第16話 損失の通り道

─6年前─


「母さん!お水ちょーだい!」

「もう…リューク飲みすぎだよ~」

と言いながらも、その母親はリュークの手にあるコップに水を注いだ。リュークは笑顔で「ありがとう!」と言い、水を飲んでた時だった。家は真っ暗になり、妹や弟達はみんな泣き叫び始めたのだ。暗くなったその時に銃声が鳴り響き乱射してるというのがすぐに分かる。リューク達は避難所に行く時間もなく、地下部屋に籠った。そしてしばらく経った後、静かになって終わったかと思い、ドアを開けた瞬間、窓ガラスが一気に全部割れ、そして爆発音が聞こえた。リュークはその景色を目の当たりにし、しばらく声を出せなかった。

「なんだよ、これは……!さっきまで平和だったじゃねーかよ!くそ、クソ…」

するとそこに走っていたおじさんが、リュークの手を掴み連れていった。リュークは焦り

暴れだしたが、おじさんはその子を強引に連れていき、リュークはそれに対抗出来なくなった。


「何やってくれたんだよ!あそこにはまだ…家族がいたんだぞ!」

「とにかく!お前が生きててよかった!」

フードをとったその男は、父親だった。父親はその街の町長の秘書であり、家の前に立ち止まってたリュークを見て急いで走ったという。

「とう……さん…」

「今から家族を連れてくる。お前はここで待ってろ!」

父親は、リュークに鍵を渡してその場から走っていった。

1時間経った時だった。町は静かになり、鳥が鳴き始めた。リュークは避難所から走って家に向かい、何度も転びながら走って玄関前に着いた時。そこには────

「とう………さん…?なに、倒れてんだよ…おい!おきてよ!!そんなとこで寝ないでよ!息をしてよ!」

父親の死体だ。リュークの父親は、敵の凶弾によって死んだのだ。家族を家から連れ出そうとした時に。リュークは、家の中に入り弟達の安否を確認した。

「お兄ちゃん!!生きてたの!心配したのにぃぃ!うわぁん!」

「あぁ、生きてた。母さん……」

母親はリュークが悩んでることにきずいた。リュークは言うかどうか迷っていた。いずれか気づくこと。だから、今言うことは無い。だけど、愛する人が死んだんだ。言うべきかどうかはもう決まっている。今決めた。

「と、父さんが……撃たれて死んじゃったよ……息を…してないんだ…」

母親は、一気に力が抜けたようにその場に膝ついた。そして、数分黙り込んだ後、泣き出した。しばらくボソボソ言っていたが、リュークの耳には何も聞こえなかった。弟達は何を言ってるのか分かっていなかったが、母親が泣いてるという事はわかった。

「お母さん大丈夫?」

母親はその子の手を掴んで自分の胸元に連れていった。そして、抱きつきながら、大声で泣いた。ここまで泣くのは初めてだ。リュークも見たことがない。その母親の涙を見てリュークは涙を流しながら、SCOPを倒すと夢を語った。

それから3年後、13歳の男兵士が、大統領回収作戦に参加し、たった一人で何人ものSCOP兵士を相手にしたという兵士の噂を聞いた。そして、その名は────

《エレン・ウォーカー》

とうとう新聞にその名が載りリュークはその男に憧れを持った。

(この人みたいになりたい、この人を越えたい!この人を超えて、SCOPのやつら全員殺してやる!)

「母さん、決めたよ。俺TCUに入る。」

「リューク……!?いや……わかった…入るなら、全力でやってよ?」

リュークは当たり前だというばかりに、立ち上がって叫んだ。

「当たり前だー!!」

「そのためには勉強しないと。」


────現在───

「エレン、アレンさんがなんか呼んでたぞ、行く前にそっち行け」

「ありがと」

エレンは言われた通りアレンのとこに行った。すると、グラウスがアランに座るように言った。そして、雑談を始めた。

「エレンは今、精神的に疲れてる。おめぇがなんとかしろ。あいつ、リュークの家なんか言ったら多分泣くぞ。遺族の前で泣くのはやばい。色々フォローしてやってくれ。」

「わかった…」

「おめぇも辛いと思うが、あのガキはエレンの初の後輩だ。色々思い残す事あんだろ。」

グラウスはそうアランに伝えたあと、歩いてその場を去った。リュークはエレンに憧れてTCUに入ったのだ。越える事はできなかった。その前に死んだのだ。彼がどんな事考えてたのだろうか。何も知らない事ばっかだ。


エレンはアレンの部屋についてノックをした。返事があり、部屋に入った。部屋は綺麗でとても整理されていた。だが、そんな事は気にせずアレンは話し始めた。

「今回の件、お前には悔いが残っただろうな。だがもう忘れろ。なんたって、次の相手は国なんだからな。」

───え?

