第53話 《罪》と《償い》

「ここら辺で良いのか?」

「うん。地図によれば目の前に建っているのが王宮らしいから」


 結局、元の道に引き返すことになってしまった。

 さっきまで俺たちがいた所の近くだ。


 今は茂みの中に潜んでいる。

 さて、どうするべきか。

 どうすれば良いか。


 やることは決まっている。

 あらゆる方向に《千里眼》で見ていくしかないのだ。


 ――――王宮の中。

 さすがにこんな目立つところにはいないか。

 誰も目につかないところ。


 何せ、彼女は国家機密級の人間なんだから。

 政府の人は彼女が逃げ出さないように細心の注意を払って行動するはずだ。


 一つ一つの部屋を見ていくしかない。

 これは王様と女王様の寝室。

 これはお姫様の寝室。

 これは王子様の寝室。

 これは偉い騎士の寝室。

 これは使用人たちの衣服室。


 う~ん。

 中々見つからないな。


「なぁ。何処か検討とかつけられないか? 王宮という事もあって、部屋がありすぎる。それに王宮にあるという確信も無いわけだしな」

「う~ん。そうだな」

 金石は唸り声を上げながら唇に手を当てて考えている。


 その間、俺は少しでも候補を潰そうと宮殿の中にある一つ一つの部屋を丹念に調べていく。

「これは俺の憶測だが……。奴は隠し扉だとか地下室とかに幽閉されている可能性が非情に高い。だから、その可能性が高そうな所を重点的に探す必要がある」

「なるほどね。隠し扉と地下室ね」


 これはかなり大変なことになりそうだ。

 それじゃ、《透視》の能力も併用していかないといけないということか。

 なるほど。


 そりゃ、骨が折れそうだ。


 道具の力があるからと言って、自分の体に何のリスクも無いというわけではない。

 もちろん、その《力》を使った分の借りは――――代償は払わなければならないであろう。

 それがいつになるのかは知らないけれど。


 けど、それが俺の運命だ。

 それが俺の人生だ。

 俺は覚悟をとっくに決めているのだ。


 それに、この道具達は俺の仲間の遺品なんだ。

 それで死ぬのなら俺は死なんて全く怖くない。

 それであいつらと共に行けるのなら俺は全然怖くない。


 ただ、後悔はしたくない。

 あいつらを死なせたのは俺だから。

 俺はその《償い》をすべきなんだ。


 その為に俺は《能力》というものの正体を――――《異能》の力の正体を暴かなければならない。

 その幽霊の皮を被った奴の正体を破るしかない。


 それが俺の《罪》であり、《償い》なんだ。

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