第58話 作戦失敗

《アイ視点》

 ――――地下都市土蜘蛛


 アタシ達は、地上都市 パンドラに向かっていた。

 目指すは、第五地区の軍事施設。


 鋼色の空を見上げる。

 とてもいい気分にはなれない空だ。

 せめて、晴れていてくれたら良かったのに……。


 でも、そんなことを言ってられない。

 だって、これは戦争なのだから。

 自分の感情で動いてはいけないから。


 アタシは、《賢者の石》を見つけるんだ。

 基本、アタシ達は後方にいる。


 攻撃は自動人形ビスクドールに基本任せる。

 まぁ、それこそ臨機応変に対応していくしかないのだけれど。


 拡張デバイスを通じて味方の《司令官》から、目標を見つけたと連絡があった。

『今からデータを共有する』


 来た。

 先行部隊が降下し始める。


 アタシも高度をゆっくりと下げ始める。


 ――――警報が鳴る。

 指導官の情報通りだ。


『侵入者を感知しました。今すぐ退去しなければ排除対象とします。繰り返します――――』


 これで下の方から人型魔装兵器ホムンクルスが向かって来た。

 敵だ。


 が、なんだか様子が可笑しい。

『機体の数が少なすぎやしないか?』

『うん。いくら何でもこの数は少ない』


 こちらは100人。

 それは先ほどの警報で敵側も把握しているはずだ。


 それに対して敵の数は20機程度。

 可笑しすぎる。

 こちらの半分も満たしていないとは。

 いくら何でも少なすぎる。


『なんなんでしょうね。この数は。敵の機体の数が足りていないのでしょうか』

『まさか。幾らこちらが奇襲をしてきたとしても、ベースとなる敵の数は敵の方が圧倒的に上だぞ。これには何か謎があるはずだ。一人捕らえて聞いてみよう』

『了解』


 ――――結果。

 敵の一人を捕獲することに成功した。


 彼の話によれば、《パンドラ》の機体の半分以上は空中都市ゼウスに向かっているらしい。

 貴重な情報を得ることが出来た。


 これで私たちの行く方向は決まった。

 天空都市パンドラだ。


 今回の我々の任務は『奇襲をして敵の機体数を削ぐこと』にある。

 だから、この作戦自体は失敗になる。

 どう見ても敵の数は少ないのだから。


『指導官に報告した方が良いわ』

 仲間の一人の一人が提案をする。

『僕が報告しておくよ。次の命令があるまで全員待機』

『了解』

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