国と戦う?どういうことだ?国を守るために戦ってきたんじゃないか…それを国と?

「ど、どういう事ですか!?」

「今、俺らが完全不利なのは、テロ対策基本法がちゃんとしてないからだ。俺たちはいつも受け身。こちらから攻撃をしかけられない。だが、そのテロ対策基本法を変えて、次からはこっちからしかける。だがそれを国は認めない。ある事件をきっかけにな。」

余裕がないのか?確かに今まで勝ってきたが不利な状況だ。だがいつも受け身で、敵が攻撃するまで撃たなかった。そのため死者も多い、効率が悪いのもわかる。エレンはどうやって戦うのか、どうやって変えるのか。それが1番気になった。

「どうやって変えるんですか?」

「政府を訴える。そして、総選挙でどうするか国民に直接問う。だがな、臆病な国民をどう説得するか。難しい話だ。悪い、リュークの親に呼ばれてんだろ、行け」

「はい…」

エレンはその部屋を出ていき、アランと合流し、早速リュークの家に向かった。

歩きながら何も話すことなく2人は重たい顔をしていた。1時間ずっと歩きっぱなしだったが、リュークの家に着いた。

言われることは分かってる。何故死んだのか?リュークの死は平和への近道になったのか?とかとか。もう、そんなの答えはあるんだ。

エレンはノックをして、リュークの家に入った。母親は水をくんで2人に渡した。

「リュークの…母親です。」

「俺は、エレンです。」

母親はやはり暗い顔をしている。エレンも知っていた。リュークからこの話を聞いたから、この母親は、大切な人を2人もテロで失った。本当は、誰よりもテロを憎んでいる。でも言葉にしてない。優しさだろう。

「リュークの死は……平和へ…ちかずけたのでしょうか……?」

エレンは黙り込んだ。本当に聞かれた。心臓がバクバクになり息も荒くなった。アランは心配して声をかけたが、エレンは大丈夫だと答えた。

「彼の死は、きっと………いや、彼の死はあのテロに対して、全く無意味な死でした!」

母親は泣き崩れた。目を手で抑えていたが

、涙は溢れて手を伝って床に落ちていく。そして悔しそうに地面を何回も何回も叩いた。

「じゃあ、どうしてリュークは死んだのですか!」

「それは…俺たちが未熟だったからです。」

エレンは涙をこらえながら冷たくても本当の事を言った。アランは「もういいから」と慰めたが、エレンは聞かなかった。

「俺たちが勇気を出せなかったから、リュークは1人だけで敵に立ち向かったのです……本当は、怖かったはずなのに。」

「リュークは、人一倍優しくて、勇敢な男の子です…私の、私の自慢の息子です。その死に方…全く……リュークの死に方にぴったりです……」

泣きながらエレンに話した。リュークというのはどんな子だったのか。どんな性格で、家ではどうだったのか。

「そして、リュークの最後の言葉は、

【絶対に守ってください。信じてますから。】でした。俺は…リュークに託されたこの願いを、叶えるのが俺の次の目標です。俺もテロで父親を失いました。苦しかった。だけど、いつまでも泣いてはいられないんだと思い立ち直りました。リュークは、そんな父親を失っても強くなろうとした。俺なんかとは全く違かった。」

「いいえ、それは違います。リュークは、エレンさん、あなたに憧れて入ったのですよ?そしてあなたはリュークが認めた人。それだけあなたが強いんです。」

エレンは、息が荒くなり、泣きそうなのを頑張って耐えながらその母親の言葉を聞いた。誰よりも悲しいはずなのに、エレンの事勇気づけている。この強さは、リュークなのだろう。

「もう…泣いていいですよ?あなただって…辛いんですから…」

エレンは、力が抜けて嗚咽をしながら泣き出した。母親はエレンの背中をさすって「大丈夫」といいきかせ、本当の母親のように慰めた。

「今日はありがとうございます。いつでも来てください。あのお水、リュークが好きだったのですよ?」

「分かりました。また来ます。」

そして、家から出て本部に向かおうとすると、1人の男の子がエレンに話しかけてきた。

「俺も…テロと戦いたい。俺の名はウィーグスだ。あなたを超えます。」

「………わかった。いつでも来い」

エレンは、ウィーグスの頭を軽く叩いて、本部へと歩いて行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます