すとーきんぐ その15

 まぁいいです。頬を膨らませた毬夢ちゃんがドッペル君に何か言うみたいですよ?


「で、お金のない樹々君は何をどうするつもりなのかな?」

「稼ぐ」


 ドッペル君が力強く言い切りました。


「バイトで稼げば十分足りるだろ。こちとら学校通いの必要がないドッペルだ。時間なんて有り余ってる。何も問題ねぇ」

「なるほど。でも樹々君? 履歴書とかはどうするつもりですかな?」


 ふふん、と得意げに頬を綻ばせて毬夢ちゃんが言います。なんかすっごく楽しんでますね、毬夢ちゃん。


「このご時世、履歴書無しで雇ってくれるバイトなんてそうそうないと思うよ? さてさて、ドッペルさんは自分の履歴、どう書くつもりなのかなぁ?」

「ぐっ……」


 はい、ドッペル君の負け~。こういうとこで言い負けるようじゃ、将来的にはお尻に敷かれちゃうでしょうね~。女は強し、です。えっへん!


(確かに、マズイか。〝樹々〟としての履歴は勿論あるけど、それがどこかで外に漏れてしまったら、樹々の偽物が現れた、という噂になるかもしれねぇ)


 お、意外と考えてますねぇドッペル君は。確かに〝記入頂いた個人情報は採用の審査以外には一切使用しません、厳重に管理します〟なーんて誓約、どこまで信用していいかわかりませんよね~。


「……俺はどうすればいいのでしょうか、毬夢先生」


 ドッペル君が白旗を上げました。ひたすらにへりくだった感じのドッペル君に満足したのか、毬夢ちゃんは満面の笑みを浮かべました。


「ふふ、まっかせなさぁい。この毬夢ちゃんが一肌脱いであげよう♪」


 ……調子に乗りまくってますねぇ。程々にしとかないと、その内しっぺ返しを食らっちゃうかもしれませんよ? 毬夢ちゃん。

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