていた。


 周りの反対を押しのけ、レイと一緒に外へ出て行った。


 古い遺跡に入り、ぼくはレイがこの日を最後に一定期間はあえなくなることを悟った。


 古い遺跡――この場所。

 一定期間会えない――記憶が蘇るまで。


 ぼくは最後に見たのは、天使だった。

 レイは白い翼を左右に生え、空へと舞い上がった。


 ぼくは手を伸ばし、レイの手を取ろうとした。

 レイも同じようにぼくの手に伸ばそうとした。


 そのとき、パーンと羽が散った。

 一瞬の出来事だった。


 羽が空へと舞い上がり、レイは地面へと引きずり降ろされた。

 ぼくは「レイ!!」と何度も声を上げ、助けを求めながらレイの救助を当たった。


 ――そこで記憶が途切れた。

 誰かが後からやってきたのだけは覚えている。でもそれが誰だったのか覚えがない。


 まるで夢物語だった。

 気づけば知らない場所でオギャーと見知らぬ天井を見上げ、見知らぬ二人の男女を見つめていた。


 記憶が少しずつ失っていき、最終的には夢でしか見ることができなくなってしまっていた。



****



 そうだ。そうだった。すべて思い出した。


 未来を教えてくれていた青年が誰だったのかも思い出した。

 青年は前世のアス・ユーノ自身。記憶が片割れとなって離れたが、それでもずっと近くで見守っていた。


 いつか、記憶を呼び戻し、過去に戻ったら。――取り返すと約束をしていた。


 青年とぼく自身が組み合わさった。

 二つの魂がひとつとなった時、心意の異能力が目覚めた。

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